●未来の議論をするのに必要なのは女性、若者、外国人
―― 格差の小さな幸せになれる社会を作るというのは、全く違うゴールの絵ですね。
小宮山 だから、それを僕は「プラチナ社会」と提案している。一つは、エコロジー、つまり自然共生社会。それから、参加型社会で、資源やエネルギー、食べ物といったものの心配のない社会。また、雇用があること。雇用の意味も変わり、社会との接点という意味でも雇用が大きくなる。それから自由と多様性ですよね。日本では多様性あたりが一番弱いですよね。
―― 多様性ってものすごく苦手ですよね。
小宮山 苦手ですね。まず女性ですね。SDGs(Sustainable Development Goals、持続可能な開発目標)の目標のうち、ジェンダー部門だけダントツで遅れています。2018年の世界経済フォーラム(WEF)での男女平等ランキングでも、149ヵ国中110位でした。
それから、やっぱり外国人だよね。外国人の視点を入れないといけない。今、さまざまな場所で10年計画を作っていますけど、自治体の10年計画というのは、60歳位の高齢者が中心になって作っているから、それは止めたほうがいいですよ。未来の議論をするのに、女性や若者が入らないようではいけない。
―― 女性、若者、外国人ですね。
小宮山 そうですね。女性と若者、外国人。
―― そういう感じの組み立ての会議体だと、だいぶ違いますよね。
小宮山 全然違いますよ。
―― それで十年プランを立てたら、全く違うものになりますよね。
小宮山 どこかでやりたいですね。そういうのを。
―― 自治体でどこか一個、実験場としてできると、面白いですね。
小宮山 できるところは、必要ですね。
●種子島が今、面白い
―― 人口的にあまり小さい規模だと厳しいので、30~60万人くらいあるところが一番いいですよね。
小宮山 今、それに近いことでうまくいったのは、鹿児島県鹿屋市のやねだんとか、島根県隠岐郡の海士町とか、あるわけです。種子島が今、面白いですよ。
―― 種子島って、4万人とか5万人とかですか。
小宮山 4万人弱で、1市2町で構成されています。種子島には、東大「プラチナ社会」構想の総括寄付講座の菊池康紀先生が、最初に調査に入り、その後、通算19大学から研究者が入っている。
そこでは、各先生たちが得意な分野の研究を行っています。熱中症アラームとかです。他には、てんぷら油からディーゼルオイルを作るという研究があります。これはすでに実践できていたのですが、現在の方法では2次公害が多く、やらない方がマシ、という状況でした。ところが、東北大学の若い先生によって構成されている研究グループが、非常に良いプロセスでバイオディーゼルを生産するシステムを開発しました。
さらに、大学の学生や教員が、高校に行って授業を行っています。学生はインターンシップとしての参加です。種子島の最高学府である高等学校で、さまざまなことが行われているのですが、特に興味深いのは「未来市長」というワークショップです。20~30年後の未来の視点から、高校生が政策提言をするものです。
この「未来市長」のワークショップでは、最終的に公開で成果発表会を行います。そうすると、島の人たちは最高学府である高等学校の発表を見にやってきます。これが、mutual growth(相互成長)であり、by active lifelong learningです。高校生にとっては、チューターである大学生は皆お兄ちゃん、お姉ちゃんです。ですから大学生は、高校生にバカにされたくないので、真剣に勉強する。
大学生が一生懸命に考え、若い研究者が入って実践していることなので、こうした試みは次第に影響力を持ち始めます。これが農協や医師会が動き出す原動力になっていくのです。そういう意味で、理想的なモデルが少しずつできてきています。
―― 面白いですね。種子島は、先生に言われて、去年行ってきましたけど、宇宙の基地など。
小宮山 JAXAが目立ってしまう。
―― 不思議な感じですよね
小宮山 それまで1市2町で、市長さんと町長さんが3人おられるわけですよね。パーティなどで会っても顔を見合わせたことがなかった、というのです。それが一昨年、1市2町共同で、プラチナ大賞に応募してきたわけです。
―― それはすごいですね。
小宮山 そこまで、大人たちの世界が変わるわけです。
―― 自分たちのエリア別に対立しているところが。
小宮山 そうです。それが、よそ者と若者が入った結果、変わった。
―― 面白いですね。やり方次第ではできるんですよね。
小宮山 そうだと思います。あと10年やると、良くなっているかもしれませんね、日本も。今、北岩手とか、山形の南の方の置賜(おきたま)とか、北海道の上士幌(かみしほろ)町とか、い...