社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
会社をダメにする「サイレントキラー」の正体
破綻する日本企業には、共通して「サイレントキラー」という存在を社内に見出すことができる―そう指摘するのは『衰退の法則―日本企業を蝕むサイレントキラーの正体』(東洋経済新報社)の著者であり、日本人材機構代表取締役社長の小城武彦氏です。小城氏の著書、主張をもとに日本企業に潜む「サイレントキラー」「隠れた殺し屋」の正体を暴いていきます。
『衰退の法則』は、「YOMIURI ONLINE」における柳川範之(経済学者・東京大学大学院経済学研究科・経済学部教授)の書評にあるように、その経験知を投げ捨てて「客観性を担保したいという意図から著者自身の経験は分析対象から外され、計87人、121時間に及ぶインタビューを実施して、多くの企業の内情に鋭く迫っている」ことから渾身の一冊であることが伺えます。
レビュアーの柳川氏は、「社内調整能力や幹部の意向を忖度する能力に長たけたミドルが出世し、経営の意思決定も、波風を立てない予定調和的な色彩が強い。こういう企業は、平時には問題がないのだが、事業環境が激変する有事になると問題が顕在化し、衰退への道をたどってしまう」と本書の主張を端的にまとめています。
柳川氏のレビューとほぼ同様の内容になりますが、ここが小城氏の一番伝えたい点なのだろうと思います。
さらに言えば、「個々人にはまったく悪気はなく、一生懸命にサイクルを回していく。そして環境変化が起きると、この構造がサイレントキラーとなってしまう」ということです。
また、「それと雑談のテーマ。昼飯や夜の飲み会、たばこルームで、ダメな会社はほとんど人事の話をしてますね。社内の人間関係とか。いい会社は顧客や競合、市場、製品の話などをしています」とも。
よって、悪循環に歯止めをかけるためには人事部門に牽制機能を発揮させる、つまり人事部が一人ひとりの客観的データをもとにちゃんとした人事管理をおこなって、「有力者が子飼いを一本釣りで引き上げ」なんてことをさせないようにすることです。
「現場・現実を重視し、事実に基づく議論を尊重する規範」の有無が、うまくいっている企業と、そうでない企業の違いであると先述の柳川氏は記述しています。ということで、みなさんの会社はいかがですか。ヤバい状態に陥ってはいませんか。
忖度する能力に長けたミドルが出世する構造
小城氏は、通商産業省、カルチュア・コンビニエンス・クラブを経て、カネボウの代表執行役社長、丸善代表取締役社長を務め、企業再生に携わってきました。現場をよく知る小城氏の企業を見る目には信頼が置けます。『衰退の法則』は、「YOMIURI ONLINE」における柳川範之(経済学者・東京大学大学院経済学研究科・経済学部教授)の書評にあるように、その経験知を投げ捨てて「客観性を担保したいという意図から著者自身の経験は分析対象から外され、計87人、121時間に及ぶインタビューを実施して、多くの企業の内情に鋭く迫っている」ことから渾身の一冊であることが伺えます。
レビュアーの柳川氏は、「社内調整能力や幹部の意向を忖度する能力に長たけたミドルが出世し、経営の意思決定も、波風を立てない予定調和的な色彩が強い。こういう企業は、平時には問題がないのだが、事業環境が激変する有事になると問題が顕在化し、衰退への道をたどってしまう」と本書の主張を端的にまとめています。
非オーナー系企業が陥る衰退の構造がサイレントキラーとなる!?
「東洋経済ONLINE」における、冨山和彦氏(IGPI代表取締役)と小城氏の対談では、「たとえば、非オーナー系企業が陥る衰退のパターンを見ると、経営陣の意思決定プロセスが予定調和的で、ガチンコの議論を好まない。ミドルはそれに資する妥協的な社内調整に励みます。いわゆる『忖度』と社内調整を行い、派閥に所属し、出すぎなくて気が利く人が出世する。偉くなる人は力のある人が一本釣りするのですが、そうやって出来上がった経営陣は、社内政治には強い一方で、残念ながら経営リテラシーや実務能力が低い。この衰退惹起サイクルがぐるぐると回るのです」と小城氏は述べています。柳川氏のレビューとほぼ同様の内容になりますが、ここが小城氏の一番伝えたい点なのだろうと思います。
さらに言えば、「個々人にはまったく悪気はなく、一生懸命にサイクルを回していく。そして環境変化が起きると、この構造がサイレントキラーとなってしまう」ということです。
自分の会社に潜むサイレントキラーを見つけるには?
