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警察官風のコスプレは犯罪になるのか?
コスプレにもいろいろあるけれど
現在はプロのコスプレイヤーも存在し、身近になったコスプレですが、気をつけたいマナーもいくつかあります。たとえば、あまりにも露出が多い衣装は避ける、周囲にぶつかって迷惑をかけるような長柄のものは持たない、など。また、コスプレの代表的なイベントでもあるハロウィンは、渋谷のスクランブル交差点などがコスプレ姿の人で大混雑する様子がおなじみでしたが、近年は事故防止のためにコスプレ姿で公道に集まらないよう呼びかけられています。この点も忘れないようにしましょう。もちろん、基本的には自分の好きな衣装を着て楽しむのが一番なのですが、実は法律に触れてしまうコスプレもあるのをご存知でしょうか。その代表例が警察官です。かっこいい警察官の制服はついコスプレしたくなってしまいそうですが、なぜいけないのでしょうか。
警察官のコスプレはなぜ犯罪?
では実際に、警察官の制服を着ている人がいると想像してみてください。それが知らない人だったら、本物の警察官なのか、コスプレの警察官なのかわかりませんよね。その状態で事故や事件に直面したとき、助けを求めた警察官が実はコスプレの警察官だったらどうなるでしょうか。コスプレの警察官には当然ながら現場検証や容疑者を逮捕する権限がないので、なにもできません。これでは困りますよね。本物の警察官だと信じこんでいたら、「警察は頼りにならない」と思ってしまう人もいるでしょう。つまり、警察官ではない人が勝手に警察官の制服を着てしまうと、警察の信頼を損ねる可能性があるため法律で禁じられているのです。主に適用される法律は「軽犯罪法1条15号」で、要約すると「法律で定められた資格(警察官や消防士など)を持っていないものが、その資格を持っていると嘘をついたり、その資格に対応する制服や勲章(警察官なら制服のほかに階級章や警察手帳など)などを偽造した場合、拘留または科料」と定められています。
現実的には、詐欺のために警察官の制服を着て警察官のふりをしたというようなケースでなければ逮捕されることはほとんどないようです。ハロウィンのコスプレで警察官の制服を着たというケースなら、口頭注意を受けるだけですむかもしれません。しかし、周囲の人々を困らせてしまうことは事実。まぎらわしいコスプレは控えましょう。
犯罪にならない場合もある
さて、ここまでの解説をご覧になって、「でも、バラエティショップには警察官のコスプレ衣装も売ってるよね?」という疑問をお持ちになった方もいらっしゃるのではないでしょうか。ここで重要になるのが、「本物の警察官と誤認されるコスプレ」だと違法になる可能性が高いという点です。これは裏を返せば、「誤認されなければOK」ということ。次のような場合には、犯罪には当たりません。・本物の警察官の制服とは大きく異なる架空の制服:たとえば大胆に足を露出した「ミニスカポリス」のような衣装は、明らかに本物の警察官の制服ではないとわかりますよね。この衣装を着ていても本物の警察官とは思われないので、違法ではありません。違法性を認められるのは、実在の警察官の制服を精密に再現した衣装の場合です。バラエティショップで販売されているのは、特徴をデフォルメした「警察官の制服風」衣装なのです。
・著名人などがパフォーマンスで着る制服:警察のイベントで芸能人が一日署長に任命されると、警察官の制服を着て登場しますよね。しかしこのとき、周囲の人々はその制服を着ている人が芸能人であり、警察官ではないとわかっています。このように、着ている人が警察官ではないと周知されている場合は違法にはなりません。
・明らかに本物の警察官ではないとわかる状況:実在の警察官の制服にそっくりな衣装を着ている人がいても、その近くにカメラやマイクを持っている人がいたら、「なにかの撮影だからあの人は本物の警察官ではない」とわかりますよね。このように、制服姿に対する信頼性が求められない場合も、違法にはなりません。
・ごくプライベートなコスプレ:自宅やスタジオなどで一人だけで写真を撮影した場合、そもそも誤認する他人がいません。このように他人の目に触れないコスプレであれば、精密な警察官の制服でコスプレしても問題ないのです。コスプレする本人が警察官ではないとわかっている人だけが集まっている場合も、違法とはみなされません。
警察官の制服にそっくりな衣装を所持すること自体は、犯罪にはなりません。問題はあくまで「警察官ではない人を警察官と誤認させてしまうこと」です。周囲に迷惑をかけないよう配慮して、コスプレを楽しむように心がけたいですね。
<参考サイト>
・LEGALUS 警察官の精巧なコスプレを着用したら犯罪になるでしょうか?
https://legalus.jp/column/711d0b5d-fe78-439d-bd92-b5c810ad1047
・あいち刑事事件総合法律事務所 【事例解説】ハロウィンで警察官のコスプレをすると犯罪に該当する?コスプレで該当するおそれのある犯罪
https://tokyo-keijibengosi.com/jireikaisetsu-halloween-kosupure-keihanzaihouihan/
・弁護士法人菰田総合法律事務所 【相談事例41】警察官のコスプレは違法?~軽犯罪法違反について③~
https://www.nakagawa-lawoffice.jp/blog/755/
・NHK ハロウィーン2024 渋谷駅や歌舞伎町周辺は?渋谷区と新宿区が合同対策 “酒販売の自粛を”
https://www.nhk.or.jp/shutoken/articles/101/013/04/
・LEGALUS 警察官の精巧なコスプレを着用したら犯罪になるでしょうか?
https://legalus.jp/column/711d0b5d-fe78-439d-bd92-b5c810ad1047
・あいち刑事事件総合法律事務所 【事例解説】ハロウィンで警察官のコスプレをすると犯罪に該当する?コスプレで該当するおそれのある犯罪
https://tokyo-keijibengosi.com/jireikaisetsu-halloween-kosupure-keihanzaihouihan/
・弁護士法人菰田総合法律事務所 【相談事例41】警察官のコスプレは違法?~軽犯罪法違反について③~
https://www.nakagawa-lawoffice.jp/blog/755/
・NHK ハロウィーン2024 渋谷駅や歌舞伎町周辺は?渋谷区と新宿区が合同対策 “酒販売の自粛を”
https://www.nhk.or.jp/shutoken/articles/101/013/04/
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