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DATE/ 2023.01.08

「死後離婚」のメリット・デメリットとは

 「死後離婚」という制度をご存じでしょうか。離婚といっても配偶者との離婚ではありません。死後離婚は、「配偶者の親族と縁を切る」ための法的な手続きです。

増えている死後離婚

 死後離婚の正規名称は「姻族関係終了届」。配偶者が亡くなると婚姻関係は終了しますが、「姻戚」としての関係は続いています。姻戚とは、結婚によって親類になった人たち、最近の言葉でいう「義実家」やその血縁の人たちです。彼らと元通りの他人になるのが死後離婚の手続きというわけです。

 配偶者の生前に離婚した場合は、「籍」が抜けるので配偶者本人と他人になります。遺産も相続できず、遺族年金も受け取れません。しかし、死後離婚の場合、戸籍上配偶者との婚姻関係は記載されたままで、配偶者と他人になるわけではありません。配偶者の遺産は相続でき、遺族年金も受け取れます。

 こうした「死後離婚」を選ぶ人は、ここ十年来増えています。政府統計によると2009年には1823件、2010年は1911件でしたが、2021年は3595件とほぼ倍増。実はコロナ前の2016~18年頃がピークで、それぞれ4032件、4895件、4124件を数えました。

 その理由として、最も考えられるのが義理の親との不仲、さらにいえば介護したくないケースです。姻族関係が続いているかぎり、義理の親に何かあると介護や扶養する義務が民法で定められています。死後離婚は、その義務から逃れるための切り札として用いられているようです。

 さらに、義理の家族との関わりが面倒だったり法要に関わりたくないというケース、生前には解消できなかった夫との関係を精算したいなど、姻族関係終了届を提出する動機はいろいろです。

死後離婚するメリット・デメリット

 死後離婚の場合、先にも触れたように相続や遺族年金に影響はないので、経済的なデメリットがないのが一番の特徴です。

[メリット]
・配偶者の両親や兄弟姉妹の扶養義務の可能性をゼロにできる
・墓や仏壇、位牌や法事など、祭祀承継者にならずにすむ
・配偶者の両親との同居を拒否できる
・生前に仲の悪かった配偶者との関係を精算できる

 配偶者の死後、死後離婚しないでいると、義理の親を介護しなければならなくなる可能性があります。同居していれば、義理の親が経済的に困ったときに「扶助」しなければなりません。また、同居していなくても、義理の両親の面倒をみる人が他にいないなどの特別な事情がある場合には、家庭裁判所が「扶養義務」を負わせる可能性があります。

[デメリット]
・子どもや配偶者血族との関係性が悪化する可能性がある
・お墓参りや法要への参加が難しくなる

 亡くなった配偶者との間に子どもがいる場合、「なぜ死後に配偶者親族との関係を断とうとするのか」納得してくれないことが考えられます。また、子ども自身と配偶者血族は血縁で結ばれていますので、彼らの関係が悪化することも考えあわせ、事前によく相談したほうがいいでしょう。

死後離婚の手続きと注意点

 姻族関係終了届は、自分の本籍地もしくは住所地のある市区町村役場に必要書類を提出します。期限の定めはないので、死後何年経っていても大丈夫です。また、届出にあたって、配偶者親族側の承諾は必要ありません。この届けが受理され、死後離婚が成立しても、子どもや配偶者の親族に役場から連絡がいくことはありません。

 死後離婚の際、旧姓に戻したければ同時に「復氏届」を提出しましょう。この場合、子どもの苗字や戸籍は変更されません。

 姻族関係終了届に必要な書類は、以下の通りです。
・姻族関係終了届
・亡くなった配偶者の死亡事項が記載されている戸籍(除籍)謄本
・届出人の現在の戸籍謄本(提出先が本籍地の場合は不要)
・届出人の印鑑
・本人確認書類

 簡単な手続きですが、姻族関係終了届は提出したら取り消すことができません。よくよく吟味したうえで、慎重に判断しましょう。

<参考サイト>
・e-Stat 統計で見る日本:「種類別 届出事件数(平成23年度~令和2年度)
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00250008&tstat=000001012466&cycle=8&year=20181&month=0&tclass1val=0

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