テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2023.07.08

ATMの現金封筒はなぜ消えたのか?

 銀行のATMでは現金用封筒が備え付けられているのをよく見かけます。ただし、最近は置かない銀行が少しずつ増えてきているようです、特に地方の銀行などで廃止するところが多くなっています。なぜ廃止されているのでしょうか。

ATMの現金封筒を廃止した銀行

 京都銀行と京都信用金庫は2022年の頭頃に現金封筒の配置を終了しました。理由は「紙資源の削減のため」とのこと。さらに滋賀銀行は2021年の3月に現金封筒の設置を終了しています。ほかにも奈良市にある南都銀行は2023年5月31日に、香川県高松市に本店を置く百十四銀行は2023年1月31日にATMでの現金封筒の設置を終了しています。

 他にもATMでの現金封筒は廃止した銀行は以下の通り。名古屋銀行(愛知県)、北國銀行(石川県)、呉信用金庫(広島県)、おかやま信用金庫(岡山県)、岩手銀行(岩手県)、福島銀行(福島県)、島田掛川信用金庫(静岡県)、宮崎銀行(宮崎県)、大分銀行(大分県)、肥後銀行(熊本県)、百五銀行(三重県)など。ただし銀行によっては、窓口でお願いすれば封筒をもらえるところもあるようです。ほかにも、今後廃止を検討している銀行もあります。

目的は「環境保護」だが背景には「コスト削減」も

 多くの銀行で廃止されているようですが、その理由としては「紙資源の使用量削減のため」「環境負荷の低減のため」「SDGs(持続可能な開発目標)達成のため」といったものが挙げられています。たしかに少額の引き出しであれば、特に現金封筒がなくても持ち運びは可能です。昨今、大きな問題となっている環境負荷のことを考えれば、自由に無料で利用できる状態にしておく必要はないかもしれません。

 もちろんこの理由は真っ当だと思われますが、その背景には「コスト削減」の動きがあると考えられます。もちろん銀行は一般企業なので、削れる部分でのコスト削減は必要です。FNNの取材記事によると、滋賀銀行はこれまで大きさの違う現金封筒を3つ用意していたそうですが、これを1種類に統一したことで年間約1500万円の削減が見込まれているとのことです。現金封筒にもそれなりのコストがかかっていることがわかります。

デジタル化時代の銀行は変化していく

 ATMでの現金封筒に関して削減や廃止といったこと自体は、利用者にとっては不利益というほどでもないでしょう。ただし最近はATMの統合や廃止も増えています。この辺りに関しては大きな流れとなりつつあるようです。背景には、インターネット上での取引が増加するなど、時代の変化に伴う経営の合理化に迫られているという事情があります。

 電子マネーやポイントは一般の人にもだいぶ普及してきました。今後、世の中はさらにデジタル化していくでしょう。こうなるとこれまで銀行が担ってきた、現金そのものを取り扱う場所としての役割は縮小するでしょう。状況としてはATMでの現金封筒といったことに留まらず、ATMや支店自体が合理化されて減少していくと考えていいかもしれません。

<参考サイト>
「便利なのに…」姿消すATM横の現金封筒その理由は?金融機関に聞いた|京都新聞
https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/715182
現金封筒の設置終了について│南都銀行
https://www.nantobank.co.jp/news/oshirase/20230222.html
ATM コーナーへの現金封筒設置終了のお知らせ │百十四銀行
https://www.114bank.co.jp/info/2022/pdf/2022120502.pdf
ATM横の“現金封筒”がなくなる? 理由と利用者の声を配置終了した京都銀行と滋賀銀行に聞いた|FNNプライムオンライン
https://www.fnn.jp/articles/-/311355
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
雑学から一段上の「大人の教養」はいかがですか?
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

陀羅尼品…あらゆるものが暗号であり、メタファーである

陀羅尼品…あらゆるものが暗号であり、メタファーである

おもしろき『法華経』の世界(6)「陀羅尼品」とエニグマ

『法華経』下巻の「陀羅尼品」を読めば、それが真言宗の真言(=マントラ)と同様の構造を持っていることが分かる。天台教学における「諸法実相」や「本覚思想」という形而上学も、華厳経の「重々帝網」という次元世界も、全て...
収録日:2025/01/27
追加日:2025/07/06
鎌田東二
京都大学名誉教授
2

なぜ思春期は大事なのか?コホート研究10年の成果に迫る

なぜ思春期は大事なのか?コホート研究10年の成果に迫る

今どきの若者たちのからだ、心、社会(1)ライフヒストリーからみた思春期

なぜ思春期に注目するのか。この十年来、10歳だった子どもたちのその後を10年追跡する「コホート研究」を行っている長谷川氏。離乳後の子どもが性成熟しておとなになるための準備期間にあたるこの時期が、ヒトという生物のライ...
収録日:2024/11/27
追加日:2025/07/05
長谷川眞理子
日本芸術文化振興会理事長
3

「言論の自由の侵害」と「移民排斥」はあまりに不合理

「言論の自由の侵害」と「移民排斥」はあまりに不合理

第2次トランプ政権の危険性と本質(7)言論の自由の侵害と移民排斥

多様性を尊重するリベラリズムとは逆行するトランプ大統領の動きは、人々の自由や司法の独立性を脅かすような横暴に向かっている。そのトランプが強く押し出す移民排斥の指針にも問題点が多い。経済、治安の観点から移民に関す...
収録日:2025/04/07
追加日:2025/06/21
柿埜真吾
経済学者
4

シフトワークによる脱同調に要注意…時差ボケへの対策は?

シフトワークによる脱同調に要注意…時差ボケへの対策は?

睡眠と健康~その驚きの影響(5)時差ボケと脱同調

シフト勤務者にとって避けて通れない問題がある。それは、時差ボケによる睡眠のリズムである。現在、日本では労働者の何割かがシフトワークに就いているが、この働き方では睡眠のリズムが崩れ、健康を大きく害する危険がある。...
収録日:2025/03/05
追加日:2025/07/03
西野精治
スタンフォード大学医学部精神科教授
5

ヨーロッパとは?地図で読み解く地政学と国際政治の関係

ヨーロッパとは?地図で読み解く地政学と国際政治の関係

地政学入門 ヨーロッパ編(1)地図で読むヨーロッパ

国際政治の戦略を考える上で今やかかせない地政学の視座。今回のシリーズではヨーロッパに焦点を当て、地政学の観点から情勢分析をする。第1話目では、まず地政学の要点をおさらいし、常に揺れ動いてきた「ヨーロッパ」という領...
収録日:2025/02/28
追加日:2025/05/05
小原雅博
東京大学名誉教授