テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2023.07.21

賃貸の「おとり物件」とは?特徴と見分け方

部屋探しで気をつけたい「おとり物件」

 部屋探しをして気に入った物件を見つけて内覧の予約までしたのに、いざ不動産屋に行ってみたらすでに成約済みだった……なんてことも、残念ながらありますよね。しかし、そんなときに「もっといい物件がありますよ」などと言われたら、警戒したほうがいいかもしれません。その〝気に入った物件〟は、〝もっといい物件〟に誘い込むための「おとり物件」という可能性があるからです。

 おとり物件とは、「実際には存在していないのに、集客のためにわざと募集中の広告を掲載している物件」のことをいいます。本当に契約させたい物件へと誘い込むために掲載しているのですから、まさにおとりですよね。このような〝存在していない物件〟にはいくつか種類があり、消費者庁では次の3種類に分類しています。

・架空の物件:本当は存在していない物件。実在しない住所や番地を掲載している場合など。
・事実上契約不可の物件:物件は存在しているが、取引できない物件。すでに成約済みだったり、すでに住人がいたりする場合など。
・契約する意思がない物件:物件は存在しているが、取引をしない物件。問い合わせや取引に応じない場合など。

 いずれにしても契約できない物件を「契約できます」と偽って掲載しているので、おとり物件は違法です。上記のような物件は景品表示法の「不動産のおとり広告に関する表示」の中で不当表示と規定されています。結果的に、〝もっといい物件〟が本当にすばらしい物件だったということもあるかもしれませんが、嘘は嘘。おとり物件にはだまされないようにしたいですよね。

こんな物件はおとり物件かもしれない

 しかし、おとり物件はなかなかなくならないのが悲しい現実。やはり相手は不動産のプロなので、あやしいところを巧みに隠しているのです。望まない契約を結んでしまわないためにも、次に上げるようなおとり物件の特徴と見分け方を知って自衛していきましょう。

・家賃が相場よりかなり安い:家賃が安い物件は注目されやすいので、おとり物件の常套手段になっています。立地・築年数・間取りなどに対して家賃が安すぎないか、似たような物件と比較して考えましょう。もしかすると虚偽の築年数などを掲載していたり、自殺や殺人事件があったいわゆる事故物件であることを隠していたりする可能性もあります。

・ひとつのサイトにしか掲載されていない:本来なら、成約済みの物件は掲載を終了します。つまり、すべてのサイトでその物件の情報が見られなくなるはずです。それなのに、ひとつのサイトにだけ残っているとしたら、それは成約済み物件をおとり物件として公開している可能性が高いです。いい物件を見つけたら、複数のサイトでチェックしましょう。

・現地での待ち合わせを断られる:おとり物件は実在していなかったり、すでに誰かが住んでいたりするので、当然ながら内部を見ることができません。架空の物件なら外観すら見られませんよね。このため、現地集合での内覧は必ず断られます。「まずは店舗に来てもらうのが決まり」などと言葉巧みにはぐらかそうとするので注意しましょう。

 さらに、架空の物件なら住所や間取りなどの基本的な物件情報が曖昧ということもあります。少しでもあやしいと思ったら、複数の不動産屋に納得いくまで質問しましょう。

うっかり発生してしまうおとり物件も

 ここまで〝嘘と悪意のおとり物件〟についてご紹介しましたが、実は〝うっかりのおとり物件〟も存在します。うっかりおとり物件にはだます意思こそありませんが、契約できない物件を契約可能として公開していることに変わりはないので、結果的に不当表示です。ではなぜ、このようなおとり物件が発生してしまうのでしょうか。

 大きな理由は、不動産屋などの掲載者側がサイトから物件情報を削除していないからです。ここで故意に削除していないなら嘘と悪意のおとり物件なのですが、削除を忘れてしまっていたり、削除が間に合っていなかったりして情報が残ってしまっていることがあるのです。特に、不動産会社が掲載している物件には「自社物件」と「他社物件」があり、他社や個人のオーナーが管理している物件が成約済みになった場合、即時には反映できないという事情があります。

