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DATE/ 2023.03.07

サービスエリアの「駐車場」が斜めの理由

 サービスエリア(SA)やパーキングエリア(PA)の駐車場では、駐車マスが通路に対して斜めにデザインされている場所が増えてきたようです。これはコンビニや街の駐車場など一般的な駐車場ではあまり見ない光景かもしれません。ではSAやPAではなぜ斜め駐車枠が増えているのでしょうか。以下、ポイントごとに整理します。

出口を意識しやすく逆走防止に役立つ

 理由の一つには、逆走を防止するためというものがあります。長方形の駐車スペースだと、出発する時に方向を誤り、入ってきた道に戻ってしまうリスクがあります。こうなると逆走が起き、重大事故のリスクが高まります。一方斜めにしておけば、駐車した車は自ずと出口方向に向いています。このように、駐車スペースを斜めにしておけば進行方向を間違いにくくなり、逆走防止に役立ちます。

スムーズで安全な駐車・発車ができる

 さらに駐車スペースに入る際の角度が緩やかになります。このことでハンドルを切り返す必要がなくなり、スムーズに駐車することができます。また出る時にも比較的後方の確認がしやすいことに加えて、ハンドルを動かす範囲は小さくなります。またもし前方が空いていて先に通路がある設計だった場合は、そのまま前進で通路に入って出ていくことが可能です。このように駐車・発車がしやすいことから事故のリスクが下がっていると言えます。

車路を狭くできることで省スペース化になる

 斜めの駐車枠は、長方形で敷き詰められた駐車枠よりもスペースを多く必要とします。このことからやや狭い場所では採用しにくい面もあるようです。ただし、入車角度が小さくなってハンドルを大きく切る必要がないことで、長方形の駐車枠で作られた駐車場よりも車路を狭くすることができます。このことで駐車場全体としては、省スペースになる可能性があります。このメリットは通路がいくつもあるような、比較的大きなSAやPAでは顕著だと言えます。

簡易性、効率性が求められる場所に適した形

 ここまで見てきた通り、斜めの駐車スペースにはいくつかのメリットがあることがわかります。ちょっとした工夫で高速道路のSAやPAは長時間駐車するひとは少ないことから、簡単であること(簡易性)や素早く駐車発車できること(効率性)が重視されていると考えられます。ただし、土地の形状や広さによっては採用できない、もしくは効率的でない場合もあるようです。このことから採用されていないSAやPAもあります。しかし、比較的広いSAやPAであれば、簡易性や効率性に加えて省スペース化といった点でなかなか優れていることからすると、かなり理にかなった駐車方法と言えるのではないでしょうか。

<参考サイト>
駐車場 ITS における機能的な駐車場スペース設計の基礎的検討|「生産研究」64巻2号(2012年)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/seisankenkyu/64/2/64_2_161/_pdf
最近の高速道路のSA・PAの駐車枠が斜めになっている理由とは?|WEB CARTOP
https://www.webcartop.jp/2018/08/271130/
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