社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
「オレオレ詐欺」の被害はなぜ絶えないのか?
振り込め詐欺が話題になってからすでに10年以上たちますが、その被害がおさまる様子はいまだにありません。警察庁による平成28年の統計では、振り込め詐欺をはじめとする特殊詐欺の被害総額は前年よりも下がったものの、400億円を超えています。認知件数にいたっては前年より増加し、14,000件を超えました。
振り込め詐欺のなかでも最も件数が多いのは、親族になりすまして金銭を振り込ませる通称「オレオレ詐欺」。いまでは手口も名称もよく知られており、被害防止に向けた啓発活動や報道もさかんに行われているというのに、引っかかる人が多いのはなぜなのでしょうか。
なぜオレオレなのかというと、信じる人にあたるまで、とにかくめったやたらに電話をかけるからです。相手に息子がいるか分からないし、いても騙されるかどうかやってみるまで分からない。そうなると、いちいち息子の名前など確認できないので、とりあえず「オレオレ」と誰にでも当てはまりそうな一人称を使うわけです。
しかし、今では実際に引っかかりそうな人を集めたリストが売買され、そのリストには被害者候補の実際の親族関係まで記されていることもあります。オレオレではさすがに引っかからなくても、実際に息子や娘の名前で電話がかかってくれば信じてしまうというのは人情というものでしょう。
●「演劇団」として高度に組織化
また、現在オレオレ詐欺集団は高度に組織化しています。電話をかける者、金を受け取る者、そして特にスキルは要らないが捕まりやすいため使い捨てにされる「出し子」といわれるATMからの引き下ろし役などの分業制があることはよく知られています。
チームを束ねるリーダー役や、足のつかない「飛ばし」といわれる携帯を売る業者などもいます。さらに電話役を細かく役割分担して、被害者をだますことも行われています。
例えば、「息子が痴漢で捕まってしまったけど、示談金をすぐに払えばおとがめなしになる」というような設定の場合、息子役、警官役、弁護士役などが代わる代わる電話で話し、現実感を演出し、被害者(電話先の相手)を心理的に追い込んでいくわけです。こう来られると疑う間もなく、あるいは疑いながらも焦って、お金を払ってしまう人がいるのも想像に難くありません。
お金を持って遠くから東京まで駆けつけると、同僚や部下などと自称する人から電話がかかって来て、指定の場所で落ち合ってお金を渡す、というものです。
この手口のポイントは、慣れない土地に呼び出されて大きくなった戸惑いや不安に付け込み、サッとお金をとってしまうことです。
ひとくちにオレオレ詐欺といっても、人間の心理を操るため、日々進化しています。ますます高度化する手口に、年老いた親族が引っかからないと自信を持って言える人は多くないのではないでしょうか。
振り込め詐欺のなかでも最も件数が多いのは、親族になりすまして金銭を振り込ませる通称「オレオレ詐欺」。いまでは手口も名称もよく知られており、被害防止に向けた啓発活動や報道もさかんに行われているというのに、引っかかる人が多いのはなぜなのでしょうか。
オレオレ詐欺はもうオレオレではない
オレオレ詐欺というのは、例えば何かトラブルに巻き込まれた、と息子を思わせる人物から電話がかかってきて、問題解決のために金銭を振り込ませるという手口の詐欺です。なぜオレオレなのかというと、信じる人にあたるまで、とにかくめったやたらに電話をかけるからです。相手に息子がいるか分からないし、いても騙されるかどうかやってみるまで分からない。そうなると、いちいち息子の名前など確認できないので、とりあえず「オレオレ」と誰にでも当てはまりそうな一人称を使うわけです。
しかし、今では実際に引っかかりそうな人を集めたリストが売買され、そのリストには被害者候補の実際の親族関係まで記されていることもあります。オレオレではさすがに引っかからなくても、実際に息子や娘の名前で電話がかかってくれば信じてしまうというのは人情というものでしょう。
●「演劇団」として高度に組織化
また、現在オレオレ詐欺集団は高度に組織化しています。電話をかける者、金を受け取る者、そして特にスキルは要らないが捕まりやすいため使い捨てにされる「出し子」といわれるATMからの引き下ろし役などの分業制があることはよく知られています。
