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周辺国全てと領土問題を抱える日本が身を守っていくために

アンチ・グローバリズムの行方を読む(4)米中関係と日本

情報・テキスト
米中関係を考える上で、経済摩擦は主要トピックとなっている。アメリカは明確に反中的態度を表明したが、その背後にはアメリカから中国への先端技術流出がある。こうした対立に際し、日本はどのようなスタンスを取っていくべきなのか。(全6話中第4話)
※インタビュアー:川上達史(10MTVオピニオン編集長)
時間:13:11
収録日:2019/11/07
追加日:2019/12/21
カテゴリー:
≪全文≫

●米中対立の行方は?


―― まさに米中対立についてなのですが、アメリカはこのままもう、中国に対して厳しいまま突っ走るのでしょうか。この点は、どう分析していらっしゃいますか。

岡本 2018年10月に、マイク・ペンス副大統領は反中演説、つまり激烈な中国批判演説をしました。さらに2019年10月24日には、もう1回やりましたよね。そこでは論調が一段トーンアップしていますし、はっきりと「中国はアメリカにとっての経済的・戦略的ライバルである」と言い切っています。もちろん、「中国が態度を改めてくれれば、仲良くしてあげよう」というメッセージが最後についていましたが、しかし、あそこまで完全に袂を分かち、「中国はわれわれと異なる価値を有した国だ」と宣言したのは、大きな事実です。

 さらにいえば、今の中国に対するアメリカの警戒心・恐怖心は、ペンス副大統領だけのものではなく、共和党を超えて、アメリカというインスティテューション(institution)、アメリカという国家全体の認識になってきてしまったと思います。

 経済の方については、アメリカも相当な返り血を浴びて、損しています。そのため、この点ではどこかで手を握ると思いますよ。特にトランプ大統領は、全てを選挙の観点から考えていますからね。今のように中国と喧嘩したままでは、選挙の票にはあまりつながりません。彼は、「どうだ、こういうことができたぞ」「俺のおかげでこんなに良い協定や約束ができたんだ。中国はこんなに譲ったんだぞ」と、実際にはたいした譲歩でなくても、中国との交渉を政治的な材料として、選挙に有利になるよう役立てようとするでしょう。

 だから僕は、米中の経済摩擦自体の行方は深刻ではありますが、果ては決着するだろうと思っています。ただ残された、安全保障上の政治的・戦略的・文化的・人権的条件や、香港・台湾についての立場については、アメリカと中国が今までのように平和で安定的な関係を築くのは難しいのではないかと思っています。


●アメリカにとっての先端技術産業は死活問題である


伊藤 今のテーマもその通りだと思うのですが、気になるのは、経済のなかでもトランプ大統領が始めたいわゆる貿易戦争です。中国が輸出でけしからんことをしているとか、アメリカが損しているとか、これは何らかの形で次第に収まるかもしれません。ただ、これによって引き起こされてしまった経済的な問題も、他にたくさんあります。例えば、先端技術産業の競争をどうするのかとか、知的財産の問題をどうするのか、といった問題です。また、そもそも国家が特定の産業・企業を支援しながらグローバル競争を戦っていくということをアメリカが容認するかという問題もあります。おそらく今度の選挙までは、トランプ大統領が仕掛けた貿易戦争のなかでうまくまとめるのでしょう。ですが、その先を考えると、どういう時間軸になるか分からず、悩ましい。

岡本 おっしゃる通りですね。ですから今、世界がこれだけ大揺れして、構造的に変わりつつあるのは、繰り返しになりますが、グローバリゼーションにシンクロナイズする形で、世界に独裁者たちが増えてきたことも関係しています。そして、テクノロジーが新しい発展段階に入っており、そこで中国がトップに立ってしまっているのです。

伊藤 独裁者には非常に都合の良い技術ですよね。

岡本 そうです。おっしゃる通りアメリカは、貿易のところは手を打つとしても、基本的な技術覇権を争うところでは、中国と妥協はしないでしょうね。特に中国は、そうした先端技術を、非常に汚いやり方でアメリカから持っていったと言われています。上海の人民解放軍のハッキング部隊がアメリカから技術を違法に吸い上げたとか、アメリカ企業が中国に進出する時に、必ず技術移転を義務付けたとか、国の息のかかっている者たちがアメリカの企業に来て技術を盗んでいった、など。

 アメリカは2018年、こうした戦略に対して大きな規制をかけました。特に5GとAI、量子コンピューティング(あるいは量子科学)、この3つが彼らの大きな関心項目です。

 このままではアメリカとしては中国に負けてしまうかもしれないし、実際に中国に負けてしまったら、アメリカは半永久的に中国の風下に立たなければいけない、そういう恐怖心がその背後にはあります。


●中国への技術流出を止められるかが鍵となる


伊藤 今回が最後のチャンスじゃないかというアメリカ人もいますね。

岡本 もう少ししたら、中国は完全に技術有用を確立してしまうでしょう。例えば今、中国の理工学部の卒業生は、アメリカよりもはるかに数が多いのです。論文数を見てもアメリカよりずっと、中国の方が多い。日本なんてはるか下の方になっています。中国は14億人も人口がいるので人材が多く、打倒アメリカを目指し、ものすごい...
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