テンミニッツ・アカデミー|有識者による1話10分のオンライン講義
会員登録 テンミニッツ・アカデミーとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2023.10.26

運転中に地震が起きたらどうすべき?

 日本では、日々かなりの地震が発生しています。数字で見ると、2021年に起きた震度1以上の地震は2,424回、2022年は1,964回となっています。また震度4以上の大きな地震に絞ると2021年には54回、2022年には51回発生しています。これだけ発生していれば、車を運転している時に遭遇するリスクは決して低くありません。運転中に地震に遭遇したらどういう対処をすればいいのでしょう。

地震発生からの手順、とるべき行動とは

 警察庁の資料をベースに、JAFや自動車保険などが提供する資料をまとめると、車を運転中に地震に遭遇したときとるべき行動手順は次のように言うことができそうです。

1、揺れにハンドルをとられないよう、ハンドルをしっかり握る。
2、ハザードランプを付けて、後続車などに注意を促す。
3、減速しゆっくりと道路の左端に寄せて停車する。
4、停車したらカーラジオ等で地震情報や交通情報を聞く(慌てて外に出ない)。
5、避難の必要が生じた場合、車はできるだけ道路外の場所に移動させる。
6、車を置いて避難する際は、窓を閉めてエンジンを切り、サイドブレーキを引いておく。このときキーを付けたままにする(もしくは運転席などのわかりやすい場所に置いておく)。ドアはロックしない。

 以上が、運転中に地震に遭遇した際にとる行動です。災害時は緊急車両や救援車両が通行することが考えられます。一番大きなポイントは車を置いて非難するときには「キーを置いていく」ことかと思われます。緊急車両の走行で邪魔になった場合、車を移動させる必要があるためです。また車内に氏名と連絡先を書いたメモを残し、車検証を持ち出すと、あとで車の所有権確認がスムーズというアドバイスもあります。もしキーがない車が妨げになった場合は、災害対策基本法により車を破損し移動させることができることになっています。

 「車を置いて避難する必要があるかどうか」という点については、左側に寄って停車した後、ラジオやテレビ、スマートフォンなどで緊急地震速報をよく確認して判断しましょう。もしそのまま車の運転を続けた場合、火災や道路の陥没、崩落、高架の倒壊といった二次災害に巻き込まれるリスクがあります。例外としては、津波から避難する緊急の場合が考えられます。ただし、このときもできる限り状況を確認する必要はあります。

今後30年間で震度6弱以上の地震が起きる確率は高い

 ただ、実際地震が起きたときにこういった行動がとれる人は、多くないかもしれません。東京海上日動の記事によると、2016年に熊本地震(震度6強)が発生したときには、約2割程度が停車せずに走行を続けたそうです。また調査対象となった270人のうち、エンジンキーを付けたままドアロックせずに待避する行動がとれた人は12人となっています。つまり、望ましい退避行動がとれたのは全体の4%程度ということになります。

 この先も日本では、「南海トラフ」や「千島海溝」といった場所での大きな地震が起きるリスクがあります。NHKの資料(2020年版)によると、今後30年間で「激しい揺れ(震度6弱以上)」の地震が起きる確率はかなり高いようです。たとえば北から順に70%以上のところをピックアップすると以下の通り。北海道根室市(80%)、北海道釧路市(71%)、茨城県水戸市(81%)、静岡県静岡市(70%)、高知県高知市(75%)、徳島県徳島市(75%)。状況によっては車を置いて避難する必要が生じる場合もあります。「エンジンキーは付けたままドアはロックせずに避難する」このことを今のうちに覚えておきましょう。

<参考>
令和4年(2022 年)の地震活動について|気象庁
https://www.jma.go.jp/jma/press/2301/12a/2212jishin2022.pdf
大地震が発生したときに運転者がとるべき措置│警視庁
https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/seibi2/saigaiji/daizisinnunntennsya.html
走行中に大地震に遭遇したとき、適切な退避行動をとれますか?│東京海上日動
https://www.tokiomarine-nichido.co.jp/world/guide/drive/201903.html
[Q]クルマを運転中、大きな地震の発生や緊急地震速報があったらどうすべき?│JAF
https://jaf.or.jp/common/kuruma-qa/category-natural/subcategory-another/faq232
運転中に地震に遭遇した場合の対処法│ソニー損保
https://www.sonysonpo.co.jp/auto/guide/agde931.html
運転中に、地震を感じたら|国土交通省 中部地方整備局 静岡国道事務所
https://www.cbr.mlit.go.jp/shizukoku/bosai/gratto/unten.html
地震動予測地図 震度6弱以上 各地のリスク|NHK
https://www3.nhk.or.jp/news/special/saigai/natural-disaster/natural-disaster_10.html
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
物知りもいいけど知的な教養人も“あり”だと思います。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

台湾クーデター・シミュレーション…「世直し」への条件

台湾クーデター・シミュレーション…「世直し」への条件

編集部ラジオ2025(25)クーデターで考える「政治の要点」

冷戦終結後に減少していた「クーデター」。しかし、2019年以降、再び増えだしているといいます。その背景には、中国やロシアなど「権威主義」の国々とアメリカとの対立、さらに「ワグネル」など民間軍事会社の暗躍などがありま...
収録日:2025/09/29
追加日:2025/10/23
2

やればできる!再生可能エネルギーのポテンシャル高い日本

やればできる!再生可能エネルギーのポテンシャル高い日本

産業イニシアティブでつくるプラチナ社会(2)再生可能エネルギーの可能性と経済性

持続可能な日本社会をめざす「プラチナ社会」の構想。その実現に向け2024年12月に設立されたのが再生可能エネルギー産業イニシアティブで、これは再生可能エネルギーで国内の電力を賄おうというものだ。AI技術の普及などで今後...
収録日:2025/04/21
追加日:2025/10/23
小宮山宏
東京大学第28代総長 株式会社三菱総合研究所 理事長 テンミニッツ・アカデミー座長
3

台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性

台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性

クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か

サヘル地域をはじめとして、近年、世界各地で多発しているクーデター。その背景や、クーデターとはそもそもどのような政治行為なのかを掘り下げることで国際政治を捉え直す本シリーズ。まず、未来の“if”として台湾でのクーデタ...
収録日:2025/07/23
追加日:2025/10/04
上杉勇司
早稲田大学国際教養学部・国際コミュニケーション研究科教授 沖縄平和協力センター副理事長
4

なぜ子どもは教えられても理解できないのか?鍵はスキーマ

なぜ子どもは教えられても理解できないのか?鍵はスキーマ

学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(2)言葉を理解するプロセスとスキーマ

算数が苦手な子どもが多く、特に分数でつまずいてしまう子どもが非常に多いというのは世界的な問題になっているという。いったいどういうことなのか。そこで今回は、私たちが言語習得の鍵となる「スキーマ」という概念を取り上...
収録日:2025/05/12
追加日:2025/10/06
今井むつみ
一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事 慶應義塾大学名誉教授
5

ソニー流「多角化経営」と「人的資本経営」の成功法とは?

ソニー流「多角化経営」と「人的資本経営」の成功法とは?

エンタテインメントビジネスと人的資本経営(1)ソニー流の多角化経営の真髄

ソニー・ミュージックエンタテインメント(ジャパン)は、アメリカのコロムビアレコードと1968年に創業した、日本初の外資とのジョイントベンチャーである。ソニーはもともとエレクトロニクスの会社だったが、今のソニーグルー...
収録日:2025/05/08
追加日:2025/10/20
水野道訓
元ソニー・ミュージックエンタテインメント代表取締役CEO