政治思想史の古典『法の精神』と『社会契約論』を学ぶ
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
モンテスキューがイギリスの党派争いの中に見た政治的自由
政治思想史の古典『法の精神』と『社会契約論』を学ぶ(3)不協和の調和
川出良枝(東京大学名誉教授/放送大学教養学部教授)
モンテスキューは、立法、執行、司法という三権の機能的分立だけではなく、諸集団の間の実体的三権分立にも着目していた。イギリスの党派争いを観察する中で、諸集団が激しく対立し合いながらバランスを取ることで政治的自由が保護されている様子を称賛している。モンテスキューは集団間の不協和の中でも政治的統合を見いだすという国家のあり方に政治的自由を見たのである。(全11話中第3話)
時間:8分41秒
収録日:2020年8月17日
追加日:2020年10月3日
≪全文≫

●諸集団の利害調整という「実体的三権分立」の考え方


 ここまでお話ししてきた、国家の諸機関が機能的に分業を行い相互に監視し合うことで、三権が完全に独立するという理論を、整理のために機能的三権分立の考え方と呼びます。ここでは、それとは異なる視点を導入したいと思います。実際に『法の精神』では、この機能的三権分立とは異なる、もう一つの権力分立の考え方を打ち立てています。それは、「実体的権力分立」と呼ばれるものです。

 これは、立法、執行、司法の三権のそれぞれが、王権、貴族、平民といった実体的身分集団の意志を代表し、それぞれの権能の行使を通して、諸集団相互の利害の調整を行うという考え方です。これが実体的三権分立ですが、実は機能的三権分立とは少しずれているのです。その点に関して、少しここで説明します。

 ここで重要なのは、議会が二院制であることです。イギリスの議会は貴族院と庶民院の二院制を取っており、貴族は貴族院を通して、庶民は庶民院を通じて、自分たちの利害を表明するというシステムでした。対して、王様は執行権を握っていました。司法権は少し複雑になるので、ここでは割愛します。


●イギリスの党派争いの中に政治的自由を見たモンテスキュー


 このように、この社会の制度の仕組みとして三権分立が保障されているだけではなく、その背後にある社会そのものが複数の諸集団に分かれていること、そしてその諸集団が利害を表明して、紛争が激化するかもしれませんが、妥協や競争、あるいは平和的問題解決にいたるという側面を、モンテスキューは重視しています。

 今、指摘したのは、貴族や平民といった伝統的な身分に基づく集団ですが、それだけではありません。イギリスに一年半滞在したモンテスキューは、新しいタイプの社会集団の成立にも着目します。つまり、身分間の分立以外にも、党派あるいは政党間の分裂抗争が、イギリスで勃興しているという認識です。

 政党に関していえば、今日の保守党の源流であるトーリとホウィッグの間の対立がありますが、実は18世紀の前半には、この対立図式を横断するような新しい図式が形成されました。それは、政権を担っているコート(宮廷派)と、ホウィッグであれトーリであれ、そこからはじき出されたカントリ(地方派)という党派の分裂です。ここではその中身には深入りしませんが、モンテスキューはそ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
危機のデモクラシー…公共哲学から考える(1)ポピュリズムの台頭と社会の分断化
デモクラシーは大丈夫か…ポピュリズムの「反多元性」問題
齋藤純一
クライン『ショック・ドクトリン』の真実(1)ショック・ドクトリンとは何か
100分de名著!?『ショック・ドクトリン』驚愕の印象操作
柿埜真吾
マルクス入門と資本主義の未来(1)マルクスとはどんな人物なのか
マルクスを理解するための4つの重要ポイント
橋爪大三郎
プーチンのロシア―その思想と戦略―(1)プーチン政治の特徴
ロシア皇帝のように悪者を叱る人…プーチンの思想と歴史観
山添博史
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
ポスト国連と憲法9条・安保(1)国連の構造的問題
核保有する国連常任理事国は、むしろ安心して戦争できる
橋爪大三郎

人気の講義ランキングTOP10
資本主義の再定義…哲学で考える(1)アダム・スミスの「市場と感情」
資本主義を哲学する…まずアダム・スミスの見えざる手と道徳感情論
中島隆博
日本人が知らない自由主義の歴史~前編(1)そもそも「自由主義」とは何か
消極的自由と積極的自由?…なぜ自由主義がわかりづらいか
柿埜真吾
ヒトはなぜ罪を犯すのか(1)「善と悪の生物学」として
ヒトが罪を犯す理由…脳の働きから考える「善と悪」
長谷川眞理子
死と宗教~教養としての「死の講義」(5)仏教の死:日本編
極楽往生、坐禅、法華経…日本人はいかに死を乗り越えるか
橋爪大三郎
教養としての「ユダヤ人の歴史とユダヤ教」(1)ユダヤ人とは誰のことか
ユダヤ人とは?なぜ差別?お金持ち?…『ユダヤ人の歴史』に学ぶ
鶴見太郎
組織心理学とは何か~『武器としての組織心理学』と概論
なぜ組織に「心理学」が必要か?多様化と個の時代の処方箋
山浦一保
「ホメロス叙事詩」を読むために(4)『イリアス』の世界ーその2
『イリアス』の主人公アキレウスの怒りは何を意味するのか
納富信留
中国史概説~『皇帝たちの中国』を読む(1)なぜ「中国史はつまらない」のか?
驚きの中国史~「中国史はつまらない」という通説の裏の波乱の真実
宮脇淳子
日本人が知らない自由主義の歴史~後編(1)ニューリベラリズムへの異議
ハーバート・スペンサーとダイシー…20世紀の危機の予言者
柿埜真吾
日本人とメンタルヘルス…心のあり方(3)稲作社会と頑張る日本人
ダメなのは「頑張りが足らない」から…うつを招く稲作的発想
與那覇潤