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DATE/ 2017.07.16

ヒアリだけじゃない!身近に潜む危険生物

 中国からのコンテナから、人体に害を及ぼす危険な生物「ヒアリ」が発見されたとの報道が相次いでいます。東京都環境局によると、国内では今年(2017年)の5月26日に、兵庫県で初めて発見され、大阪港では女王アリが見つかるなど、多くの場所でその存在が確認されています。南米原産のヒアリは、攻撃性が高く、刺される痛さもありますが、それより怖いのがその毒性で、スズメバチのようなアナフィラキシーショックによる死亡例もあるそうです。

外来種の脅威

 さて、ヒアリ以外にも実は、国内で危険とされる外来生物が多く存在しています。海外から来た種であるため、日本では天敵と呼べる生物がおらず、その結果、繁殖してしまうのです。アウトドア活動での遭遇のみならず、生活圏にまで忍び寄ってくる生物もいます。今回はそんな身近に潜む危険生物について、見ていきましょう。

危険な外来生物、その住処とは

 東京都では、2014年9月、「外来生物法」に基づく特定外来生物のうち人間に有害な「セアカゴケグモ」の発見を受けて、人体への被害が報告される16種を「危険な外来生物」と定めました。また、特定外来種ではないもののこれに適応されるかどうか審議されている生態系被害防止外来種(2015年3月26日までは要注意外来生物とされていました)というものも存在します。

 いったい彼らは、どんな場所に生息しているのでしょうか。

[日当たりの良い場所・温かい場所にある物陰]

 東京都を含め、42都道府県で確認されている「セアカゴケグモ」、同じく東京都で見つかり危険とされている「ハイイロゴケグモ」は、物陰に生息しています。この物陰というのは、ベンチの裏や自動販売機の下、エアコンの室外機の下など、人が生活する上で触れるような場所ばかりです。外に置いてあるサンダルの中にも注意しなければいけません。

 では、これらのクモに噛まれた場合、どのような症状が見られるのでしょうか。セアカゴケグモは噛まれたときにはそれほど痛みはありませんが、あとから局所的に痛みがはしり、腫れてきます。こどもや高齢者など、人によっては、全身症状があらわれることもあり、吐き気、嘔吐、発熱、全身の震え、ひどいと精神異常や呼吸困難を起こすこともあり、死亡例もあります。

 ハイイロゴケグモは、進行性の筋肉麻痺がおこる可能性があります。こちらはまだ死亡例がないそうですが、噛まれると、痛みなどで数週間苦しむことになるとのことです。

[水の中]

 川などの水辺で注意すべきは、原産地はカナダ南部から南アメリカ北西部のカミツキガメ。千葉県印旛沼が生息数の多さで有名ですが、静岡県でも定着が確認され、東京都でもその存在が確認されています。

 カミツキガメは動きがすばやく、噛む力が強いため、大型に噛まれると大けがになります。しかし、こちらからちょっかいを出さない限りは、攻撃してこないので、見つけたらなるべく近寄らないようにしましょう。

 また、同じカメでいうと、以前ペットとして飼育されることもあったワニガメも、人間の指をかみちぎってしまうほど強力な顎を持っています。

[庭先、山地、森林]

 沖縄本土で定着していると言われているのが、原産地が台湾や中国大陸南部のタイワンハブ。幅広い環境で生息しているため、畑仕事や庭の手入れ中でも遭遇します。

 その毒はハブの1.1倍とのことですが、体が小さいため、毒の量が少なく、死に至ることはまれだそうです。

外来種が広がっていくわけ

 外来種は、貨物船などの輸送中に紛れ込んだり、ペットとして輸入されたりして、日本に入ってきます。そこで繁殖して、日本に定着してしまうのです。

 これらの生物に罪はありませんし、そのすべてが人に害を及ぼすわけではありません。しかしときに農作物を荒らし、在来種の脅威となり、場合によっては、人間の命をも奪いかねません。

 外来種が日本に入ってくることを完全に防ぐことはできません。だからこそ、私達を取り巻く環境にどのような危険生物がいるのか、注意しておく必要があるでしょう。

<参考サイト>
・東京都環境局 気をつけて!危険な外来生物
http://gairaisyu.tokyo/species/index.html
・WWF 外来生物問題
https://www.wwf.or.jp/activities/wildlife/cat1016/cat1100/
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小原雅博
東京大学名誉教授