●国家をどのようにつくるかを論じる『社会契約論』
さて、モンテスキューの『法の精神』のお話を終えて、ルソー『社会契約論』の紹介に移ろうと思います。
この作品は、非常に明解な作品です。簡単にまとめると、ルソーが直面する既存の国家は、非常に抑圧的で不平等で、さまざまな問題を内包していました。この問題を解決するためには、新しく契約を結び直し、新しい国家をつくりあげる必要があります。そのために、どのような契約を結び、どのような国家をつくるべきかを示した作品が、『社会契約論』という作品なのです。
もう少し説明すると、人間は生まれながらに持っている自然的自由を放棄し、契約によって国家を設立するという論理です。自由を放棄してしまうのかと疑念を抱くかもしれませんが、国家を設立した後には、今度は社会的自由が戻ってくるのです。その具体的なからくりに関して、これからお話しいたします。
●二重の課題と一般意志
さて、契約によって新しく国家をつくりなおす際に、二重の課題がある、とルソーは冒頭で宣言します。その第一の課題は、各メンバーの身体や財産の共同防衛が、新しくつくられた国家によって実現されなければならない。確実に構成員の身体や財産を保障することが、国家の重要な役割だと指摘します。こちらは分かりやすいかと思います。
それとは別に、もう一つ重要な課題があるとルソーは主張します。それは、各人がすべての人と結合しながら、自分にしか服従せず、以前と同じように自由なままでいるという要請です。自然的自由は放棄しても、それと同様に自由な状態を保ち、さらに同時にすべての人と密接に結合しあうという、謎めいた課題を設定します。
その上で結ばれるのが社会契約ですが、以下のように主張します。
「各人は身体とそのすべての力を共同のものとして、一般意志の最高指導の下にゆだねる。」(『社会契約論』1編6章)
少し分かりづらいかもしれませんが、それほど難しいことをいっているわけではありません。ここでいう一般意志は、とりあえずシンプルに法律のこととしてご理解ください。
ルソーの根本的な主張は、すべての市民が政治に参加し、自らの意志で法律を制定することが、新しい国家の鍵であるというものです。一言...