社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
「警察手帳の中身」はどうなっているの?
「警察手帳」といえば、警察官が身分を証明するための道具。一般市民の大多数が、知っているようで知らないものの代表と言えるのではないでしょうか。それを「見たことはあるけれど、見たことがない」と形容しているのが『警察手帳』(新潮新書)の著者、古野まほろ氏。警察キャリア出身という経歴を持つ作家です。今回は、警察手帳についての私たちの思い込みや常識をあぶり出してみましょう。
普通、手帳は毎日どこへ行くにも持ち歩き、その都度スケジュールを書き込んだり、行動の記録を残したり、使ったお金をメモしたりします。つまり「書いた」ものを「見る」のが、手帳の主な使用法。ところが警察手帳では、書き込むことはあまり考慮されていません。一応白紙のページ(「恒久用紙」と呼ぶそう)はあるものの、そこには「書くなと言われていた気もする」とさえ、著者は言っています。
警察官である証として「見せる」のが、警察手帳のほぼ唯一の役割。何かをメモする用途には、独立した「記載用紙」という紙束が用意され、書いたものを手帳に「差し込める」ようになっていたそうです。
従来の警察手帳はチョコレート色革製。表紙には金の代紋と都道府県警察の名前。開いた最初のページは写真に割印、氏名、階級、所属庁、職員番号と、パスポート仕様になっていました。
新デザインはアメリカ合衆国警察の「バッジケース」にならい、手帳機能を一切なくしたもの。折り返して胸ポケットからエンブレムを見せている私服刑事の姿を報道番組などで見かけた方もいるのではないでしょうか。
外側は従来通りチョコレート色革装ですが、シールを貼ったりデコレーションすることは禁じられています。それは、警察手帳が私物ではなく、「貸与」されているからです。そして、貸与品であるがゆえの鉄則が「なくさない」こと。
そのため、手帳の片隅には紛失防止紐がつけられていて、衣服につないでおかなければなりません。警察官の制服の左胸ポケットには、警察手帳を確実に収納し、ロックする仕組みが付いています。でも、もちろん市販のスーツにはそんなものはないため、私服勤務の警察官は内ポケットのボタン穴などを利用するそうです。著者によると、このヒモは手帳をぐるぐる巻きにできる長さがあると言います。
それは警察に長く奉職した著者も同様だったそう。例えば警察庁警察官であれば、中央官庁内なので、警察官としての身分を市民に証明する必要がありません。地方警察であっても警視などの階級になり、外回りの必要がなくなると、貸与はされても保管庫に入れたまま、使用する機会がなくなります。
見てみたいような、見たくないような警察手帳。その魅力は、やはり警察そのものの、わかっているようで、外側からはわからないシステムに由来するのでしょう。
実は手帳ではなかった「警察手帳」
手帳でありながら、「『手帳』としては意味がないもの」。著者は警察手帳(旧型)に対する警察官の共通認識をそのように言います。一体どういうことなのでしょうか?普通、手帳は毎日どこへ行くにも持ち歩き、その都度スケジュールを書き込んだり、行動の記録を残したり、使ったお金をメモしたりします。つまり「書いた」ものを「見る」のが、手帳の主な使用法。ところが警察手帳では、書き込むことはあまり考慮されていません。一応白紙のページ(「恒久用紙」と呼ぶそう)はあるものの、そこには「書くなと言われていた気もする」とさえ、著者は言っています。
警察官である証として「見せる」のが、警察手帳のほぼ唯一の役割。何かをメモする用途には、独立した「記載用紙」という紙束が用意され、書いたものを手帳に「差し込める」ようになっていたそうです。
実は変わっていた「警察手帳」
警察手帳(旧型)と書いたことで、「新型もあるのか?」と思われた方もいるでしょう。そうです。警察手帳は2002(平成14)年より「バッジ型警察手帳」に切り替わっています。「身分証+エンブレムの機能に特化」され、「開かなければ使用できない」デザインになったと言いますが、ご存じだったでしょうか?従来の警察手帳はチョコレート色革製。表紙には金の代紋と都道府県警察の名前。開いた最初のページは写真に割印、氏名、階級、所属庁、職員番号と、パスポート仕様になっていました。
新デザインはアメリカ合衆国警察の「バッジケース」にならい、手帳機能を一切なくしたもの。折り返して胸ポケットからエンブレムを見せている私服刑事の姿を報道番組などで見かけた方もいるのではないでしょうか。
実はヒモつきだった「警察手帳」
