死後の世界は本当に存在する?
古代から探求されてきた死後の世界
どれだけ医療が発展しても、最終的に逃れられない運命――それが「死」です。人間は古代から死を恐れ、死の恐怖から逃れるために死の向こう側を探求してきました。世界中に存在する宗教には、それぞれの「死後の世界」があります。死後の救済を示して安らぎを与えることも、宗教のひとつの役割といえるでしょう。日本人になじみの深い仏教には、「輪廻転生(りんねてんしょう)」という概念があります。これは、生命は死んでも生き返るという考え方。仏教の故郷・インドでは仏教成立以前から存在しており、生前の行いによって天上道から地獄道までの6つの世界のどれかに生まれ変わるとされます。
仏教ではこの概念をもとにして、天上界に転生しても苦しみは消えないと考えられました。仏教における生命の最終的な目的は、「悟り」を開いて転生のサイクルそのものから抜け出す「解脱(げだつ)」なのです。つまり、死は解脱のための通過点にすぎません。さらに、日本で発展した宗派のひとつ・浄土真宗では「南無阿弥陀仏」と唱えるだけで誰でも浄土に行けるとされました。
宗教が人々の心の支えになった歴史がよくわかりますね。
この世のすべては宇宙に記録される?
しかし、宗教における死後の世界は「信じる人にとっての真実」にすぎないといえます。そこで近年、注目を集めているのが「客観的な真実」となり得る科学的な死後の世界、ゼロ・ポイント・フィールド(ZPF)です。ZPFは最先端の量子科学から導いた概念。ベースには、この世に存在するものすべての最小単位は「素粒子」であり、素粒子は「エネルギーの波動」であるという理論があります。そして近年、「全宇宙に存在する素粒子はZPFに波動情報として半永久的に記録されている」という仮説が注目を集めています。ZPFに記録されるのはこの世に存在するものすべて。つまり、人間の思考や感情も含まれます。すべての人の人生は、肉体が滅んだのちも宇宙という記録媒体に保存されて残り続ける――これが科学的視点から見出せる、死後の世界といえるわけです。
なんとも壮大でSF映画のようにも感じられますが、宇宙に「量子真空」というエネルギーの集合場所があることは、科学的に証明済み。量子真空に素粒子の集合体であるZPFがあることを、完全には否定できません。ただし、まだ物理的メカニズムは解明されておらず、あくまで仮説というのもまた事実。
ここで不思議な一致を見せるのが、19世紀のヨーロッパで誕生したアカシックレコード(AR)という概念です。これは古代インド哲学で「虚空」や「空間」を意味する「アーカーシャ」に由来した神秘思想での捉え方で、「宇宙誕生以来のすべての存在が記録されている場所」とされています。ZPFとよく似ていますよね。もちろん、形而上学的なARと科学的概念のZPFを同列で語るのは根本的に無理がありますが、神秘思想の概念が科学的に導かれた仮説と一致するというのはなかなか興味深いです。
今後、ZPFの存在が明らかになれば、「前世の記憶」とか「死者との交信」などの神秘体験も科学的に説明できるようになります。そして、ARの時代から語られてきた「情報=魂の不滅」とか「人の記憶や経験は死で消滅するわけではない」という考え方も裏づけられます。もはや「死は存在しない」ということもいえるのではないでしょうか。
死の苦しみの正体とは
一方で、「臨死体験」という死後の世界の体験談も数多くあります。死の淵をさまよった人が降り注ぐ光を浴びたり、すでに亡くなった家族に再会したり……奇跡的に生還した人々が語ったこれらの体験談は、本当に死後の世界なのでしょうか。インペリアル・カレッジ・ロンドンの研究に、次のようなものがあります。強力な幻覚作用がある薬品を投与した(もちろん、厳重な安全管理下です)被験者たちにアンケートを行ったところ、臨死体験とそっくりの体験をしていることがわかりました。この結果は、臨死体験が人間の脳に基本的に備わった機能である可能性を示唆しています。死という極度のストレスを和らげるための最後のセーフティネット――それが、臨死体験の正体なのかもしれません。
実は多くの場合、人が死を迎えるときは意識レベルが低下して眠るように死ぬので、苦痛に悶えることはほとんどないそうです。それよりも本当に人を苦しめるのは「スピリチュアルペイン」、魂の痛み。具体的には、死に際して誰かに迷惑をかけるのではないかという罪悪感や、やり残したことへの後悔などです。海外の病院では聖職者がこの苦しみを取り除くためのケアをすることも多いのですが、日本では宗教関係者が病院にいることを縁起が悪いと嫌うこともあり、対処しきれていないのが現状です。
心残りが死を苦しみにしてしまうなら、今を有意義に生きることがなにより自分自身のためになるのではないでしょうか。死後の世界がどうなっているのか、本当に存在するのかはまだ解明されていません。死に備える終活も大切ですが、よくわかっていない「そのとき」を心配するあまり今を我慢しすぎていませんか。死の苦しみから解放されるためにも、後悔のない今を積み重ねているか、改めて自分自身に問いかけてみてください。
<参考サイト>
・【臨死体験は「死後の世界」の証拠ではない? 実は脳の働きによる“幻覚”の可能性:研究結果|WIRED
https://wired.jp/2018/10/14/near-death-experiences-psychedelic/
・「死後の世界」は存在するか?科学、医学、宗教の最前線が解き明かす「死の新常識」|女性セブンプラス
https://j7p.jp/133320
・そもそも死は存在しない? 「死後の謎」に迫る科学『ゼロ・ポイント・フィールド』とは|Forbes JAPAN
https://forbesjapan.com/articles/detail/60652
・【臨死体験は「死後の世界」の証拠ではない? 実は脳の働きによる“幻覚”の可能性:研究結果|WIRED
https://wired.jp/2018/10/14/near-death-experiences-psychedelic/
・「死後の世界」は存在するか?科学、医学、宗教の最前線が解き明かす「死の新常識」|女性セブンプラス
https://j7p.jp/133320
・そもそも死は存在しない? 「死後の謎」に迫る科学『ゼロ・ポイント・フィールド』とは|Forbes JAPAN
https://forbesjapan.com/articles/detail/60652
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