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DATE/ 2022.12.14

大きいのに「ミニバン」?車の名称のなぜ

 「ミニバン」には安定した人気があります。トヨタ「アルファード」「ヴォクシー」「シエンタ」、日産「エルグランド」「セレナ」、ホンダ「ステップワゴン」「フリード」、三菱「デリカ」などなど「ミニバン」に分類される車はたくさんあり、大きさもさまざまです。トヨタ「シエンタ」や日産「セレナ」などは5ナンバーで比較的コンパクトなので、「ミニバン」と呼んで特に違和感はないと思われるのですが、トヨタ「アルファード」や日産「エルグランド」などになると車体も大きく、「ミニ」という語感に違和感も生じます。ではなぜこれらは全て「ミニバン」と呼ばれるのでしょうか。

「ミニバン」はアメリカ基準

 アメリカではキャンピングトレーラーのことを「キャラバン」と呼びます。「キャラバン」は短縮されて俗に「バン」と呼ばれるそうです。フルサイズの「バン(キャラバン)」は全長5m以上、全幅2m以上で、排気量は5リッターから7リッターというかなり大きな車です。1980年代になると、クライスラーの一部門であるダッジが、この「バン」を一回り小型化したコンパクトなワンボックスカー「ダッジ・キャラバン」を売り出します。

 これが大人気になりました。このヒットによってGMもミニバンを売り出します。このGM「シボレー・アストロ」は全長4805mm、全幅1960mm、排気量4.3リッター。フルサイズに比べればそれなりに小さくなっています。このあたりからこのサイズの車を「ミニバン」と呼ぶようになったようです。つまりアメリカでの「ミニバン」とは、小型のキャンピングトレーラーのことです。ここから日本でも同程度の大きさの車を「ミニバン」と呼ぶことになったようです。つまり「ミニ」はアメリカ基準での相対的な「ミニ」です。

 ちなみに日本では、全長4.8m、全幅1.8mを超えるサイズ(トヨタ「アルファード」「ヴェルファイア」、日産「エルグランド」など)を「ビッグサイズ」や「Lサイズ」とよび、全長4.7m以下、全幅1.7m以下のもの(トヨタ「シエンタ」、ホンダ「フリード」など)を「コンパクトミニバン」や「Sサイズ」と呼ぶ分け方もあるようです。ただし、このあたりも明確な定義があるわけではありません。

「ミニバン」と「ステーションワゴン」の違い

 一方で、日本で一般的に「バン」というと、荷物をたくさん載せる3列シートのワンボックス商用車という意味合いが強いです。イメージとしてはトヨタ「ハイエース」を思い浮かべるとピッタリでしょう。他にもトラックや軽自動車でも「バン」と呼ばれるものがあります。「ミニバン」同様、必ずしも「バン」には明確な定義があるわけではないようですが、世界的にも「バン(VAN)」は「商用・営業用の貨物自動車」という意味で使われる場合が多いようです。また、アメリカでは箱型の車はおおよそ「バン」と呼ばれるようです。

 「ミニバン」と似たサイズで「ステーションワゴン」と呼ばれるものもあります。「ミニバン」よりも車高の低い車です。たとえばトヨタ「カローラフィールダー」や日産「ウイングロード」、スバル「レヴォーグ」、マツダ「アテンザワゴン」、ホンダ「シャトル」などが該当します。これは「セダン」から派生したタイプです。乗り込むスペースとラゲッジスペースを一体化させて、より荷物の積載に関して融通が効く作りになっています。もともとセダンから派生していることもあり、乗車人数は少なめの設定です。

 現状では「ミニバン」の方が人気はあるようですが、「ステーションワゴン」には多くの荷物を積める割に比較的燃費が良いという点や、高速走行時やカーブでの安定性が高く、ミニバンよりも車酔いしにくいというメリットもあります。また、ラゲッジスペースが広いことから車中泊などでも快適性が保たれることから、使い方によってはなかなか使い勝手のいい車とも言えるのではないでしょうか。

<参考サイト>
ミニじゃないのになぜ「ミニバン」と呼ぶの?|サニクリーンオートライフ
https://www.sanikleen.co.jp/autolife/topic/1121/
【意外と知らない】大きくても「ミニバン」と呼ぶのはなぜか?|WEB CARTOP
https://www.webcartop.jp/2016/08/47742/
バンの車の意味。ワゴンやトラックとの違い。車中泊におすすめ?|ZURICH
https://www.zurich.co.jp/car/useful/guide/cc-different-van-car/
バンとは?ミニバンとワゴンとの違いや人気モデル最新情報も|MOBY
https://car-moby.jp/article/car-life/useful-information/van-explanation/
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