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押しが強いアメリカ経営文化との「闘い方」

サントリー流「海外M&A」成功術(3)欧米流経営との激突

概要・テキスト
サントリーによるビーム社の買収にあたり、ビーム社の経営陣は、「ビーム社の経営は自分たちに任されている。全部、自分たちがやる」と強力に主張した。これまでの日本企業なら、そのまま押し切られてしまったかもしれない。アメリカのエグゼクティブは、「大型案件の場合、日本の企業は買ったらどうせ手放すから、そこでそれを転売するのが基本だ。日本の会社は大変おいしい獲物だ」とさえ考えているという。だが、新浪剛史氏は主張すべきを主張し、サントリーペースでの統合を成功させた。その裏でどのようなことが行われていたのか。(全7話中第3話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
時間:12:00
収録日:2019/03/25
追加日:2019/08/08
≪全文≫

●ガバナンスの確立に向けて激しくやり合う


新浪 私がサントリーの社長になったのは2014年10月ですが、翌年1月から3カ月間かけて、まずこの会社が誰のものなのかをマットCEOに問いました。「私たちサントリーのものですよね」と尋ねると、彼は「そうだ」と答えました。「でも、監査委員会などがなくなりました。そうするとガバナンスがありません。あなたに任されたと、あなたから伺いましたが、では、この会社はあなたのものですか?」と聞くと、「いやいや、株主は偉大である」と言います。「だけど、株主がものを言うためには、監査委員会などの組織が必要ですよね」と尋ねると、「いやいや、これは約束したものであって、私が全部やります」と言うのです。

 それに対して、「『それは困る。「やはりこれだけのお金を支払ってガバナンス統治ができないということは、まずい』と言ったら、あなたはどうするのですか?」と問うと、彼は「うーん」と悩んでしまったので、「いや、簡単です。あなたが買えばよいのです。私たちもある程度のプレミアムを付けて売りたい」と伝えました。彼が非常に強いリーダーシップを持って、彼自身がやろうと思えばやれるような会社になっていたので、もうここは1つの大きな山だと思い、激しくやり合ったのです。

 その後、何度も行って、「将来、このようにしていこう」などと、いろいろな話をしました。最後、彼は折れて、4月になる前に「分かりました。やりましょう」という回答をもらいました。そして、4月以降、各種委員会を立ち上げることにしたのです。

 この件に関しては、私のハーバードの時の友人にも相談し、皆、いろいろと教えてくれました。ある友人からは、「タック、あなたはアメリカで経営を勉強したのだから、アメリカ人になりなさい」「あなたの言ったようなことは、アメリカでは当たり前だ。日本の企業はなめられている」と言われました。その人は買収にも携わる人ですが、「申し訳ないが、日本の経営者はろくでもない人が多く、今は尊敬できる人がいない」と言うのです。つまり、自分たちが巻き上げるのです。「申し訳ないけれど、買ったらどうせ手放すから、そこでそれを転売する。これが基本だ」「日本の会社は大変おいしい獲物だ」とも言われました。

神藏 MCAレコードやコロンビア映画の時代から、そうなってしまっているわけですね。

新浪 そういう意味で...
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