チームを束ねるリーダー役や、足のつかない「飛ばし」といわれる携帯を売る業者などもいます。さらに電話役を細かく役割分担して、被害者をだますことも行われています。
例えば、「息子が痴漢で捕まってしまったけど、示談金をすぐに払えばおとがめなしになる」というような設定の場合、息子役、警官役、弁護士役などが代わる代わる電話で話し、現実感を演出し、被害者(電話先の相手)を心理的に追い込んでいくわけです。こう来られると疑う間もなく、あるいは疑いながらも焦って、お金を払ってしまう人がいるのも想像に難くありません。
最近のトレンドは「上京型」
最近は「上京型」という手口が増えているといわれます。例えば、「会社の大切なお金を失くしてしまった。このままだとクビになってしまうので、すぐにお金を東京に持って来てほしい」というのです。お金を持って遠くから東京まで駆けつけると、同僚や部下などと自称する人から電話がかかって来て、指定の場所で落ち合ってお金を渡す、というものです。
この手口のポイントは、慣れない土地に呼び出されて大きくなった戸惑いや不安に付け込み、サッとお金をとってしまうことです。
ひとくちにオレオレ詐欺といっても、人間の心理を操るため、日々進化しています。ますます高度化する手口に、年老いた親族が引っかからないと自信を持って言える人は多くないのではないでしょうか。
<参考サイト>
・警察庁:振り込め詐欺を始めとする特殊詐欺の被害状況
https://www.npa.go.jp/safetylife/seianki31/higaijoukyou.html
・警察庁:振り込め詐欺を始めとする特殊詐欺の被害状況
https://www.npa.go.jp/safetylife/seianki31/higaijoukyou.html
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
雑学から一段上の「大人の教養」はいかがですか?
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。
『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
「見せかけの相関」か否か…コロナ禍の補助金と病院の関係
会計検査から見えてくる日本政治の実態(2)病床確保と補助金の現実
コロナ禍において一つの大きな課題となっていたのが、感染者のための病床確保だ。そのための補助金がコロナ患者の受け入れ病院に支給されていたが、はたしてその額や運用は適正だったのか。事後的な分析で明らかになるその実態...
収録日:2025/04/14
追加日:2025/07/18
なぜ民主主義が「最善」か…法の支配とキリスト教的背景
民主主義の本質(1)近代民主主義とキリスト教
ロシアや中華人民共和国など、自由と民主主義を否定する権威主義国の脅威の増大。一方、日本、アメリカ、西欧など自由主義諸国における政治の劣化とポピュリズム……。いま、自由と民主主義は大きな試練の時を迎えている。このよ...
収録日:2024/02/05
追加日:2024/03/26
胆のう結石、胆のうポリープ…胆のうの仕組みと治療の実際
胆のうの病気~続・がんと治療の基礎知識(1)胆のうの役割と胆石治療
消化にとって重要な臓器「胆のう」。この胆のうにはどのような仕組みがあり、どのような病気になる可能性があるのだろうか。その機能、役割についてあまり知る機会のない胆のう。「サイレントストーン」とも呼ばれる、見つけづ...
収録日:2024/07/19
追加日:2025/07/14
3300万票も獲得した民主党政権がなぜ失敗?…その理由
政治学講座~選挙をどう見るべきか(5)政権交代と民主党
民主党は、2009年の衆議院選挙で過半数の議席を獲得し、政権交代に成功した。しかし、その後の政権運営に失敗してしまった。その理由についてはいまだ十分な反省が行われていないという。ではなぜ民主党は失敗してしまったのか...
収録日:2019/08/23
追加日:2020/02/12
印象派を世に広めたモネ《印象、日の出》、当時の評価額は
作風と評論からみた印象派の画期性と発展(2)モネ《印象、日の出》の価値
第1回印象派展で話題となっていたセザンヌ。そのセザンヌと双璧をなすインパクトを与えた作品があった。それがモネの《印象、日の出》である。印象派の発展において重要な役割を果たした本作品をめぐる歴史的議論や当時の市況を...
収録日:2023/12/28
追加日:2025/07/17