テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
ログイン 会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2024.01.07

なぜアメリカで日本の軽トラが人気なのか?

 軽トラは日本の農村などで大活躍しています。かなり長い間、大きな変更が加わることなく販売されてきたロングセラーといっていいでしょう。農業などでの実用的な用途のほか、ちょっとした荷物を積んで移動するときなどにも重宝する車です。実はこの日本の軽トラ、アメリカでも人気があるようです。ではなぜアメリカでは軽トラックに人気があるのでしょうか。

25年以上経過した右ハンドル車は人気がある

 アメリカやカナダでは、保安基準により原則的に右ハンドルの車は登録することも走行することもできません。つまり、日本やイギリスで作られた右ハンドルの車は基本的にアメリカでは走ることができないのです。このことから日本のメーカーは、日本で販売されている車種でも現地の工場で左ハンドルの車として生産しています。

 ただしこの点については、アメリカ合衆国運輸省(NHTSA)が決めている特別ルール(俗称「25年ルール」)があります。これは「製造から25年経過した車であればこの基準から除外される」というものです。なぜ25年経過したらOKなのかと言えば、古い車は「クラシックカー」としてコレクション目的などで所有することが想定されるからです。さらに「クラシックカー」扱いなので、関税や排ガス規制からも除外されます。これは右ハンドルの車を所有したい人に取って大きなメリットです。

 こうしてアメリカでは25年以上前に製造された車のうち、まずは若者を中心に日本のスポーツカーに人気が集まっています。これは俗にJDM(Japanese domestic market)と呼ばれる車たちです。この背景には、日本車もたくさん登場する「グランツーリスモ」というレースゲームや、「日産スカイラインGTR R34」や「マツダRX7」などの日本車が登場するカーアクション映画「ワイルド・スピード」などが大きく影響しているようです。

軽トラックは小回りと経済性で大人気

 一方、スポーツカーとは真逆に位置する軽トラックも大人気です。この理由はズバリ小回りの良さと経済性です。アメリカの農場などで活躍しているのは主に「ピックアップトラック」と呼ばれる比較的大きな車ですが、3万ドル程度(日本円で400万円を越える)などそれなりに価格が高いようです。これに対して、軽トラックはものによりますが日本円で30万円程度から高くても90万円程度で買うことができるようです。

 軽トラは納屋にそのまま入ることができたり、大きさの割に荷物を積むことができたりする点も魅力です。また悪路の走行性にも優れており、問題が発生してもシンプルな作りの軽トラックは修理が容易です。さらに日本車はもともとメンテナンスがかなり行き届いています。アメリカには車検がありませんが、日本では2年おきに車検を受けなければならないからです。この点から、そもそも中古車全体の質が日本ではかなり高いといえます。加えて軽トラックは年数が経過しても走行距離が短い、という点も魅力の一つです。

 つまり、たとえ25年落ちであったとしても軽トラックは十分使用に耐えうる場合が多い車と言えます。ただし、やはり外国人の体格にはちょっと小さすぎたり、高速走行には弱さがあったりする点はマイナスポイントとも捉えられているようです。またエアバッグが標準搭載ではないという点もやや気になる人はいます。こういった欠点はあっても、多くの場合日本車そのものの信頼性は北米でかなり高いことから、安心して乗ることができるという声が強いようです。このように、日本の軽トラは主にアメリカの農場で人気が高い車種となっているのです。

<参考>
アメリカ「25年ルール」とは?名車の中古相場が急騰するしくみ|旧車王ヒストリア
https://www.qsha-oh.com/historia/article/3662/
車幅は小さく、荷台は大きく、壊れない…日本の軽トラが「世界でいちばん実用的なクルマ」と絶賛される理由│プレジデントオンライン
https://president.jp/articles/-/73560?page=1
軽トラや右ハンドル車がアメリカで密かなブーム|東洋経済ONLINE
https://toyokeizai.net/articles/-/669505
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
物知りもいいけど知的な教養人も“あり”だと思います。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,100本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

石田梅岩が唱えた「商売の基本」、不足の共有化が鍵

石田梅岩が唱えた「商売の基本」、不足の共有化が鍵

石田梅岩の心学に学ぶ(4)商売の基本と梅岩教学

石田梅岩の大きなテーマである「商売の基本」はどこにあるか。それは「不足」についての認識を共有化することだと田口氏は言う。20年の探究が実を結び、石田梅岩が講席を開いたのは1729年。以後、講席は15年続くが、本人の講義...
収録日:2022/06/28
追加日:2024/04/29
田口佳史
東洋思想研究家
2

なぜ民主主義が「最善」か…法の支配とキリスト教的背景

なぜ民主主義が「最善」か…法の支配とキリスト教的背景

民主主義の本質(1)近代民主主義とキリスト教

ロシアや中華人民共和国など、自由と民主主義を否定する権威主義国の脅威の増大。一方、日本、アメリカ、西欧など自由主義諸国における政治の劣化とポピュリズム……。いま、自由と民主主義は大きな試練の時を迎えている。このよ...
収録日:2024/02/05
追加日:2024/03/26
橋爪大三郎
社会学者
3

繁華街・新宿のルーツ、江戸時代の遊女が働く飯盛旅籠とは

繁華街・新宿のルーツ、江戸時代の遊女が働く飯盛旅籠とは

『江戸名所図会』で歩く東京~内藤新宿(2)「夜の街」新宿の原点

歌舞伎町を筆頭に、東京でも有数の繁華街を持つ新宿だが、その礎は江戸時代の内藤新宿にあった。遊女が働く飯盛旅籠(めしもりはたご)によって、安価に遊興できる庶民の「夜の街」として栄えた内藤新宿の様子を、『江戸名所図...
収録日:2024/02/19
追加日:2024/04/28
堀口茉純
歴史作家
4

日本は再エネが難しい!?再エネ比率が高い国との相違点

日本は再エネが難しい!?再エネ比率が高い国との相違点

日本のエネルギー&デジタル戦略の未来像(3)電力の部分最適と全体最適

サステナブルな電力の供給と消費が求められる現代社会。太陽光発電のように電力の生産拠点が多元化する中で、それぞれの電力需給と国全体の電力需給のバランス調整が喫緊の課題となっている。実はヨーロッパなどの「再エネ比率...
収録日:2024/02/07
追加日:2024/04/27
岡本浩
東京電力パワーグリッド株式会社取締役副社長執行役員最高技術責任者
5

イーロン・マスクと対立…ChatGPT大ブームまでの紆余曲折

イーロン・マスクと対立…ChatGPT大ブームまでの紆余曲折

サム・アルトマンの成功哲学とOpenAI秘話(2)ChatGPT開発秘話

仕事をはじめさまざまな生活シーンで多様な役割をこなすチャットボットとなった「ChatGPT」。OpenAIが公開したこのサービスが世界中を驚かせるまでには、その創業に携わったサム・アルトマンとイーロン・マスクの対立など紆余曲...
収録日:2024/03/13
追加日:2024/04/26
桑原晃弥
経済・経営ジャーナリスト