先述した「東洋経済ONLINE」の別の記事になりますが、「潰れる会社に必ずいる『静かな殺し屋』の正体 忖度できる便利な人材は危ない」において小城氏は、「自分の会社にサイレントキラーが潜んでいないかどうか、どの辺に注目したらいいですか?」という質問に対して、「まずはどんな人が偉くなっているか。忖度するのが上手、派閥・学閥・保守本流に属してる、気が利くだけ、なんてヤツばかり偉くなってる会社はヤバイでしょう」と述べています。また、「それと雑談のテーマ。昼飯や夜の飲み会、たばこルームで、ダメな会社はほとんど人事の話をしてますね。社内の人間関係とか。いい会社は顧客や競合、市場、製品の話などをしています」とも。
よって、悪循環に歯止めをかけるためには人事部門に牽制機能を発揮させる、つまり人事部が一人ひとりの客観的データをもとにちゃんとした人事管理をおこなって、「有力者が子飼いを一本釣りで引き上げ」なんてことをさせないようにすることです。
「現場・現実を重視し、事実に基づく議論を尊重する規範」の有無が、うまくいっている企業と、そうでない企業の違いであると先述の柳川氏は記述しています。ということで、みなさんの会社はいかがですか。ヤバい状態に陥ってはいませんか。
<参考文献・参考サイト>
・『衰退の法則―日本企業を蝕むサイレントキラーの正体』(小城武彦著、東洋経済新報社)
・YOMIURI ONLINE:『衰退の法則』 小城武彦著
http://www.yomiuri.co.jp/life/book/review/20170807-OYT8T50059.html
・東洋経済ONLINE:静かに企業を殺す「サイレントキラー」の恐怖
http://toyokeizai.net/articles/-/188339?page=2
・東洋経済ONLINE:潰れる会社に必ずいる「静かな殺し屋」の正体
http://toyokeizai.net/articles/-/179756?page=3
・『衰退の法則―日本企業を蝕むサイレントキラーの正体』(小城武彦著、東洋経済新報社)
・YOMIURI ONLINE:『衰退の法則』 小城武彦著
http://www.yomiuri.co.jp/life/book/review/20170807-OYT8T50059.html
・東洋経済ONLINE:静かに企業を殺す「サイレントキラー」の恐怖
http://toyokeizai.net/articles/-/188339?page=2
・東洋経済ONLINE:潰れる会社に必ずいる「静かな殺し屋」の正体
http://toyokeizai.net/articles/-/179756?page=3
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
物知りもいいけど知的な教養人も“あり”だと思います。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。
『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
日本企業が世界のビジネスに乗り遅れた要因はオウンゴール
内側から見たアメリカと日本(6)日本企業の敗因は二つのオウンゴール
日本企業が世界のビジネスに乗り遅れた主な要因として、二つのオウンゴールを挙げる島田氏。その一つとして台湾のモリス・チャン氏によるTSMC立ち上げの話を取り上げるが、日本はその動きに興味を示さず、かつて世界を席巻して...
収録日:2025/09/02
追加日:2025/11/25
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
「歴史を探索していく」とは、どういうことなのだろうか。また、「歴史を活かしていく」とはどういうことなのだろうか。歴史作家の中村彰彦氏に、歴史を探り、活かしていく方法論を、具体的に教えてもらう本講義。第一話は、歴...
収録日:2025/04/26
追加日:2025/11/14
雄大で雄渾な生命の全体像…その中で点滅する個々の生命
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(5)『秘蔵宝鑰』が示す非二元論的世界
全ては光だと説く空海が、なぜその著書『秘蔵宝鑰』で、「死に死に死に死んで死の終りに冥(くら)し」と書いたのか。『秘蔵宝鑰』については、以前のテンミニッツ・アカデミー講義でも解説したが、そこから半年かけてこの書を...
収録日:2025/03/03
追加日:2025/11/26
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
国際社会における中国の動きに注目が集まっている。新冷戦ともいわれる米中摩擦が激化する中、2021年7月に中国共産党は創立100周年を迎えた。毛沢東以来、初めて「思想」という言葉を党規約に盛り込んだ習近平。彼が唱える「中...
収録日:2021/07/07
追加日:2021/09/07
熟睡のために――認知行動療法とポジティブ・ルーティーン
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
「熟睡とは健康な睡眠」だと西野氏はいうが、健康な睡眠のためには具体的にどうすればいいのか。睡眠とは壊れやすいもので、睡眠に影響を与える環境要因、内面的要因、身体的要因など、さまざまな要因を取り除いていくことが大...
収録日:2025/03/05
追加日:2025/11/23


