テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2017.11.13

フェイクニュースの温床?まとめサイトの実態

 みなさんは「まとめサイト」なるものの存在をご存知でしょうか? 巨大匿名掲示板「2ちゃんねる」の各スレッドや、TwitterなどSNSに投稿されたコメントを抽出し、まとめたサイトです。

 スタッフのなかにも主にプロ野球の実況版として機能している「なんでも実況版ジュピター(通称「なんJ」)のまとめサイトの愛読者がいます。「なんJ語」と呼ばれる独特の言い回しで面白おかしく野球を語る、名もなき人たちのコメントを楽しんでいるとのこと。

 野球だけでなく芸能、政治、ペットや子育てなど、様々なジャンルのまとめサイトが数えきれないくらい多く存在しており、上記のスタッフは最近、ニュースをまとめサイト経由でチェックすることが増えましたと話していました。

無断転載のアフィリエイトサイト

 このまとめサイト、楽しいだけでなく様々なトラブルの温床となっているのも事実です。

 一つはまとめサイトがアフィリエイトサイトであること。

 アフィリエイトは、サイト内の広告を閲覧者がクリックすることで、サイト運営者が金銭を得られるというネット広告のシステム。まとめサイトの運営者はこのアフィリエイトで収入を得ているわけですが、コンテンツのほとんどは2ちゃんねるの投稿をコピペするだけ。ひと様のものを利用して収入を得ているということで、世間からの風当たりが強くなっています。

 もちろん、2ちゃんねるの投稿者たちも、アフィリエイトサイトに利用されていることを快く思っていない人が多いのです。スレッドによっては投稿者欄にわざわざ「無断転載禁止」の文字が躍る仕様になっています。

 ただ、2ちゃんねるは利用規約で、投稿の著作権は投稿者でなく2ちゃんねるに帰属するものと定めています。さらに、2ちゃんねるの創設者である西村博之氏自身がまとめサイトへの転載を容認しているため、この「無断転載禁止」は、実は法的にはあまり意味がなかったりもします(抑止力にはなっているでしょうが)。

恣意的に内容を作り替えた「フェイクニュース」に用心

 それよりも深刻な問題となっているのが、今回(2017年10月22日)の選挙でも少し話題になった「フェイクニュース」の増加です。

 まとめサイトは2ちゃんねるの投稿を拾い集めて構成されているサイトですが、全部の投稿を転載しているわけではなく、サイト運営者が「おもしろい」「必要」と感じた投稿が抽出されています。つまりそこには運営者の「編集」が介在しているわけで、片方の意見ばかりが抽出されている可能性もあるのです。

 「フェイクニュース」とは、虚偽の情報でつくられたニュースのことで、最近はフェイクニュースの作成を専門に請け負う会社まで誕生しています。日刊SPA!のインタビューに応じたフェイクニュース屋によると、2ちゃんねるに社員たちが一方の意見を書き込み、それを自社が運営するまとめサイトに掲載することもあるとのこと。編集を通り越して、もはやねつ造です。

正しい情報を常に追い求めたい

 新聞社やテレビ局が運営するサイトを閲覧するよりも手っ取り早く情報が手に入れられるまとめサイトですが、確固たるメディアリテラシーを持たず、収入や話題性だけを求めて運営されているサイトが多いのは否めません。

 現代を生きる私たちには、まとめサイトの情報を鵜呑みすることなく、常に正しい情報が何かを追い求める姿勢が求められているのです。

<参考サイト>
・netgeek:【速報】2ちゃんねる西村博之が神対応
http://netgeek.biz/archives/50874
・日刊SPA!:ネトウヨを煽って月収30万! フェイクニュース屋の儲ける手口
https://nikkan-spa.jp/1406093
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
より深い大人の教養が身に付く 『テンミニッツTV』 をオススメします。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

青春期は脳のお試し期間!?社会的ニッチェと信頼の形成へ

青春期は脳のお試し期間!?社会的ニッチェと信頼の形成へ

今どきの若者たちのからだ、心、社会(2)思春期の成長、青春の脳

思春期にからだが急激に成長することを「思春期のスパート」と呼ぶ。先行して大きくなった脳にからだを追いつかせるための戦略である。脳はそれ以上大きくならないが、脳内の配線が変化する。そうした青春期の脳の実態を知るた...
収録日:2024/11/27
追加日:2025/07/12
長谷川眞理子
日本芸術文化振興会理事長
2

アベノマスク、ワクチン調達の決算は?驚きの会計検査結果

アベノマスク、ワクチン調達の決算は?驚きの会計検査結果

会計検査から見えてくる日本政治の実態(1)コロナ禍の会計検査

日本の財政をくまなく検査し、その収入と支出を把握する会計検査院。日本のメディア報道などでは、予算の決定や補助金などの政策決定については詳しく報じられるが、それがどのように実際に使われたかは、ほとんど言及がない。...
収録日:2025/04/14
追加日:2025/07/11
田中弥生
東京大学客員教授
3

正岡子規と高浜虚子の論争、その軍配と江藤淳暦年のテーマ

正岡子規と高浜虚子の論争、その軍配と江藤淳暦年のテーマ

AI時代に甦る文芸評論~江藤淳と加藤典洋(3)正岡子規と高浜虚子の「リアリズム」

正岡子規の死後、高浜虚子が回想で述べた師・子規との論争。そこに「リアリズムとは何か」のヒントが隠されていると江藤淳氏は言う。子規と虚子、それぞれの「リアル」とは何か、そしてどちらが本当の「リアル」なのか。近代小...
収録日:2025/04/10
追加日:2025/07/09
與那覇潤
評論家
4

AI時代の「真のリアル」は文芸評論の練達の手法にあり!

AI時代の「真のリアル」は文芸評論の練達の手法にあり!

編集部ラジオ2025(14)なぜAI時代に文芸評論が甦るのか

どんどんと進む社会のAI化。この大激流のなかで、人間の仕事や暮らしの姿もどんどん変わっていっています。では、AI時代に「人間がやるべきこと」とはいったい、何なのでしょうか? さらにAIが、驚くほど便利に何でも教えてく...
収録日:2025/05/28
追加日:2025/07/10
テンミニッツTV編集部
教養動画メディア
5

マネへの強烈なライバル意識…セザンヌ作品にみる現代性

マネへの強烈なライバル意識…セザンヌ作品にみる現代性

作風と評論からみた印象派の画期性と発展(1)セザンヌの個性と現代性

印象派の最長老として多くの画家に影響を与えたピサロ。その影響を多分に受けてきた画家の中でも最大の1人がセザンヌだが、その才覚は第1回の印象派展から発揮されていた。画面構成や現代性による解釈から、セザンヌ作品の特徴...
収録日:2023/12/28
追加日:2025/07/10
安井裕雄
三菱一号館美術館 上席学芸員