DATE/ 2026.02.13

「ショート動画」が及ぼす影響とは

なぜショート動画を見続けてしまうのか

 ちょっとした気分転換のつもりでショート動画を開いたら、あっという間に時間が過ぎていた……という経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。まずお伝えしておきたいのは、この現象の原因が「意志の弱さ」ではないということ。実はかなり戦略的に、見続ける設計がされているのです。このため、最近では若者だけでなく幅広い年齢の人が「ショート動画の時間泥棒」に頭を悩ませています。

 それでは、具体的にどんな「見続ける設計」が組み込まれているのでしょうか。次に上げる3点から分析してみましょう。

ショート動画をやめられない理由

 1・脳の仕組み:ショート動画には面白さだけでなく、驚きやかわいさなどの刺激が凝縮されています。すると脳は活発に反応して、快感や幸福感を呼び起こす脳内物質・ドーパミンをどんどん出します。ショート動画は映画や読書のように〝前フリ〟がなく〝最初からクライマックス〟なので、この快感や幸福感が次から次へと止まりません。このため、「もう1本」だけで終わらせることができないのです。

 2・集中力:ショート動画は数十秒程度で内容が切り替わります。しかも自分で選ぶのではなくシステム側のアルゴリズムが自動で次の動画を運んでくるので、集中しなくてもダラダラ見続けられます。特に暗い中でのスマホ視聴は脳が疲れやすく、〝やめどき〟を判断する能力が低下しがち。実際に、ショート動画の利用が多いほど集中力や抑制力に関係する指標が低い傾向にあるという分析もあります。ただし、ショート動画を見るとすぐに能力が落ちるということではありません。あくまで傾向のひとつです。

 3・時間感覚:ショート動画は全部が面白いわけではないのに見続けてしまいます。そのからくりは、〝ごほうびの出し方〟に関係するのだとか。毎回必ず当たるよりも、たまに強烈な当たりが出て、しかもそれがいつ来るかわからない……そういう状況のほうが人間は次を求めて続けてしまいがち。つまりガチャやスロットと同じような、ギャンブル的要素です。システム側もそれを理解しており、大して面白くない動画を出しながら、不定期で強烈に面白い1本を差し込んできます。すると人間は「次こそ面白い動画が来るかも」と期待して視聴を続けてしまいます。こうして時間感覚を失っていくのです。

 システム側からすればたくさん視聴してほしいのでしかたありませんが、あの手この手でショート動画から離れられないように工夫されていることがよくわかりますね。

上手なつきあい方を考えよう

 ショート動画の見すぎは脳を疲れさせて、仕事や勉強のパフォーマンスを落とします。寝る前に延々とショート動画を見ると、睡眠の質も悪くなるでしょう。メンタル面でも、不安やストレスと無関係ではなさそうという研究データがあります。これもまた確実な関係性が認められているわけではありませんが、無視できないデータのひとつです。

 反対に、自尊心や自分自身の身体を認識するボディイメージへの悪影響はなかったという報告もあります。ショート動画が心身のすべてに悪影響を与えるわけではないのです。だからこそ、「今日からショート動画は一切見ない」と身構える必要はありません。それよりも、つきあい方を見直して上手に視聴することを心がけてください。

 大切なポイントは、「見始める条件」を決めること。忙しいときや寝る直前にはショート動画を見ないほうが賢明です。見るときには時間を区切ったり、見る内容を決めたりするのもありですが、アルゴリズムに乗せられてついダラダラ見てしまうなら、本当に時間があるときだけ見るように条件を絞りましょう。

 ショート動画はクライマックスを手軽に楽しめる、タイパのいいコンテンツ。上手につきあえばよい気分転換になります。ショート動画そのものが悪いのではなく、見せ方の戦略に人間の脳がはめられてしまうことが、ショート動画の中毒性の正体。だからこそ、自分なりのルールとつきあい方を決めて、適度にたしなんでくださいね。

<参考サイト>
・「ショート動画」は脳に悪いって本当? 海外チームが約10万人のデータを分析│IT media news 
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2512/12/news029.html
・夢中になるのが当たり前...こどものショート動画視聴のどこに注意するべきか│ベネッセこども基金 
https://benesse-kodomokikin.or.jp/column/2024/10211135.html
・ショート動画で時間が溶けるのはなぜ? 自分を主役に時間を使うには│朝日新聞 
https://www.asahi.com/articles/AST742S96T74UTFL00SM.html
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