●世俗化には、フランス・カトリックとドイツ・プロテスタントの違いがある
先ほど、世俗化と申し上げました。一つは、神を個人の内面において検証していく、つまり、神に向かっていく宗教的な展開がありました。そうすると、神の問題は、教会や社会ではなく、自分の信仰の問題になっていきます。これも一つの世俗化なのです。
もう一つは、今まで社会を支配していた宗教的な規範がありましたが、その代わりに、今度は、非常に近代化された宗教を内面に持った個人の道徳という形で、世俗内倫理が成立をしていきます。こういう二つの意味での世俗化があります。
典型的なのは、フランス・カトリックとドイツ・プロテスタントで、この二つに世俗化の違いがあります。
●フランスでは、ライシテという原理が確立し、公的空間から宗教が消えていった
例えば、非常に分かりやすく言うと、フランスは世俗化のことをライシテと言います。ライックという形容詞も使ったりするのですが、面白いですね。1905年にライシテ法ができます。これは、マックス・ウェーバーが『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』を書いたまさにその年で、日露戦争の直後です。こういう時に、フランスでは、ライシテという原理が確立していきます。ですから、完全にフランスの公的空間からは、宗教が消えていきました。
例えば、バラク・オバマがアメリカ大統領になった時に、宣誓式をしましたね。あそこで何をしていましたか? 何かに手を置いていましたね。何に手を置いていましたか? 聖書ですよね。誰の聖書でしたか? あれは、リンカーンの聖書なのです。オバマは、実は、自分はリンカーンの継承者であるという非常に象徴的な行為を、あそこでやったのです。つまり、南北に分かれていたアメリカを統一したリンカーンに、自らを重ねていきました。でも、こんなことをフランス大統領がやったら、大変なことになりますね。ライシテに違反しています。政教分離に完全に違反する行為です。ですから、フランスは非常に厳しいのです。
皆さんがご存知のように、イスラムの女性たちがまとうスカーフがありますよね。ブルカというスカーフは、もっと長いです。あれを禁止する法案が、フランスで通りました。このレジュメにその歴史的な年表を書いておきましたが、ベルギー、フランスは、そういうことをやります。これは、1...