社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2024.10.09

なぜ世界の共通言語は英語なのか

 現在、最も世界で有効といえるリンガフランカ(異なる言語を使う人たちの間で意思伝達手段として使われる言語)は、英語です。

 ではなぜ、英語はリンガフランカ=世界の共通言語となったのでしょうか。それはずばり、「19世紀から現代に続く長期にわたる世界の覇権国の公用語および主となる母語が英語だから」といえます。

 ではさらに、公用語および主となる母語が英語で19世紀から現代に続く長期にわたる実質的な世界の覇権国とは、具体的にどの国を指すのでしょうか。それはずばり、イギリスとアメリカの二国を指します。

共通言語として英語を広めた国・イギリス

 世界の共通言語として英語を広めた国は、イギリスです。イギリスの漢字表記は「英国」であるように、英語はイギリス発祥の言語です。

 17世紀以降、世界各地に植民地を建設したイギリスは、1815年のワーテルローの戦いに勝利し覇権国となります。最盛期には全世界の4分の1を領土とし大英帝国と称されるほど繁栄したイギリスの植民地や関係国では、英語が共通言語として広まっていきました。

 ただし、最初の頃は、英語はエリートや教養や教育に手の届く富裕層が話す言語でした。しかし、時代が下がるにつれ、自国の現地語を有しながらも、英語は経済・政治・宗教などの共通言語として広く現地の人々にも学ばれ、使われるようになっていきます。この傾向は、イギリスからの独立後も今にいたるまで続いています。

共通言語としての英語を強化した国・アメリカ

 さらに英語話者は北米へも渡り、アメリカ合衆国を建国します。ちなみに、アメリカへの入植者は英語話者だけではありませんでした。しかし、アメリカ合衆国の建国者たちは英語の重要性を把握し、公用語として英語を採用しました。これにより、世界の共通言語としての英語の立場は強固となりました。

 そして、1945年の第二次大戦後、アメリカが覇権国となりました。現在にいたるまで一貫して、アメリカは世界第一位の経済大国として繁栄し、経済・政治・軍事などあらゆる面において圧倒的な影響力をもっています。そのため、世界の共通言語としての英語の価値はますます高まり、日々強化されています。

 以上のように英語は、①イギリスの世界規模の領土拡大ととも経済・政治・宗教などの共通言語として世界へと広まり、②アメリカの圧倒的な影響力で世界の共通言語としての認識が強化された――といえます。

 なお、よくいわれる「英語は習得が簡単な言語だから世界の共通言語として広まった」という説は、間違いです。なぜなら、英語は比較的に習得が難しい言語だからです。その理由としては、膨大なボキャブラリー(語彙)、古ノルド語やフランス語など多言語からの大量の借用、一貫性のない文法などが挙げられます。

 しかし、すでに英語は世界の共通語として浸透しているため、近未来において他の言語にその位置を奪われることはあまり考えられません。そのため、比較的に習得が難しい言語であっても、英語を習得する価値は十分にあると考えられます。

<参考文献・参考サイト>
・『日本大百科全書(ニッポニカ)』(小学館)
・『世界大百科事典』(平凡社)
・英語が共通語になった3つの理由とは!?なぜ世界共通語になったのか?
https://www.word-connection.jp/how-did-english-become-a-global-language/
・英語はいかにして世界の共通語になったのか│IIBC
https://www.iibc-global.org/iibc/activity/iibc_newsletter/nl144_feature_03.html
・世界の歴史に見る覇権争いとその結末 | 島田晴雄
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=2403
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
“社会人学習”できていますか? 『テンミニッツTV』 なら手軽に始められます。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

忠犬ハチ公で哲学する…人と犬の関係から見えてくる道徳論

忠犬ハチ公で哲学する…人と犬の関係から見えてくる道徳論

東大ハチ公物語―人と犬の関係(1)上野英三郎博士とハチ

東京大学大学院人文社会系研究科教授・一ノ瀬正樹氏が、海外でも有名な「ハチ公」の逸話を例に、人と犬の関係について考察する。第一回目は、ハチの飼い主・上野英三郎博士について触れ、東大とハチ公の結びつきや、東大駒場キ...
収録日:2017/04/04
追加日:2017/06/13
一ノ瀬正樹
東京大学名誉教授 武蔵野大学人間科学部人間科学科教授
2

使えるデータで「健康のプラットフォーム」を実現しよう

使えるデータで「健康のプラットフォーム」を実現しよう

産業イニシアティブでつくるプラチナ社会(3)健康産業イニシアティブ実装に向けて

「プラチナ社会」の実現には、人々の健康もその重要な指標になる。それを支える「健康産業イニシアティブ」とは、いったいどのような構想なのか。日本の弘前大学をはじめ、アジアの周辺諸国で集められるビッグデータを資源に、...
収録日:2025/04/21
追加日:2025/10/29
小宮山宏
東京大学第28代総長 株式会社三菱総合研究所 理事長 テンミニッツ・アカデミー座長
3

変人募集中…0から1を生める人、発掘する人、育てる人

変人募集中…0から1を生める人、発掘する人、育てる人

エンタテインメントビジネスと人的資本経営(4)エンタメで一番重要なのは「人」

エンタメビジネスにおいて一番大切なのは「人」である。さらに、「0から1を生める」クリエイターが必須であることはいうまでもないが、そのような人材だけではエンタテインメントビジネスは成立しない。時として異能で多様なク...
収録日:2025/05/08
追加日:2025/10/28
水野道訓
元ソニー・ミュージックエンタテインメント代表取締役CEO
4

正直とは何か――絶対的存在との信頼関係の根幹にあるもの

正直とは何か――絶対的存在との信頼関係の根幹にあるもの

徳と仏教の人生論(2)和合の至りと正直

『書経』を研究する中で発見した真理について理解を深めていく今回。徳は天をも感動させる力を持ち、真の和合は神を動かす。そして、宇宙は人間のように、また人間も宇宙のように構成されており、その根底には「正直」がある。...
収録日:2025/05/21
追加日:2025/10/25
5

一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界

一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界

習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?

「習近平中国」「習近平時代」における中国内政の特徴を見る上では、それ以前との比較が欠かせない。「中国は、毛沢東により立ち上がり、鄧小平により豊かになり、そして習近平により強くなる」という彼自身の言葉通りの路線が...
収録日:2025/07/01
追加日:2025/09/25
垂秀夫
元日本国駐中華人民共和国特命全権大使