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「経営センスがある」とはどういうことか?

優れた経営者の条件(4)ジェネラリスト

楠木建
一橋大学大学院 経営管理研究科 国際企業戦略専攻 特任教授
概要・テキスト
センスがある経営とはどのようなものだろうか。その条件として、一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授の楠木建氏はジェネラリストであること、そして「何をしないか」を決断する能力を挙げる。全体を相手にして儲けを追求し、違いを生み出す戦略をつくり出せるかどうかが、センスの決め手である。(2017年11月16日開催日本ビジネス協会JBCインタラクティブセミナー講演「優れた経営者の条件:戦略ストーリーを創るセンス」より、全8話中第4話)
時間:09:33
収録日:2017/11/16
追加日:2018/01/27
≪全文≫

●経営は事前に設定された担当の枠を必ずはみ出していく


 改めて、「センスがあるとはどういうことなのか」を考えてみたいと思います。重要なのは、社長や代表取締役といった肩書ではありません。経営者は「商売を丸ごと動かせる人」を言います。たとえ自分が会社の経営者であったとしても、実際に商売を回している人が社内に別にいるかもしれませんね。そういう人たちを念頭に置いていただきたいと思います。

 第1に、センスの内容からして、センスは綜合に関わっています。分析がスキルだとすると、センスは綜合です。

 例えば、私は飛行機は必ずエコノミーに乗ります。ビジネスクラスは少し高過ぎないでしょうか。先方が取ってくれるときは大喜びでビジネスに乗りますが、自腹は必ずエコノミーです。

 エコノミークラスだと、ご飯はいつもカレーと照り焼きチキンの2種類ぐらいしかありません。時間になると乗務員の方が、どちらにするか聞いてくれます。私はカレーが食べたかったのですが、5列前でカレーがなくなってしまいました。そうすると、乗務員の方はプロですからちゃんと謝ってくれます。「ちょうどカレーがなくなりまして、照り焼きしかございませんが、よろしゅうございますか」と。3カ月後にも同じフライトに乗りましたら、今度は2列前でカレーがなくなってしまいました。再び乗務員の方が来て、プロとしてものすごく丁寧に謝ってくれます。

 しかしこの乗務員の方は、いったい何回同じように謝ってきたのでしょうか。何百回も繰り返していれば、謝るスキルはどんどん良くなるでしょう。しかし、もしこの人にもう少し経営のセンスがあれば、そもそも発注ミックスが間違っていたことに気付くはずです。カレー7、照り焼き3にシフトして発注するかもしれません。あるいはもっと経営センスがあれば、ビジネスクラスではないのだから、乗客もご飯に期待していないだろうということで、カレーしか出さないようにするかもしれません。そうすれば注文を取る必要もないし、オペレーションは軽くなります。何よりも欠品がないのですから、むしろ満足度が上がるのではないかと考えるのではないでしょうか。

 つまり、経営という仕事は、事前に設定された担当の枠を必ずはみ出していくものだということです。全体を全部自分が動かせるという意識を持って仕事ができる人でなければ、経営はできないでしょう。

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