DATE/ 2026.10.19

大人もハマる!体験型トリックアート

脳がだまされる錯視の世界

 だまそうとしているとわかっていても、実物を見ると魔法にかかったようにだまされてしまうのがクセになるトリックアート。壁から動物が飛び出しているように見えたり、深い穴が開いているように見えたりする作品をご存知の方も多いのではないでしょうか。

 トリックアートは錯視という現象を利用したアート作品です。「目の錯覚」といわれますが、実際に錯覚している、つまりだまされているのは目ではなく脳のほう。目は網膜から視神経を通じて見えたもののデータを脳に送る役割を果たしているだけで、見えたものをデータ処理して理解しているのは脳なのです。

 脳は日々の中でたくさんのものを見て学習し、そのデータを判断材料にしています。このため、なにかを見るたびに詳細な分析をするのではなく、モデルになるデータをベースにしてすばやく補正や補完をしています。たとえば、明るい場所と影になっている場所に同じ色があると、「影ならもっと暗いはず」と判断して、影にある色は暗めに補正します。このような作用を逆手に取って、脳に物理的な事実と一致しない判断をさせるのがトリックアートの仕組みです。

 そんなトリックアートを楽しんでみたいときは、トリックアートの企画制作を行うエス・デーが運営するトリックアート美術館を訪れるとよいでしょう。エス・デー直営のトリックアート美術館もあり、特にエス・デー本社がある栃木県那須町の「那須とりっくあーとぴあ」は、トリックアートの館・ミケランジェロ館・トリックアート迷宮?館の3館を構える充実の施設です。このほかに、お台場のデックス東京ビーチにある「東京トリックアート迷宮館」、横浜の横浜ワールドポーターズにある「横浜トリックアート迷宮館」もエス・デーの直営施設となっています。

実はもっと身近にあるトリックアート

 しかし、トリックアートを見られるスポットはもっと身近にも存在します。それはどこかというと、実は普通の道路。しかもこんななにげない場所にあるトリックアートが、人々の命を守る役目を果たしているのです。

 わかりやすい例が、積水樹脂グループ開発のソリッドシート。これは、一定の方向に走行しているドライバーにだけ、文字や矢印などの注意喚起が立体的に浮かび上がって見えるという、まさに事故防止のためのトリックアートです。高速道路では年間約200件もの逆走事故が起きていましたが、このソリッドシートを導入することでなんと約9割も逆走が減少したという驚異的な効果を発揮しています。

 いきなり立体的な注意喚起が目の前に現れたら驚いて危険な方向にハンドルを切ってしまいそうにも思えますが、そこが緻密な計算の見せ所。このトリックアートはドライバーが驚きや恐怖ではなく違和感を抱くように調整されています。具体的には、一番明るい白の部分に40%のコントラストをつけた複数の色を影のように配置しており、リアルになりすぎず「なんだかおかしい」と感じるレベルに設計されているのです。

 スピードの出しすぎを防止するトリックアートもあります。それが、日本道路システム開発のドットマーク。車線の両側に30cm幅の白線を1m間隔で配置した路面表示です。これがあると、実際の道幅はまったく狭くなっていないのに、ドライバーは急に道が狭くなったと錯覚してスピードを落とすようになります。さらに、白線が規則正しく連続して視界の端を通りすぎていくことでもスピードの出しすぎを認識しやすくなり、自然とブレーキをかけるようになる仕組みです。

 トリックアートの道路標示は、立体物の注意喚起が不要です。このためコストを抑えられて、救急車や災害救助車両の妨害にもなりません。人間の脳のだまされやすさを利用した、スマートな事故防止策といえるでしょう。道路に不思議な図形が描いてあったらこのようなトリックアートかもしれません。ぜひ、その上や近くを通りながら目をこらして、どんな効果のアートなのか探ってみてください。

<参考サイト>
・株式会社エス・デー GALLERY
https://www.trickart.co.jp/gallery-wallpaint
・積水樹脂株式会社 【TVでも紹介されました】錯視効果を応用!逆走事故を激減させた安全対策とは?
https://note.sekisuijushi.co.jp/n/ne5a8d4e97d27
・株式会社日本道路システム 視覚の「魔法」でスピードを落とす!ドットマークが守る地域の安全
https://www.jrs-line.co.jp/pages/67/detail=1/b_id=103/r_id=317/
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