グローバル化時代の資本主義の精神
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
ジョン・ウェスレーが提示した「寄付」という方法の背景
グローバル化時代の資本主義の精神(2)世俗倫理と資本主義の精神
哲学と生き方
中島隆博(東京大学東洋文化研究所長・教授)
今、ポスト世俗化の時代と言われているが、世俗化には二つの意味があると話す中島隆博氏。典型的なのは、フランス・カトリックとドイツ・プロテスタントだという。そこで、今回はこの二つの違いから、近代の世俗倫理と資本主義の精神について考察する。(2014年11月7日開催日本ビジネス協会インタラクティブセミナー講演より、全6話中第2話目)
時間:10分07秒
収録日:2014年11月7日
追加日:2015年5月18日
≪全文≫

●世俗化には、フランス・カトリックとドイツ・プロテスタントの違いがある


 先ほど、世俗化と申し上げました。一つは、神を個人の内面において検証していく、つまり、神に向かっていく宗教的な展開がありました。そうすると、神の問題は、教会や社会ではなく、自分の信仰の問題になっていきます。これも一つの世俗化なのです。

 もう一つは、今まで社会を支配していた宗教的な規範がありましたが、その代わりに、今度は、非常に近代化された宗教を内面に持った個人の道徳という形で、世俗内倫理が成立をしていきます。こういう二つの意味での世俗化があります。

 典型的なのは、フランス・カトリックとドイツ・プロテスタントで、この二つに世俗化の違いがあります。


●フランスでは、ライシテという原理が確立し、公的空間から宗教が消えていった


 例えば、非常に分かりやすく言うと、フランスは世俗化のことをライシテと言います。ライックという形容詞も使ったりするのですが、面白いですね。1905年にライシテ法ができます。これは、マックス・ウェーバーが『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』を書いたまさにその年で、日露戦争の直後です。こういう時に、フランスでは、ライシテという原理が確立していきます。ですから、完全にフランスの公的空間からは、宗教が消えていきました。

 例えば、バラク・オバマがアメリカ大統領になった時に、宣誓式をしましたね。あそこで何をしていましたか? 何かに手を置いていましたね。何に手を置いていましたか? 聖書ですよね。誰の聖書でしたか? あれは、リンカーンの聖書なのです。オバマは、実は、自分はリンカーンの継承者であるという非常に象徴的な行為を、あそこでやったのです。つまり、南北に分かれていたアメリカを統一したリンカーンに、自らを重ねていきました。でも、こんなことをフランス大統領がやったら、大変なことになりますね。ライシテに違反しています。政教分離に完全に違反する行為です。ですから、フランスは非常に厳しいのです。

 皆さんがご存知のように、イスラムの女性たちがまとうスカーフがありますよね。ブルカというスカーフは、もっと長いです。あれを禁止する法案が、フランスで通りました。このレジュメにその歴史的な年表を書いておきましたが、ベルギー、フランスは、そういうことをやります。これは、1...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
禅とは何か~禅と仏教の心(1)アメリカの禅と日本の禅
自発性を重んじる――藤田一照師が禅と仏教の心を説く
藤田一照
死と宗教~教養としての「死の講義」(1)「自分が死ぬ」ということ
世界の宗教は死をどう考えるか…科学では死はわからない
橋爪大三郎
現代人に必要な「教養」とは?(1)そもそも教養とは何か
教養とは…本質を捉える知、他者を感じる力、先頭に立つ勇気
小宮山宏
哲学から考える日本の課題~正しさとは何か(1)言葉の正しさとは
「正しい言葉とは何か」とは、古来議論されているテーマ
中島隆博
ヒトは共同保育~生物学から考える子育て(1)動物の配偶と子育てシステム
ヒトは共同保育の動物――生物学からみた子育ての基礎知識
長谷川眞理子
西洋哲学史の10人~哲学入門(1)ソクラテス 最初の哲学者
ソクラテス:「フィロソフィア」の意味を問う最初の哲学者
貫成人

人気の講義ランキングTOP10
トランプ・ドクトリンと米国第一主義外交(1)リヤド演説とトランプ・ドクトリン
トランプ・ドクトリンの衝撃――民主主義からの大転換へ
東秀敏
数学と音楽の不思議な関係(3)音と三角関数とフーリエ級数
フーリエ解析、三角関数…数学を使えば音の原材料が分かる
中島さち子
ヒトは共同保育~生物学から考える子育て(3)共同保育を現代社会に取り戻す
狩猟採集生活の知恵を生かせ!共同保育実現に向けた動き
長谷川眞理子
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(2)外交と軍事のバランス
外政家・原敬とは違う…職業外交官・幣原喜重郎の評価は?
小原雅博
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
第2の人生を明るくする労働市場改革(1)日本の労働市場が抱える問題
シニアの雇用、正規・非正規の格差…日本の労働市場の問題
宮本弘曉
キケロ『老年について』を読む(1)キケロの評価と「老年の心構え」
老年が惨めと思われる4つの理由とは…キケロの論駁に学べ
本村凌二
「アカデメイア」から考える学びの意義(1)学びを巡る3つの危機
「学びの危機」こそが現代社会と次世代への大きな危機
納富信留
編集部ラジオ2025(20)納富信留先生の「アカデメイア」講義
プラトンのアカデメイアからテンミニッツ・アカデミーへ
テンミニッツ・アカデミー編集部
戦前、陸軍は歴史をどう動かしたか(1)総力戦時代の到来
日英同盟の廃棄、総力戦…世界秩序の激変に翻弄された日本
中西輝政