政治思想史の古典『法の精神』と『社会契約論』を学ぶ
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
ルソーの「一般意志」とは…『社会契約論』で説いたこと
政治思想史の古典『法の精神』と『社会契約論』を学ぶ(6)「一般意志」と直接民主政
川出良枝(東京大学名誉教授/放送大学教養学部教授)
「一般意志」とは何かを考えるために、ルソーは個々人の利益を追求するための意志である「特殊意志」と、その単なる総和である「全体意志」を持ち出す。この一般意志と全体意志の間には埋めがたい差異がある。一般意志を追求するためには、古代ローマの「民会」で見られたような、直接民主主義を採用する必要がある。ルソーは古代文明の在り方に憧れながら、近代人の生きるべき道を示そうとしたのである。(全11話中第6話)
時間:12分21秒
収録日:2020年8月17日
追加日:2020年10月24日
≪全文≫

●「一般意志」「特殊意志」「全体意志」という三つの概念を持ち出したルソー


 さて、ここまでの人民主権の確立という主張で終われば非常にシンプルで、良くも悪くもこの書物が問題含みとなることもありませんでした。ところが、ルソーはさらに議論を進めていきました。ルソーには、はたして各人の意志と共同体の意志が、常に調和的に一致するものかという、疑念があったのです。

 少し補足して説明します。先ほど、法律に構成員が同意を与えなければいけないという意味での人民主権というお話しをしましたが、それはあくまでも例えば多数決に則って物事を決めるなどのルールに対して納得して、形成されたものが法律であるということです。常に全員一致でなければいけないなどと、そこまで強いことをルソーは主張していたわけではありません。このことも踏まえた上で、ルソーが先ほど抱いた疑念について、さらに議論を進めていきたいと思います。

 ルソーは以下のような議論を導入します。「一般意志」とは何か。そしてそれを考えるためにそれと「特殊意志」、そして「全体意志」という、三つの概念を持ち出しました。

 一般意志とは、一般的普遍的対象に関わるもの、そして共通の利益を求める意志と規定されます。特殊意志は、それぞれの個人が自分の利益を追求するための自分自身の意志です。一般意志と特殊意志が異なるのは理解できると思いますが、問題は次の全体意志です。この全体意志とは、特殊意志の単なる総和であると、ルソーは主張します。そして、一般意志は当然、特殊意志とは異なりますし、特殊意志の総和にすぎない全体意志とも異なると指摘するのです。さらに、一般意志は決して間違うことのない、理性的意志であるとして、一般意志の無謬性を主張します。


●「一般意志」という概念に潜んでいる危険


 それでは、一般意志とは一体何なのでしょうか。一般意志と全体意志が異なるとするならば、単純に考えると議会における多数意見はもしかすると全体意志であり、真の国民の利益を追求する一般意志ではないのではないか、という話につながります。確かに、実感としてそうした感覚もあるかと思います。多数決で決まればどの法律も良い法律かというと、そうではありません。非常に長期的な観点からすれば、国家にとって大きな不利益をもたらすような決定...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
為替レートから考える日本の競争力・購買力(1)為替レートと物の値段で見る円の価値
ビッグマック指数から考える実質為替レートと購買力平価
養田功一郎
インフレの行方…歴史から将来を予測する(1)インフレの具体像を探る
270年の物価の歴史に学べ…急激な物価上昇期の特徴と教訓
養田功一郎
衰退途上国ニッポン~その急所と勝機(1)安いニッポンと急性インフレ
世界で一人負け…「安い国」日本と急性インフレの現実
宮本弘曉
本当によくわかる経済学史(1)経済学史の概観
経済学史の基礎知識…大きな流れをいかに理解すべきか
柿埜真吾
「次世代地熱発電」の可能性~地熱革命が拓く未来
地熱革命が世界を変える――次世代地熱の可能性に迫る
片瀬裕文
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
トランプの誤謬…米国製造業を壊した犯人は米国の経営者
島田晴雄

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2026(6)賴住光子先生ラフカディオ・ハーン論
ラフカディオ・ハーン『怪談』と『神国日本』の深い秘密
テンミニッツ・アカデミー編集部
印象派の解体と最後の印象派展(5)ポスト印象派の台頭
ゴーガン、ルドン、スーラ、ゴッホ…ポスト印象派の時代へ
安井裕雄
墨子に学ぶ「防衛」の神髄(1)非攻と兼愛
『墨子』に記された「優れた国家防衛のためのヒント」
田口佳史
『孫子』を読む:地形篇(1)六地形の戦略を学ぶ
ベトナム戦争でホー・チ・ミンが学んだ『孫子』地形篇とは
田口佳史
変化する日本株式市場とPEファンド(3)米国型への転換を迫られる日本企業
いまアクティビストの動きは?…進む「米国化」の現状
百瀬裕規
AI時代と人間の再定義(6)道徳の起源から考えるAIと感情の問題
道徳の起源は理性か感情か?…AI時代に必要な思考の身体性
中島隆博
新撰組と幕末日本の「真実」(4)江戸の剣術道場が流行した背景
剣術三大流派の道場主も農民出身?…剣術道場の意外な真実
堀口茉純
「Fukushima50」の真実…その素顔と誇り(1)なぜ日本人は突入できたのか?
福島第一原発事故…日本の危機と闘った吉田昌郎と現場の人々
門田隆将
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(7)領国経営と秀長の統治能力
想像以上に有能――領民に慕われた秀長のリーダーシップ
黒田基樹
大谷翔平の育て方・育ち方(7)不可能を可能にする力
「てっぺん」を目指したい――不可能を可能にする秘密とは
桑原晃弥