DATE/ 2026.08.17

髪はなぜ生え変わるのか?髪の毛の一生

髪の一生のサイクル「毛周期」

 髪の毛は皮膚や爪と同じケラチンというタンパク質を主成分にしており、シスチン結合という強固なつながりによって安定的な組織を持っています。これによって頭部を衝撃や紫外線から守り、さらに内部に空洞がある構造で暑さや寒さを和らげてくれています。実は「頭部の鎧」という役割を果たしている髪の毛。ファッションのパーツとしても重要な存在ですよね。

 保護機能の面からもおしゃれの面からも大切にしたい髪の毛ですが、生えて伸びて抜ける過程には「毛周期」というサイクルがあり、最終的には必ず抜けます。しかし、その周期は髪の毛一本ごとに異なるので、通常はすべて一気に抜けることはありません。健康な頭皮では約80~90%の髪の毛が、髪の毛になる細胞を生み出す毛母細胞の活動期を指す「成長期」であるといわれます。

 毛周期の段階をまとめると、次のようになります。

・成長期:期間は約2~6年。髪の毛全体の割合は約80~90%。毛乳頭という髪の生成を促進する組織が毛母細胞に栄養や酸素をたくさん送り、毛母細胞が活発に分裂して新しい髪の毛が頭皮に現れます。髪の毛は1か月で約1cm伸びるので、成長期を長く維持することで髪を長く健康に伸ばせるようになります。

・退行期:期間は約2~3週間。髪の毛全体の割合は約1~2%。髪の毛の成長を終えた毛母細胞と毛乳頭からなる毛球が小さくなり、毛乳頭は毛母細胞から離れて押し上げられていきます。毛乳頭が毛母細胞から離れるので髪の毛はほとんど伸びなくなります。

・休止期:期間は約2~4か月。髪の毛全体の割合は約10~20%。髪の毛の成長が完全に止まり、自然に抜け落ちていきます。このとき毛乳頭はバルジ領域という細胞の素の集まりと連絡し合い、新しい髪の毛の準備をしていると考えられています。

 人間の髪の毛は平均で約10万本生えているといわれます。健康な頭皮でも1日50~100本程度の抜け毛なら正常の範囲内なので、心配する必要はありません。

髪の毛の明るい未来を信じて

 しかし、抜け毛の本数が突然増えたり、抜け毛に細く短い毛が目立つようになってきたら要注意です。それは、毛周期が乱れて髪の毛の成長をうまくコントロールできていないサインかもしれません。

 男性型脱毛症(AGA)などの薄毛症状では、本来なら数年続くはずの成長期がわずか数か月まで短くなってしまうこともあります。特に、AGAではDHT(ジヒドロテストステロン)というホルモンが毛乳頭に影響し、髪の毛の成長期を強制終了してしまうことがわかっています。このため、時間をかけて太く丈夫に育つはずの髪の毛が、細くて弱い状態のまま抜け落ちてしまうのです。しかも、症状が進行すると毛球と毛穴を結ぶ髪の毛の土台である毛包そのものが小さくなっていく「ミニチュア化」が起こり、丈夫な髪が育つ環境そのものが失われてしまいます。

 このような症状を防ぐためには、頭皮環境を清潔に保ち、頭皮の血行を良くして、ストレスなく過ごすなどが有効ですが、近年は医学的な裏付けがある髪の毛の再生の研究も進んでいます。

 神戸学院大学などの研究チームによると、毛乳頭周辺の毛細血管が髪の毛の再生に特殊な機能を果たしていることがわかりました。髪の毛の再生にはすべての毛細血管が同じ関わり方をしているのではなく、毛乳頭周辺の毛細血管だけが優先的に反応しているのです。これは、血管を新しく編成する血管新生ケモカインCCL2が毛乳頭から送られ、受け取った血管だけが活発に反応して髪の毛への栄養補給路になるという仕組み。実は今まで、発毛剤になぜ効果があるのかは不明な部分が多かったのですが、この発見によって作用の理由が明らかになり、より効果的な髪の毛の再生への期待が高まっています。

 さらに、理化学研究所などの研究チームは、今まで毛乳頭と上皮性幹細胞の2種類がわかっていた髪の毛を作る細胞に、第3の細胞があることを突き止めました。それが毛包再生支持細胞です。この細胞によって、完全に毛包が失われた頭皮でも人工的に毛包を作り、髪の毛を再生できることがわかりました。この技術は2026年末から27年ごろに臨床研究も計画されています。

 新事実が次々と解き明かされている髪の毛の未来は明るいといえるでしょう。抜け毛が増えても不安のない時代はすぐそこかもしれません。しかし、一番大事な土台が自分自身の健康であることはいつの時代も変わりません。偏りのない食事、たっぷりの睡眠、適度な運動は忘れずに過ごしてくださいね。

<参考サイト>
・あさ美皮フ科亀戸駅前|薄毛は成長期・退行期・休止期で決まる?各フェーズの役割を解説
https://asami.clinic/male/men-mechanism/men-hair-cycle/hair-loss-anagen-catagen-telogen-phases/
・PR TIMES|毛の再生を促す毛細血管の新たな機能を発見
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000090.000169895.html
・日本経済新聞|髪の毛作る「第3の細胞」発見 新たな脱毛症治療に、理研や国内新興
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOSG123NZ0S6A210C2000000/
・日本毛髪科学協会|毛髪の役割
https://www.jhsa.jp/hair-skin-knowledge/hair-knowledge/hair-role/
人気の講義ランキングTOP20