社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2024.02.11

「公衆電話」がなくならない理由とは?

 いまや、日本人ひとり一台に迫る勢いの携帯電話やスマートフォンの普及。それに伴って、使う機会が少ない、維持費がかかる、といった理由で、家庭の固定電話は減少傾向にあります。そしてもうひとつ、減少どころか「どこにあるの?」と、さっぱり見かけなくなったのが公衆電話です。

 公衆電話は、どこへ?今回は、すっかり影の薄くなった公衆電話の「今」を、探ってみました。

このまま消える?全国で15万台を切った公衆電話。

 総務省が毎年発表している「情報通信白書」によれば、平成元年では80万台ほどあった公衆電話が、令和2年度末にはその5分の1にも満たない14.6万台に減り、さらに年々減少しています。公衆電話が減っている理由は、言うまでもなく携帯電話の普及。年間50回以下しか使われない公衆電話も多く、採算が取れないことも大きいそう。

 かつては、来日して勉強や仕事をする外国人が、プリペイド式の海外通話のできるカードを購入し、電話ボックスで通話する様子をよく見かけました。ところが近年では、外国人も携帯電話にシフト。都心の新宿区などの携帯電話ショップに来店するお客さんは、その半数以上が外国人。店舗の方によると、日本に住む外国人がまず最初に買いたいものが携帯電話になっている、とのこと。

 使う人が減っている公衆電話。このままでは、いずれ撤去され、なくなってしまうのでしょうか?

公衆電話は、災害時の最強インフラに

 実はこの公衆電話には、公共性をかんがみたユニバーサルサービス制度があります。近年の自然災害の頻発により、災害時に利用される災害時用公衆電話の必要性は大きく、今のところ完全に消えることはありません。

 そもそも電話線から電源を取っているアナログの固定電話は災害時に強いというメリットがあり、停電時であっても電話線さえ切れていなければ使用可能です。IP電話のようには通話制限を受けない優先電話でもあり、災害時には非常に重要な連絡ツールになるのです。

 そのほかにも、NTTでは公衆電話の設置場所情報を公開しています。もしもの時のために、一度自宅や職場近くの公衆電話がどこにあるのか、確認しておくことも大切です。

 本来の役割を終え、減少の一途かと思われた公衆電話。しかし、災害時のインフラ対策に加え、これからますます増えて行く訪日外国人へ向けた自治体のwi-fi環境整備のため、電力や回線もある電話ボックスをその設備設置に有効利用するというサービスも始まっています。どうやら公衆電話は、消えたのではなく新しいステージに向かっているようです。

<参考サイト>
・令和3年版 情報通信白書(総務省)をもとに作成
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r03/html/nd242210.html
・種類別公衆電話数の推移(総務省)をもとに作成
http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h04/html/h04b0305.html
・公衆電話設置場所情報
東日本エリア
https://publictelephone.ntt-east.co.jp/ptd/map/
西日本エリア
https://www.ntt-west.co.jp/ptd/map/
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
より深い大人の教養が身に付く 『テンミニッツTV』 をオススメします。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

古き良きヨーロッパのキリスト教社会が克明にわかる名著

古き良きヨーロッパのキリスト教社会が克明にわかる名著

渡部昇一の「わが体験的キリスト教論」(1)古き良きキリスト教社会

渡部昇一氏には、若き頃に留学したドイツでの体験を記した『ドイツ留学記(上・下)』(講談社現代新書)という名著がある。1955年(昭和30年)から3年間、ドイツに留学した渡部昇一氏が、その留学で身近に接したヨーロッパ文明...
収録日:2021/08/06
追加日:2021/10/23
渡部玄一
チェロ奏者
2

逆境に対峙する哲学カフェ…西洋哲学×東洋哲学で問う矛盾

逆境に対峙する哲学カフェ…西洋哲学×東洋哲学で問う矛盾

逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる

「逆境とは何に逆らうことなのか」「人はそもそも逆境でしか思考しないのではないか」――哲学者鼎談のテーマは「逆境に対峙する哲学」だったが、冒頭からまさに根源的な問いが続いていく。ヨーロッパ近世、ヨーロッパ現代、日本...
収録日:2025/07/24
追加日:2025/12/19
3

豊臣兄弟の謎…明らかになった秀吉政権での秀長の役割

豊臣兄弟の謎…明らかになった秀吉政権での秀長の役割

豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(1)史実としての豊臣兄弟と秀長の役割

豊臣と羽柴…二つの名前で語られる秀吉と秀長だが、その違いは何なのか。また、これまで秀長には秀吉の「補佐役」というイメージがあったが、史実ではどうなのか。実はこれまで伝えられてきた羽柴(豊臣)兄弟のエピソードにはか...
収録日:2025/10/20
追加日:2025/12/18
黒田基樹
駿河台大学法学部教授 日本史学博士
4

「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない

「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない

「アメリカの教会」でわかる米国の本質(1)アメリカはそもそも分断社会

アメリカが日本の運命を左右する国であることは、安全保障を考えても、経済を考えても、否定する人は少ないだろう。だが、そのような国であるにもかかわらず、日本人は、本当に「アメリカ」のことを理解できているだろうか。日...
収録日:2022/11/04
追加日:2023/01/06
橋爪大三郎
社会学者 東京科学大学名誉教授 大学院大学至善館教授
5

キリスト教とは?…他の一神教との違いは神様と法律の関係

キリスト教とは?…他の一神教との違いは神様と法律の関係

宗教で読み解く世界(1)キリスト教の世界

キリスト教、イスラム教、ヒンドゥー教、儒教、そして日本宗教の、それぞれの特徴を「ひと言」で分析すると? 橋爪大三郎先生が一刀両断に分析。宗教の特徴を知れば、世界の各地域のあり方や文化もよくわかるようになる。「教...
収録日:2019/01/21
追加日:2019/05/18
橋爪大三郎
社会学者 東京科学大学名誉教授 大学院大学至善館教授