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リベラルアーツの力で新型コロナの曖昧な不安に立ち向かう

脱コロナを「知の構造化」で考える(1)全体像を把握せよ

小宮山宏
東京大学第28代総長/株式会社三菱総合研究所 理事長/テンミニッツTV座長
情報・テキスト
現代のリベラルアーツは、今ここにある問題に取り組む際にも有効なものでなければならない。テンミニッツTVによる新型コロナ問題への取り組みは、こうした問題意識によって動かされている。これにより、状況の全体像を把握することにもつながっていく。(全8話中第1話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:08:04
収録日:2020/04/22
追加日:2020/04/29
キーワード:
≪全文≫

●リベラルアーツは現下の問題に役立たなければならない


―― 皆さまこんにちは。本日はテンミニッツTV座長である小宮山宏先生に、新型コロナウイルスの問題を「知の構造化」から考えるということでお話を伺います。先生、どうぞよろしくお願いいたします。

小宮山 はい。

―― ちょうどテンミニッツTVでも、新型コロナの問題について、さまざまな講義を収録させていただいております。これらはすべて、小宮山先生と副座長の曽根泰教先生をはじめとした方々にお知恵をいただいて、「どのような情報発信をしていくべきか」を考え、やってきたものです。どのような形で情報発信をしていくべきかということについての小宮山先生の想いは、どのようなものなのでしょうか。

小宮山 われわれは『現代のリベラルアーツとは何か』という本にも書いたように、現代のリベラルアーツを、「よりよく生きるための『知の力』」と定義しました。
 一般的にリベラルアーツや教養とは、すぐには役立たないものだと考えられています。しかし、私はそうではなく、現下の問題を考えていくときに、「リベラルアーツ=よりよく生きるための『知の力』」が必要とされると思っています。曽根先生とも一生懸命相談したのですが、誰もが今一番興味を持っているのは新型コロナウイルス(コロナ)でしょう。社会的に一番重要な問題です。これに役立たない現代のリベラルアーツなんてあるのでしょうか。そうして議論していくうちに、どこまでわれわれができるのかということを、この問題で試してみようじゃないかということになりました。そこで、このコロナ問題を真正面から取り上げることになりました。


●テンミニッツTVでは新型コロナ問題について多角的に議論を展開


小宮山 これが、これまでテンミニッツTVで取り上げた内容についての資料です。長谷川真理子先生からは基礎的なウイルスのお話をしていただき、お医者さんの立場からは、これまでテンミニッツTVでずっと講義をしていただいてきた堀江重郎先生にも、今何ができるのかについて話していただきました。橋本英樹先生は、日本の対策でも先頭に立って動いていただいているなかの1人で、われわれは非常に信頼できる方だと思って、講義をお願いしました。その他にも歴史や経済の側面から、柳川範之先生や片山杜秀先生にお話をいただいています。曽根先生ご自身も、小原雅博先生と中国の問題を話していただきました。これらは非常に重要な、コロナに関する各論です。

 ここまで良くやってきたと思います。視聴率も非常に高く、トップ10のうち7つぐらいがコロナに関する講義で占められています(4月22日時点)。いかに皆さんの関心が高いかが分かります。しかし各論だけでは、どうしても「だから何なのだ」となってしまいます。今、多くの人が感じているのは、曖昧な不安です。コロナはどれくらい本当に恐いのか、どうしたらここから抜け出せるのか、というような曖昧な不安です。


●問題の全体像を把握する必要がある


小宮山 現時点で、コロナの本質が全部分かっているわけではありません。しかし、構造についての相当な部分については、長谷川先生の講義や橋本先生の講義からも分かるように、理解されています。ところが、人間や社会全体にどのような影響を及ぼすのかという、全体が分かっているわけではありません。

こうした曖昧な不安に対して、「徹底的な隔離」しかないのかについては、実はまだ分かっていません。確かに隔離を本当に実現すれば有効です。しかし「社会」とは、人と人とが交流することです。これが社会の本質です。ですから、隔離をするということは、社会をやめてしまうということを意味します。そうすると当然、経済もやめることになります。そのため、どこかでここから抜け出す必要があります。そこに対してどんな希望があるのか、これがどこまで分かっているのかを考えるためには、やはり全体像が重要です。そこでこれについて、今日はお話をさせていただきたいと思っています。


●現時点では「怖い情報」ばかりで、人々はますます恐くなっている


小宮山 現時点でほとんどの人は、このウイルスが肺炎を引き起こすということを知っています。感染者の大部分が軽症であるということも知っています。8割は軽症で、10~15パーセント前後が重い症状になり、2パーセント程度の人が亡くなるとされています。このことについては、かなり多くの人が把握しています。

 しかし、これはWHOから出ている中国(武漢)からのデータです。後で言うように、このウイルスによって死ぬ確率は、この2%よりずっと低い可能性が高いのです。新しいデータを追っていくと、そうした事実が出てくるのです。

 一方で、マスコミから出てくる情報は、イタリアの病院...
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