●ローカル5G普及への一番の問題はインフラコストが非常に高いこと
「6Gはローカル6Gから始まる」ということで、特にこのうちの一つの例を紹介します。価格破壊・自営網展開キットの話をします。
ローカル5G普及における一番の問題は、今の時点では機器が非常に高価である、つまりインフラのコストが非常に高いということが挙げられます。ローカル5Gに強い興味を持っている方は非常にたくさんいますが、実際に導入をしようとしたときのコストが高いために躊躇しているという例が多く見られます。
そこで、われわれは一般の家庭にあるようなパソコンでローカル5G(SA)の基地局が構成できるかという課題に取り組みました。
●無線構成要素を開発して非常に安価なローカル5G基地局を構成
ここでソフトウェアの基地局の構成についてお話をします。スライドの写真にあるように、これは少し大きめのPCになりますが、ご家庭やオフィスにあるようなPCでもまったく同じことが実現できます。汎用のインテルのCPUの入ったPCを使いまして、こちらにソフトウェア基地局のソフトウェアをインストールします。同時に5Gのネットワークはこの基地局の他に5Gコアネットワークが必要となりますが、こちらもソフトウェアで実現が可能となります。
ただし、全てをソフトウェアで実現することはもちろんできないわけですから、「RF」とわれわれは呼びますが、無線の構成要素部分以外は全て汎用インテルPCで、ソフトウェアにより実現可能になってきています。
課題は無線の構成要素部分と、それから信号の送受信を低遅延で可能とする、周波数が高くて、並列実行可能な命令を持っている汎用プロセッサが必要だということになります。今、ご家庭で使われたり、もっというとAIとか機械学習を実行したり、それからちょっと意外かもしれませんが、ゲーム用に開発されているシステム、例えばネットワークシューティングゲームとか、そうした周波数の高い汎用プロセッサを使っているPCであれば、このような基地局がソフトウェアで実装可能になってきています。課題として、この無線構成要素部分を安価にシンプルに構成する必要があります。これにはノイズや熱の削減、効率の良い増幅、フィルター機能などがあります。
この講義ではあまり詳しい中身について踏み込みませんが、一般の全国通信事業者が使っているようなコストの高い(高い理由はいろいろありますが)、われわれがローカル5Gで使っていくことに十分な機能を備えたものは安価に、このようなソフトウェア基地局で構成をすることが可能となります。
実際にわれわれは無線構成要素を開発しており、PCベースのソフトウェア部分とハードウェア部分を組み合わせまして、非常に安価なローカル5G基地局を構成しています。使っている周波数はSub6GHzですね。正確にいうと4.75GHzという周波数帯を今は使っています。
ローカル5Gのスタンドアローン、それからノンスタンドアローン、SA/NSAという方式がありますが、どちらもこのようにパソコンベースで構築をすることが可能となります。こうすることによってキャリアがお使いの基地局に比べると、構成要素の価格ベースでいいますと、だいたい10分の1以下でこうした基地局が構成できることが分かっています。
●ローカル5G基地局の低廉化・カスタム化
これは、2020年10月に東京都、東京大学、NTT東日本でメディア発表会を開いた時、われわれが持ち込んだ基地局とその性能を示しています。左側のソフトウェアの5G基地局ですけれども、これは今、2台表示していますが、2台必要ということではありません。このようなソフトウェアの5G基地局を整備しまして、通常のスマホの端末をつなぎますと、ダウンロードの性能向上設定では、ダウンロード方向にデータのレートが543Mbpsという非常に大きな帯域を得ることが可能となります。
このようにローカル5Gを使いますと、これまで携帯電話で使うことができた帯域に比べますと、非常に大きなデータ容量の通信を行うことが可能となります。
ここで注目してもらいたいのが、ダウンロード方向の他にアップロード方向の帯域となりますが、これはダウンロード方向に比べると非常に小さな値になっています。だいたい10分の1ぐらいの値になっており、これは市中で5Gを契約された方が同じようにスピードテストの実験をされると、今の公衆網の5Gでも同様な結果となります。
これは何を意味しているか。通常の5Gの通信ではダウンロード方向に皆さんがデータ通信を行うことが想定さ...