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DATE/ 2023.08.20

なぜ昔の車には「つり革」が付いていた?

 車の見た目は時代によって大きく変わります。形自体も違うという点もありますが、今では見かけなくなったパーツというものもあります。たとえば「アースベルト」は一時期、流行したといえるでしょう。これは車の後部に地面と接するようにゴム紐を垂らすもの。先に吊革のような「輪っか」がついていることもありました。これは一体何だったのでしょうか。

静電気対策? ドレスアップ?

 この「アースベルト」、スマホのストラップに指を通して落下を防ぐタイプのものがありますが、この形に近いかもしれません。紐の部分は太めのゴムでできていて、1メートルほどあります。「アースゴム」とも呼ばれ、一時期はカー用品店で広く販売されていたようです。おおよそ1970年代から1980年代に流行しています。その頃の一部の車は、これをリアバンパーにつけて垂らして走っていました。

 機能としては車の帯電を防ぐとされ、もともとはカーオーディオやアマチュア無線の愛好家がノイズ除去を目的として装着したようです。ただしドレスアップアイテムとして、つまりかっこいいアイテムとして装着されることも多かったようです。特に車高を落とした車はこの紐が地面にぺったりとくっつくことから、車高の低さをアピールすることもできたようです。

 その後、おおよそ1985年以降になるとポール型アンテナ(車載テレビや自動車電話のアンテナ)が「空気中に静電気を放電する」として人気になります。こうして「アースベルト(アースゴム)」は少しずつ減っていたようです。さらに2000年代になると、電装系にアースケーブルを追加する「アーシング」という放電の方法も流行ったようです。

タイヤは電気を逃している

 ただし現在では、どれもあまり見かけなくなりました。理由としてはいくつか考えられますが、そこまでの効果が得られなかった、ということが一つ挙げられるかもしれません。このことで、流行の変化に流されるように消えていったということではないでしょうか。実際のところ特に現代の車では、走りながらタイヤを通して放電しているので、特にアースベルトを使う必要はありません。

 タイヤは電気を通さないと思われがちですが、実はタイヤの成分のうちゴム(天然ゴム・合成ゴム)が占める割合は50%程度。他にもタイヤは100種類を超える原材料でできています。このなかでもたとえば補強財の一つで、タイヤが黒い理由の一つである「カーボンブラック」は電気を通します。またタイヤの強度や形状を保つために一定程度スチールも含まれます。これらが道路と接することで車全体の帯電はある程度防がれる仕組みになっています。

 最近はタイヤに「シリカ」を配合するようになっています。このことで燃費性能も向上するのですが、問題はこの物質が電気を通さないという点です。しかし、この点についても「導電スリット」と呼ばれる微細な溝を設けて、そこから静電気を逃すようになっています。こうして現在ではグリップ性が優れていながら、ある程度道路に放電しながら走れる快適なタイヤが増えています。

<参考サイト>
・タイヤの原材料|GOOD YEAR
https://www.goodyear.co.jp/knowledge/rawmaterial.html
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テンミニッツTV編集部
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