テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
ログイン 会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2017.10.25

激安もやし業界の窮状…救世主は現れるのか?

 毎日の食卓を預かる主婦の方々にとっての心強い味方と言えば「もやし」。安くて栄養素があり、野菜炒めにしても良し、ゆでて食べても良し、と様々な調理法ができる食材として日本全国で重宝されています。

 「もやし生産者協会」の統計データによると、平成28年度、全国2人以上の世帯当たりの購入数量は6528グラム、100グラム当たりの平均価格は15.61円。これを12年前の平成16年と比べてみると購入数量5684グラム、平均価格17.68円であることから、価格高騰となりがちな世の中において“優等生”と言っていいでしょう。

 ウェブサイト「BUSINESS INSIDER JAPAN」では、ズバリ「もやしはなぜ安いのか」と理由を説明。「太陽光がいらず、場所や環境に依存しない」、「豆の栄養分を使って発芽するため、肥料なしでも水さえあれば育つ」、「発芽して8日程度で出荷される期間の短さ」という3つの理由によって、販売価格が抑えられているとしています。

もやし生産者は8年間で100社以上が廃業

 ただし、財布に優しいのは消費者にとっての立場です。実はここ近年、生産者の立場から見ると苦しい立場に立たされているのだそうです。同じく「もやし生産者協会」が2017年3月に発表した「もやし生産者の窮状にご理解を!」との特集によると、販売価格がほぼ横ばいどころか安くなっている一方で、生産コストは上がり続けています。

 大きな要因となっているのは、原料となる緑豆の価格高騰です。主に使用されている中国産の緑豆は2005年の価格値を「100%」とすると、2015年と2017年(予想値)は300%に近い数値を叩き出し、約3倍ものコストアップを強いられる状況となっています。また人件費についても、この12年間で約20%上昇しているとのことです。

 もやし業界の苦境ぶりは、生産者数を見れば一目瞭然です。2009年時点で全国のもやし生産者は230社以上あったものの、この7、8年間で100社以上も廃業に追い込まれたといいます。つまり、もやしの需要があっても、供給が追いつかない事態も想定されているのです。

栄養素の高い「子大豆もやし」は救世主か

 先細りが急激に進むもやし業界ですが、手をこまねいているだけではないようです。ウェブサイト「ダイヤモンド・オンライン」の「偶然から生まれた『高栄養もやし』は業界の窮状を変えるか」では、1袋70円という少々強気な価格設定をした「子大豆もやし」とい商品を紹介しています。

 同商品を開発した「株式会社サラダコスモ」の商品説明によると、新潟県南魚沼市の良質な地下水で育てており、「豆の持っている力と良質の地下水のみで育てます」と、最適化した環境によって栄養素をアップ。「USDA栄養データベース」調べの一般的なもやしの栄養素だとタンパク質が3.04グラムのところ、子大豆もやしは4.4グラムにまでアップしているほどです。

 価格が上昇しても家計への負担はそれほど大きくなく、しかも「美味しい!」と思わせる―そんな高品質もやしが今後の主流となり、生産者を救う一つの流れになるのかもしれません。

<参考サイト>
・もやし生産者協会:もやしの統計
http://www.moyashi.or.jp/whats/data.html
・BUSINESS INSIDER JAPAN:もやしはなぜ安いのか
https://www.businessinsider.jp/post-1336
・ダイヤモンド・オンライン:偶然から生まれた「高栄養もやし」は業界の窮状を変えるか
http://diamond.jp/articles/-/142885?page=2
・株式会社サラダコスモ:商品説明
http://www.saladcosmo.co.jp/sprout/kodaizumoyashi.html
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
“社会人学習”できていますか? 『テンミニッツTV』 なら手軽に始められます。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,100本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

陰の主役はイラン!?イスラエル・ハマス紛争の宗教的背景

陰の主役はイラン!?イスラエル・ハマス紛争の宗教的背景

グローバル・サウスは世界をどう変えるか(4)サウジアラビアとイランの存在感

中東のグローバル・サウスといえば、サウジアラビアとイランである。両国ともに世界的な産油国であり、世界の政治・経済に大きな存在感を示している。ただし、石油を武器にアメリカとの関係を深めてきたのがサウジアラビアであ...
収録日:2024/02/14
追加日:2024/04/24
島田晴雄
慶應義塾大学名誉教授
2

権威主義とポピュリズムへの対抗…歴史を学び、連帯しよう

権威主義とポピュリズムへの対抗…歴史を学び、連帯しよう

民主主義の本質(5)民主主義を守り育てるために

ポピュリズムや権威主義的な国家の脅威が迫る現在の国際社会。それに対抗し、民主主義的な社会を堅持するために、国際社会の中で日本はどのように振る舞うべきか。議論を進める前提として大事なのは「歴史から学ぶ」ことである...
収録日:2024/02/05
追加日:2024/04/23
橋爪大三郎
社会学者
3

起業の極意!サム・アルトマンと松下幸之助

起業の極意!サム・アルトマンと松下幸之助

編集部ラジオ2024:4月24日(水)

ChatGPTを開発したことで一躍有名となったOpenAI創業者のサム・アルトマン。AIの発展によって社会は大きく、急速に変化しており、その中心的な人物こそが彼であるといっても過言ではありません。

そんなアルトマンが...
収録日:2024/04/15
追加日:2024/04/24
テンミニッツTV編集部
教養動画メディア
4

ルネサンスはどうやって始まった?…美術の時代背景

ルネサンスはどうやって始まった?…美術の時代背景

ルネサンス美術の見方(1)ルネサンス美術とは何か

ルネサンス美術とはいったい何なのか。これを考えるためには、なぜその時代に古代ギリシャ、ローマの文化が復活しなければならなかったのかを考える必要がある。その鍵は、ルネサンス以前のイタリアの分裂した都市国家の状態や...
収録日:2019/09/06
追加日:2019/10/31
池上英洋
東京造形大学教授
5

ノーベル賞受賞「オートファジー」とは?その仕組みに迫る

ノーベル賞受賞「オートファジー」とは?その仕組みに迫る

オートファジー入門~細胞内のリサイクル~(1)細胞と細胞内の入れ替え

2016年ノーベル医学・生理学賞の受賞テーマである「オートファジー」とは何か。私たちの体は無数の細胞でできているが、それが日々、どのようなプロセスで新鮮な状態を保っているかを知る機会は少ない。今シリーズでは、細胞が...
収録日:2023/12/15
追加日:2024/03/17
水島昇
東京大学 大学院医学系研究科・医学部 教授