テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2022.10.05

トンネル照明にオレンジと白がある理由

 帰省や観光などドライブでトンネルを通過するときに気になるのは、その照明がまちまちであることです。昔ながらのトンネル内照明はオレンジ色が多い印象ですが、近年では白色光で明るい照明が増えています。今回は、そんなトンネル照明の変遷に迫ってみましょう。

トンネル内の照明

 トンネル照明は、高度成長期にあたる昭和40年代から本格的に設置されるようになりました。蛍光水銀灯から、低圧ナトリウムランプ、高圧ナトリウムランプ、蛍光灯、セラミックメタルハライドランプを経て、昨今ではLED照明へ置き換わっています。トンネル内照明は常時点灯のため、寿命と消費電力がネックとなります。当初と比較すると、消費電力は約1/3に、毎年ランプを交換する必要があった照明寿命もLEDを採用することで10年間交換しなくてよい状況です。

環境に合わせた照明

 かつてオレンジ色の光源が主流であったのは、排ガス規制がそれほど厳しくなかったトンネル内の事情によります。排気ガスが充満するトンネル内では、煙の中でも見えやすいオレンジ光が望まれ、かつ、消費電力の効率が良いことから低圧ナトリウムランプが採用されたためです。(低圧ナトリウムランプは、ガラス管にナトリウムの蒸気を封入したオレンジ発光するランプ。オレンジ発光は排気ガス・塵等の影響を受けにくい性質から光が通りやすく、また、水銀ランプと比べて消費電力が1/2~1/3程度と経済的で、かつ寿命が長いといった特徴を持つ。デメリットとしては、赤色の消火栓が黒っぽく見えてしまうため、トンネル内に設置する消火栓は蛍光色の赤色で塗装しなければならなかった)
 
 トンネル内照明のオレンジ色から白色への変化は、排ガス規制によって煙の量が減ることでトンネル内の見通しが良くなったことに加え、効率の良いLED光源が開発されたことで、自然に見える白いランプが採用されるようになったという次第です。

トンネル内照明の工夫

 トンネル走行は光源変化で運転手に負担がかかることから、さまざまな工夫がなされています。光の強弱に合わせて、入口部・基本部・出口部にわけて眼が順応するように設計されています。

 たとえば、ある速度でトンネルに接近し中に入ると内部が識別できなくなる「ブラックホール現象」、また、出口付近では、暗いトンネル内に順応したあとの外光下であるため、前面が真っ白になり外の様子が識別できなくなる「ホワイトホール現象」が発生します。こうした現象を防ぐべく、トンネルの入口と出口においては照明を増やす構成になっています。なるべくトンネル内と外の明るさに差が出ないようにして、スムーズに運転ができるように工夫されているのです。

 また、照明の当て方にも工夫がなされています。光源からの直射光が対象物の両面に当たる「対称照明方式」とともに、近年では先行車をより見えやすくして衝突を回避する「プロビーム照明方式」を採用するトンネルも増えています。

トンネル内の渋滞を防ぐ最新照明

 2018年3月18日に開通した新名神「神戸~高槻」間のトンネルでは、日本初のトンネル照明型LEDペースメーカーライトが登場しました。ペースメーカーライトは、進行方向に緑色の光を走らせ、人の光を追う心理を用い、複数台の走行速度が一定になることを促す最新技術です。結果、「遅い車や速い車が少なくなる」効果により渋滞の緩和をねらいます。
 
 新しいサイン照明としては、トンネル内の監視カメラなどとも連動し、通常時は白色光で、車両火災などが起こると赤色点滅し、事故や落下物、故障車などの場合は黄色点滅することで、情報板の表示を見落とした運転手でも異常を察知できるような技術が採用されるようになっています。

<参考サイト>
・NEXCO中日本:トンネル内の照明はなぜオレンジ色なのですか?
https://highwaypost.c-nexco.co.jp/faq/traffic/knowledge/368.html
・NEXCO中日本:トンネルの照明が、オレンジ色ではなく白色のところがありますが?
https://highwaypost.c-nexco.co.jp/faq/traffic/knowledge/369.html
・NEXCO西日本:トンネル照明灯具を用いたペースメーカーライト https://corp.w-nexco.co.jp/activity/branch/kansai/shinmeishin/outline/outline04/05/
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
より深い大人の教養が身に付く 『テンミニッツTV』 をオススメします。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

アジア的成熟国家モデルづくりへ、日本が目指すべき道とは

アジア的成熟国家モデルづくりへ、日本が目指すべき道とは

日本の財政と金融問題の現状(4)日本が目指すべき成熟国家への道

機関投資家や経営者の生の声から日本の金融市場の問題点を見ていくと、リスクマネーを供給するための市場づくりや人材育成等の課題が浮き彫りになる。良質なスタートアップ企業を育てるにはどうすればいいのか。今こそアジア的...
収録日:2025/04/13
追加日:2025/07/01
木下康司
元財務事務次官
2

相互依存で平和は保てるか…EUの深化・拡大の難題とは

相互依存で平和は保てるか…EUの深化・拡大の難題とは

地政学入門 ヨーロッパ編(9)EUの深化・拡大とトルコの問題

国際政治の理論として国同士の経済交流、相互依存が安全保障、つまり平和を維持できると伝統的に考えられてきたが、今般の国際政治ではそれは必ずしも当てはまらないようだ。そこでEUの問題である。国の垣根を越えて世界国家に...
収録日:2025/02/28
追加日:2025/06/30
小原雅博
東京大学名誉教授
3

最悪のシナリオは?…しかしなぜ日本は報復すべきでないか

最悪のシナリオは?…しかしなぜ日本は報復すべきでないか

第2次トランプ政権の危険性と本質(8)反エリート主義と最悪のシナリオ

反エリート主義を基本線とするトランプ大統領は、金融政策の要であるFRBですらも敵対視し、圧力をかけている。このまま専門家軽視による経済政策が進めば、コロナ禍に匹敵する経済ショックが世界的に起こる可能性がある。最終話...
収録日:2025/04/07
追加日:2025/06/28
柿埜真吾
経済学者
4

江藤淳と加藤典洋――AI時代を生きる鍵は文芸評論家の仕事

江藤淳と加藤典洋――AI時代を生きる鍵は文芸評論家の仕事

AI時代に甦る文芸評論~江藤淳と加藤典洋(1)AIに代わられない仕事とは何か

昨今、生成AIに代表されるようにAIの進化が目覚ましく、「AIに代わられる仕事、代わられない仕事」といったテーマが巷で非常に話題となっている。では、AIに代わられない事とは何であろうか。そこで、『江藤淳と加藤典洋』(文...
収録日:2025/04/10
追加日:2025/06/25
與那覇潤
評論家
5

寝ないとよく食べる…睡眠不足が生活習慣病を招く理由

寝ないとよく食べる…睡眠不足が生活習慣病を招く理由

睡眠と健康~その驚きの影響(1)睡眠が担う5つのミッション

私たちに欠かせない「睡眠」。そのメカニズムや役割についていまだ謎も多いが、それでも近年は解明が進み、私たちの健康に大きく関与することが明らかになっている。まずは最新情報を盛り込んだ睡眠が果たす5つの役割を紹介し、...
収録日:2025/03/05
追加日:2025/06/05
西野精治
スタンフォード大学医学部精神科教授