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DATE/ 2024.07.05

天井のあの模様、なぜよく使われている?

気になる天井の「あの模様」

 普段はじっくり見ることがあまりなくても、なんとなく見慣れているものってありますよね。今回はそんななにげない存在の中から、天井の「あの模様」に注目してみます。

「あの模様」とは、オフィスや学校の天井によく見られる、「たくさん並んだ小さな穴や細かいひび割れのような模様」です。わざわざじっと見ることはなくても、「そういえばいろいろなところにあるな」と思う方は多いのではないでしょうか。

 この模様には、「トラバーチン模様」という名前がつけられています。トラバーチンとは無機質石灰岩である大理石の一種で、古くは古代ローマの時代からコロッセオなどの建築資材として使われてきました。この模様を模した天井材が、トラバーチン模様と呼ばれているのです。

 現代の日本ではオフィスや学校のほか、病院やホテルなどでも幅広く使用されており、天井以外にも壁や床に使用されていることもあります。トラバーチン模様はまさに“国民的建築資材”といえるくらいに、多くの建造物のあらゆる場所に採用されています。

なぜよく使われているの?

 それではなぜ、トラバーチン模様は幅広く使われているのでしょうか。そのメリットには次のようなものがあります。

・リーズナブルでコスパがいい:トラバーチン模様を取り入れた天井材のひとつに、吉野石膏社が販売する「ジプトーン」があります。天井材は天然木材などを使用すると1平方メートルが数万円にもなりますが、ジプトーンは1平方メートルが約2000円で、天井材の中では最安値レベル。天井施工に必要なプラスターボード・パテ・ビニールクロスがひとつになっていて工期短縮もできるので、とてもコスパに優れた天井材なのです。

・吸音効果がある:トラバーチン模様は細かい穴状の凹凸がたくさんあるので表面積が大きく、吸音効果に優れています。静かな空間が必要なオフィスや学校にはぴったりなのですね。

・ビスなどの施工あとが目立たない:細かい模様が満遍なく広がっているトラバーチン模様はビスを打っても目立ちにくく、傷などを修復した場合も外観が損なわれにくいです。

 また、ジプトーンは不燃材を使用しているので建築基準法の規定をクリアしやすい点も好まれる理由のひとつ。耐火性・断熱性にも優れており、建築資材に求められる要素をオールマイティーに備えています。

ちょっと気持ち悪いという人も…

 いいところばかりのように見えるトラバーチン模様ですが、やはりデメリットもあります。それは次のようなもの。

・模様が気持ち悪い、怖い:個人の感じ方の違いではありますが、トラバーチン模様特有の穴やひび割れが虫食いのあとのように見えて気持ち悪い、恐怖を感じるという人もいます。天井をわざわざよく見ることは少ないかもしれませんが、一度気になるとずっと意識してしまいますし、ストレスになりますよね。

・高級感が少ない:もともとリーズナブルなのでしかたありませんが、高級感が出にくい素材といえます。たとえばホテルを見てみると、トラバーチン模様を使用しているのはリーズナブルなビジネスホテルなどが多く、ラグジュアリーなホテルでは使用されにくいです。

・垢抜けない、古くさい印象がある:あまりおしゃれではない建造物で使われることが多いので、なんとなく“ダサい”と感じる人が多いようです。長く使用されている素材なので、古くさく前時代的なイメージも持たれがちです。

 トラバーチン模様のデメリットは外見的なものがほとんどなので、機能性が優先される建造物ではこれからも使われていくでしょう。トラバーチン模様を見て学校の天井を思い出し、ノスタルジックな気持ちになる方も多いのではないでしょうか。

<参考サイト>
株式会社SEED トラバーチン模様の基礎知識|使われている場所や種類をご紹介
https://www.seed-sc.com/news/column/2238/
株式会社リバネス トラバーチン模様とは?由来・仕様される場所・メリットをご紹介
https://www.levanes2015.co.jp/column/846/
株式会社大滝工務店 学校や事務所の天井でよくみる、あの模様のヒミツ。
https://www.wantedly.com/companies/ohtaki/post_articles/238649
株式会社神清 天井張り替え費用は6畳だとどれくらい?費用を抑えるコツも解説
https://kamisei.co.jp/news/74358
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