警察手帳のデザインが変更されたのは、2000年前後に警察不祥事が続発していたためだと言います。デザインが変わり、ID用に特化したとはいえ、変わっていないこともあります。外側は従来通りチョコレート色革装ですが、シールを貼ったりデコレーションすることは禁じられています。それは、警察手帳が私物ではなく、「貸与」されているからです。そして、貸与品であるがゆえの鉄則が「なくさない」こと。
そのため、手帳の片隅には紛失防止紐がつけられていて、衣服につないでおかなければなりません。警察官の制服の左胸ポケットには、警察手帳を確実に収納し、ロックする仕組みが付いています。でも、もちろん市販のスーツにはそんなものはないため、私服勤務の警察官は内ポケットのボタン穴などを利用するそうです。著者によると、このヒモは手帳をぐるぐる巻きにできる長さがあると言います。
実は使われていない「警察手帳」
それほど厳重に管理しなければならないのは、万が一警察手帳を紛失すると、「すぐに悪用されてしまう」ことが心配だからです。でも、案外その手帳、実際に「使われている」現場にはお目にかかる機会がありません。それは警察に長く奉職した著者も同様だったそう。例えば警察庁警察官であれば、中央官庁内なので、警察官としての身分を市民に証明する必要がありません。地方警察であっても警視などの階級になり、外回りの必要がなくなると、貸与はされても保管庫に入れたまま、使用する機会がなくなります。
見てみたいような、見たくないような警察手帳。その魅力は、やはり警察そのものの、わかっているようで、外側からはわからないシステムに由来するのでしょう。
<参考サイト>
・『警察手帳』(吉野まほろ、新潮新書)
・『警察手帳』(吉野まほろ、新潮新書)
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
より深い大人の教養が身に付く 『テンミニッツTV』 をオススメします。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,300本以上。
『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
経営をひと言で?…松下幸之助曰く「2つじゃいけないか」
東洋の叡智に学ぶ経営の真髄(1)経営とは何かをひと言で?
東洋思想を研究する中で、50年間追求してきた命題の解を得たと田口佳史氏は言う。また、その命題を得るきっかけとなったのは松下幸之助との出会いだった。果たしてその命題とは何か、生涯の研究となる東洋思想とどのように結び...
収録日:2024/09/19
追加日:2024/11/21
次の時代は絶対にアメリカだ…私費で渡米した原敬の真骨頂
今求められるリーダー像とは(3)原敬と松下幸之助…成功の要点
猛獣型リーダーの典型として、ジェネラリスト原敬を忘れてはならない。ジャーナリスト、官僚、実業家、政治家として、いずれも目覚ましい実績を上げた彼の人生は「賊軍」出身というレッテルから始まった。世界を見る目を養い、...
収録日:2024/09/26
追加日:2024/11/20
冷戦終焉から30年、激変する世界の行方を追う
ポスト冷戦の終焉と日本政治(1)「偽りの和解」と「対テロ戦争」の時代
これから世界は激動の時代を迎える。その見通しを持ったのは冷戦終焉がしきりに叫ばれていた時だ――中西輝政氏はこう話す。多くの人びとが冷戦終焉後の世界に期待を寄せる中、アメリカやヨーロッパ諸国、またロシアや同じく共産...
収録日:2023/05/24
追加日:2023/06/27
遊女の実像…「苦界と公界」江戸時代の吉原遊郭の二面性
『江戸名所図会』で歩く東京~吉原(1)「苦界」とは異なる江戸時代の吉原
『江戸名所図会』を手がかりに江戸時代の人々の暮らしぶりをひもとく本シリーズ。今回は、遊郭として名高い吉原を取り上げる。遊女の過酷さがクローズアップされがちな吉原だが、江戸時代の吉原には違う一面もあったようだ。政...
収録日:2024/06/05
追加日:2024/11/18
国の借金は誰が払う?人口減少による社会保障負担増の問題
教養としての「人口減少問題と社会保障」(4)増え続ける社会保障負担
人口減少が社会にどのような影響を与えるのか。それは政府支出、特に社会保障給付費の増加という形で現れる。ではどれくらい増えているのか。日本の一般会計の収支の推移、社会保障費の推移、一生のうちに人間一人がどれほど行...
収録日:2024/07/13
追加日:2024/11/19