 しかし、管理がしっかりしている不動産会社なら成約から削除までのタイムラグは最小限に抑えられますし、ましてや削除忘れなどは発生しません。あまりうっかりばかりして、意図せずおとり物件ばかり掲載している不動産会社にはあまりお世話になりたくありませんよね。情報管理が苦手な不動産屋の特徴には、物件の詳細情報が「お問い合わせください」ばかりだったり、物件の画像が使いまわしばかりとか、そもそも画像がなかったりという点が上げられます。このような不動産屋はなるべく避けて、安全な部屋探しをしてください。

<参考サイト>
・ホームズ 賃貸の“おとり物件”って知ってる?見極め方と対処法
https://www.homes.co.jp/cont/rent/rent_00200/
・Woman CHINTAI おとり物件に引っかからない!見抜くためのチェックポイントは?
https://woman.chintai/article/knowledge/0385_otori_ss1/
・東洋経済ONLINE 部屋探しで「おとり物件」に騙される人の盲点
https://toyokeizai.net/articles/-/269544
・SUUMO 賃貸“おとり物件”の見分け方とは? おとり物件ができる背景と対処法を解説
https://suumo.jp/article/oyakudachi/oyaku/chintai/fr_other/otoribukken/
消費者庁 不動産のおとり広告に関する表示
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/representation_regulation/case_003/
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
より深い大人の教養が身に付く 『テンミニッツTV』 をオススメします。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

千手千眼観音のサポートとは?菩薩たちのビッグバンとは?

千手千眼観音のサポートとは?菩薩たちのビッグバンとは?

おもしろき『法華経』の世界(3)止観と菩薩による救済

最澄の瞑想図は非常に美しいが、彼は何を瞑想していたのだろうか。答えは無、心の動きを止めるのが「止観」だからだ。また、『法華経』全巻の構成を見ると、弥勒、観音、普賢の三菩薩が衆生を導き救済する中心的存在であること...
収録日:2025/01/27
追加日:2025/05/18
鎌田東二
京都大学名誉教授
2

トランプ関税はアダム・スミス以前の重商主義より原始的

トランプ関税はアダム・スミス以前の重商主義より原始的

第2次トランプ政権の危険性と本質(2)トランプ関税のおかしな発想

「トランプ関税」といわれる関税政策を積極的に行う第二次トランプ政権だが、この政策によるショックから株価が乱高下している。この政策は二国間の貿易収支を問題視し、それを「損得」で判断してのものだが、そもそもその考え...
収録日:2025/04/07
追加日:2025/05/17
柿埜真吾
経済学者
3

相互関税の影響は?…トランプが築く現代版の万里の長城

相互関税の影響は?…トランプが築く現代版の万里の長城

世界を混乱させるトランプ関税攻勢の狙い(1)「相互関税」とは何か?

トランプ大統領は、2025年4月2日(アメリカ時間)に貿易相手国に「相互関税」を課すと発表し、「解放の日」だと唱えた。しかし、「相互関税」の考え方は、まったくよくわからないのが実状だ。はたして、トランプ大統領がめざす...
収録日:2025/04/04
追加日:2025/04/10
島田晴雄
慶應義塾大学名誉教授
4

米国史の教訓…ドル基軸通貨体制の信認を問う大転換に?

米国史の教訓…ドル基軸通貨体制の信認を問う大転換に?

株価と歴史…トランプ関税の影響を読む(1)アメリカ史の教訓とは

トランプ関税の影響は、今後、どのように広がっていくのだろうか? 過去の大きな構造変化や金融環境の変化が各国の「株価リターン」にどのような影響を与えたのかを分析しつつ、今後を考えるヒントがないかを検証していく。第1...
収録日:2025/04/18
追加日:2025/05/02
養田功一郎
元三井住友DSアセットマネジメント執行役員
5

重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ

重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ

「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス

「重要思考」で考え、伝え、聴き、そして会話・議論する――三谷宏治氏が著書『一瞬で大切なことを伝える技術』の中で提唱した「重要思考」は、大事な論理思考の一つである。近年、「ロジカルシンキング」の重要性が叫ばれるよう...
収録日:2023/10/06
追加日:2024/01/24
三谷宏治
KIT(金沢工業大学)虎ノ門大学院 教授