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DATE/ 2018.01.25

「好きなこと」を仕事にすべきなのか?

 職業選択の際、多くの人が「好きなことを仕事にするか・しないか」で悩まれるのではないでしょうか。好きなことを仕事にできれば楽しみや喜びが増す反面、現実とのギャップや収入面の不安など、違う問題が現れてくるのかもしれません。

 今回は20~50代のビジネスパーソンに、「好きなことを仕事にすべきか?」をアンケートで伺いました。その結果をまとめて、5つの視点からご紹介します。

「好き」と「仕事」をめぐる5つの視点

1.好きなことを仕事にする?それともしない?

・好きなことを仕事にした方が良いと思います。ただし「好き」は一つではないと思います。就活の際に自分の好きや興味のある分野を職種や業種に当てはめて、いろんな視点から今の職業選択をしました。(41歳男性)
・10年勤続して、「好き」とまではいかなくとも興味がある分野にしないと続かない気がします。一方で、「食える職業」か否かが重要で、就活時というより学生時代の文理選択の頃から、好きなことより安定を考えていたように思います。後悔はしていません。どんなことも続けると面白くなったりしますよ。 (38歳男性)

2.好きなことを仕事に!良かった点・良くなかった点

・自分が好きなことを仕事にしたので、内容が理解しやすく早期のスキルアップが見込める点は良いと思っています。ただその反面、仕事となると多くの場合、利益が伴うため、その分野に対して深く掘り下げる必要があり、好きなことの嫌な部分も見えてきてしまうという、うれしくない面もあります。(40歳女性)
・好きなことを仕事にすることができれば、自主的に一所懸命できるので良いのではないでしょうか。どうせ働かなくてはいけないのであればこそ、好きなことに関われること、好きなことのそばで働けることは幸せなことだと思います。他方、好きでないことを仕事にした場合、距離を置いて取り組めるという良さがあると思います。(57歳女性)

3.仕事にはモチベーションが重要?仕事と趣味は割り切りたい?

定年まで同じ仕事をするならモチベーションはある方が良いと思います。そして、長く働くには待遇が大事で、人間関係が重要です。私は好きな仕事についたわけではなく、仕事と趣味は割りきりたいと思っています。ただし、職種のイメージと実務は違うものですので、なんでもやってみないとわからないところがあると思います。(37歳男性)
・モチベーションは大事だと思います。ただし高すぎると自分を追い込んで辛いので、ほどほどが良いのではないでしょうか。以前の職場はお金がモチベーションになる方が多いかったのですが、私生活とのバランスや生活スタイルへの満足度などが重要な人も多いと思います。また仕事と趣味は割り切れた方が身体に良い働き方だと思います。(29歳女性)

4.仕事は対価と時間のバランスが大切?それぞれの「好き」の満たし方

・仕事は嫌いでなければ良いのではないかと思っています。もちろん「好きなことが仕事」でも良いのだけど、趣味が他にあって趣味が可能なだけの時間と稼ぎがあるなら、仕事は好きなものと違っていても良いかなと。ただ、趣味の時間が取れないくらい忙しい仕事は、好きじゃなきゃやれないかもしれません。(38歳女性)
・働く対価に金銭だけでなく「やりがい」を求めてきたので、「好き」を重視しているのかもしれません。結果「食えている」とは言い難い状況のため、たとえば若者に「好きなことを仕事にしろ」とは言えないし言いたくないですが、仕事でも家庭でも趣味でも、人生の中になにか「楽しみ」があれば良いのではないかと思っています。(39歳女性)

5.「好き」だけでは終わらせない!仕事で「好き」の先を考える

・最初から好きかどうかよりも、続けていくうちに仕事として好きになれる可能性があるのかということや、仕事として利益やロジックを見いだせるのかというようなことが大切だと考えています。その観点で今の職に就き、充実して職務に取り組んでいます。(35歳男性)
・「好き」な仕事かどうかは重要ではなく、仕事に就いてからどれだけ没入できるかが大事だと思います。また、自分や社会が見えていない頃に「好き」だけで問題意識なく仕事を選ぶのは危険。困難からの逃避、継続や努力から逃げる口実を与え、その先にある「天職」を逃すことになると思います。(46歳女性)

「好き」と「仕事」を「出口」から考える

 いかがでしたでしょうか?好きなことと仕事の関係には、モチベーションの維持や生活とのバランス、対価や報酬と費やす時間の関係、定年制やライフサイクルなど、さまざまな要因が混ざっていることが見えてきました。
 
 ミドリムシで上場したバイオベンチャー「ユーグレナ」社長の出雲充氏は、「起業で失敗したらどうするのって皆さんからよく聞かれますが、入り口から失敗を考えてはいないんですよ。(中略)好きなことがある。これを潰さない社会にしていくというのが、本当にイノベーションを生み出しやすくする最大のポイント」と発言しています。また、将棋の佐藤天彦名人は、「将棋が好きだ、というのが根底にないと、最後のところで頑張れない。打算はあってもいいんですけど、それはなんていうんですか、最後、持ちこたえる部分にはきかない」と、インタビューに答えています。
 
 一度きりの人生です。結局は自分の考え方次第かもしれませんが、人生の最後により大きな結果や満足を得たり、後悔したりしないためにも、仕事について今一度、「自分の好きや興味を仕事に生かしてより良い結果を出せないか」「今の仕事を通してその先になにかを見いだせるのか」というような、「出口」から考察してみても良いのではないでしょうか。

<参考サイト>
・HRナビ:「創業から2年半、ずっと月給10万円だった」ミドリムシを売る社長が諦めなかった理由
http://hrnabi.com/2015/08/05/8888/
・GQ:将棋が好きだ、というのが根底にないと、最後のところで頑張れない──淡々と王道を行く「ゆとり世代」名人、佐藤天彦
https://gqjapan.jp/culture/celebrity/moty2017-amahiko-sato/page/2
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