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DATE/ 2016.05.30

「縦読み」の起源は1000年以上前の〇〇にあった!?

 4月に起きた熊本地震を受け、宮城県のテレビ局「東北放送」がテレビ欄に「今度は支える番」と縦読みのメッセージを入れ話題となりました。ここ数年注目を集めることが多いテレビ欄の縦読み、ルーツはインターネットかと思いきや、実はずっと昔からある言葉遊びなのです。

プロ野球中継は縦読みの宝庫

 東北放送は今年4月20日のプロ野球中継「楽天―オリックス」で、「今江、藤田ケガで離脱」「度胸でぶつかれ救世主」「は島内!?吉持!?ゲーム」「支配の梨田采配要は抑」「えの松井裕!底力をは」「るか遠くへ届けよう9」「番嶋の打球に乗せて!」とテレビ欄に告知しましたが、それぞれ一文字目をつなげると「今度は支える番」となります。

 東日本大震災で被災し、全国から支援を受けた被災地を代表して、今回は熊本を支えなければ、という思いが込められており、Yahoo!ニュースのトピックスにも掲載されました。余談ですが、この試合は楽天が嶋基宏のサヨナラ打で劇的勝利。結果的にテレビ欄の告知が当たったような内容になりました。

 北海道放送がプロ野球中継での縦読みの火付け役と言われており、「北の大地で虎退治」「おそらく試合終了までお届けできるはず」「西武Dの階段はキツい」など、遊び心満載の告知を次々を送り出しています。2014年8月6日には中国放送が「カープ応援できる平和に感謝」とメッセージを盛り込み、感動したという声がツイッターなどを中心に相次ぎました。

 プロ野球中継は放送時間が長いためメッセージを仕込みやすいという事情があるのでしょうが、縦読みは野球だけではありません。2014年6月2日には、サッカー日本代表・本田圭佑の特集をしたNHK「プロフェッショナル」が「日本ガンバレW杯」と縦読み。今年1月1日のテレビ朝日「羽鳥慎一のお騒がせ新年会」のように「新たな年が幸せで健やかな年になりますように」と新年のご挨拶を兼ねていた、なんてこともあります。

縦読みのルーツは何と1000年以上前

 この縦読み、テレビ欄でたびたび見られるようになる前から、インターネット上でも盛んに行われていました。感動メッセージや遊びのテレビ欄とは違い、どちらかと言うとある対象をバカにしたり、茶化したり、「煽り」として使われることがもっぱらでした。芸能人ブログに投稿されたコメントが、一見応援しているかのようでいて実は縦読みすると正反対の内容だった、などです。

 ではネットの煽り文化がルーツなのでしょうか?いえいえ、実は日本人はそれよりもずっとずっと前から縦読みをしてきたのです。記録に残っている限り、最古の縦読みは、平安時代の歌人・在原業平が詠んだ歌です。「唐衣(からころも)」「きつつなれにし」「つましあれば」「はるばるきぬる」「旅をしぞ思ふ」。一文字目をつなげると「かきつはた(カキツバタ)」となり、業平がカキツバタの花を見た時に読んだ歌とされています。この歌は「伊勢物語」「古今和歌集」に収録されています。

 ここ最近生まれたブームのようでいて、実は1000年以上前から伝わる日本文化だと思うと、とてもロマンチックだと思いませんか?今度、縦読みを見かけたときは、そんなことを思い出してみてもいいかもしれませんね。
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