政治思想史の古典『法の精神』と『社会契約論』を学ぶ
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
ルソーの「一般意志」「特殊意志」「全体意志」の違いとは
『法の精神』と『社会契約論』を学ぶ【質疑篇】(3)「一般意志」と全体主義
川出良枝(東京大学名誉教授/放送大学教養学部教授)
ルソーは『社会契約論』において三つの異なる意志を定義した。その中でも、特殊意志の総和としての全体意志と、市民全体の共通善を志向する一般意志の間の差異は、重要ながら分かりづらい。一般意志の議論は、ともすれば無謬性を標榜する指導者による全体主義的な指導にも使われかねない危険性をはらむ。一方で、モンテスキューも最低限の正義は認めながらも、基本的には絶対的な正義は存在しないとし、権力に対して徹底的に懐疑的であり続けたという違いがある。講義終了後の質疑応答編3回目。(全11話中第10話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:10分15秒
収録日:2020年8月17日
追加日:2020年11月19日
≪全文≫

●ルソーの三つの意志の区分


―― もう一点、確認したいことが、一般意志、特殊意志、全体意志の違いです。概念的な話ですので、なかなか理解しづらい面もあると思います。念のために整理すると、一般意志は普遍的な理想や理性的なものであり、特殊意志は個別の要望や欲求、そして全体意志は、特殊意志の総和という説明だったと思います。人間社会には一般意志と特殊意志とが両方存在していて、特殊意志は例えばサラリーマンとしての利益や、農民としての利益など、立場によって変わってくるものであり、それが集まったのが全体意志。それは当然一般意志とは異なるという理解でよろしいでしょうか。

川出 基本的にはその通りだと思います。特殊意志と全体意志は分かりやすいですね。自分の業界のためにこのような法律をつくってほしいと陳情する人々がいることがありますね。そして、比較的多くの人がその提案に賛成すれば、多数決でそのような法律が実現することもあるかもしれない。実際にそのようにして形成される法律は、それなりの数あると思います。

 しかし、ルソーの考えでは、それはまさに特殊意志に発しています。同じような特殊意志を共有する人々が寄り集まり、単なる特殊意志の総和としての全体意志が形成されるわけです。「全体」という言葉が少し分かりにくいかもしれませんが。

 一方、ルソーが考える一般意志の一つ目の条件は、まさにある一つの国において、すべての人が同意し、それを通じてすべての人の利益が実現するという意味で、普遍的かつ一般的であるということです。それだけであれば、それほど複雑な議論ではありません。全国民の意志にかなった、全国民の利益を追求することが一般意志であり、少数であれば法律になりませんが、部分的であれ多数の支持を得ることができればまずは全体意志となります。その違いは分かりやすいと思います。シンプルに多数決で物事を決めるならば、より多くの人が納得すればするほど正当な法律になります。単に量的に考えるのであれば、全体意志は本当にぎりぎり過半数を超えた程度で可決されたものであるのに対し、より多くの国民、理想的にはすべての国民が納得したものであれば、それは一般意志と見なされると思います。


●ルソーの「一般意志」の議論は全体主義へと至る危険性もはらむ


川出 このような議論であれば、多数決原理とそれほど変わらずに話...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
お金の回し方…日本の死蔵マネー活用法(1)銀行がお金を生む仕組み
信用創造・預金創造とは?社会でお金が流通する仕組み
養田功一郎
高市政権の進むべき道…可能性と課題(1)高市首相の特長と政治リスク
歴史的圧勝で仕事人・高市首相にのしかかるリスク要因
島田晴雄
米国派経済学の礎…ハミルトンとクレイ(1)ハミルトンの経済プログラム
フェデラリスト・ハミルトンの経済プログラム「4つの柱」
東秀敏
会計検査から見えてくる日本政治の実態(1)コロナ禍の会計検査
アベノマスク、ワクチン調達の決算は?驚きの会計検査結果
田中弥生
地政学入門 歴史と理論編(1)地政学とは何か
地政学をわかりやすく解説…地政学の「3つの柱」とは?
小原雅博
資産運用の思考法…経済や市場の動きをどう読むか
市場予測のポイント…短期・中期・長期の視点と歴史的洞察
養田功一郎

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2026(9)「トランプ大統領」の視点・論点
【テンミニッツで考える】「トランプ大統領」をどう見るか?
テンミニッツ・アカデミー編集部
教養としての「ユダヤ人の歴史とユダヤ教」(1)ユダヤ人とは誰のことか
ユダヤ人とは?なぜ差別?お金持ち?…『ユダヤ人の歴史』に学ぶ
鶴見太郎
万葉集の秘密~日本文化と中国文化(1)万葉集の歌と中国の影響
『万葉集』はいかなる歌集か…日本のルーツと中国の影響
上野誠
日本人とメンタルヘルス…心のあり方(6)日本人の当たり前と山本七平の違和感
日本の異様さ…フィリピンから復員した山本七平が驚いたこと
與那覇潤
インフレの行方…歴史から将来を予測する(1)インフレの具体像を探る
270年の物価の歴史に学べ…急激な物価上昇期の特徴と教訓
養田功一郎
これから必要な人材と人材教育とは?(1)人手の供給不足とマクロ経済への影響
ごく一部の人手不足が「致命的」になる…Oリング・セオリー
柳川範之
第二次世界大戦とソ連の真実(1)レーニンの思想的特徴
レーニン演説…革命のため帝国主義の3つの対立を利用せよ
福井義高
禅とは何か~禅と仏教の心(1)アメリカの禅と日本の禅
自発性を重んじる――藤田一照師が禅と仏教の心を説く
藤田一照
戦前、陸軍は歴史をどう動かしたか(1)総力戦時代の到来
日英同盟の廃棄、総力戦…世界秩序の激変に翻弄された日本
中西輝政
ソニー流「人的資本経営と新規事業」成功論(3)「現場の熱」こそ多角化の要点
新規事業を成功させるリーダーとは…上意下達はなぜダメか
水野道訓