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近い将来、アフリカの子どもたちが世界の主役となっていく
「アフリカの子どもたちは、近い将来の世界の動向を左右するきわめて重要な存在である」と言われたら、多くの日本人はかなり驚くのではないでしょうか。その背景には、アフリカの子どもたちに対する「後れた国ぐにの貧しい子どもたち」といったステレオタイプのイメージがあるからです。
『子どもたちの生きるアフリカ 伝統と開発がせめぎあう大地で』(清水貴夫・亀井伸孝編、昭和堂)は、そんな偏ったイメージを解きほぐしてくれます。編著者の亀井伸孝氏は「彼ら彼女らの今の姿を捉えて発信し、これからの世界とアフリカを読み解く手がかりとしたい」というメッセージを前書きで述べています。
亀井氏は、愛知県立大学外国語学部国際関係学科教授で、文化人類学のとくにアフリカ地域の研究が専門。これまで訪れた国はアフリカ10カ国をはじめ、世界30カ国以上で、英語とフランス語、カメルーンやコンゴなどのバカ語、それから日本手話や西・中部アフリカの諸手話言語を生活言語、研究の作業言語として使うことができる、まさにコスモポリタンです。
調査エリアは「カメルーン共和国の東部州、コンゴ共和国との国境に近いンギリリ村」です。亀井氏は1996年から1998年にかけて、この地で最初のアフリカ長期調査を行いました。そして、2012年に再訪し、「かつての子どもたち」との再会、「今の森の子どもたち」との出会いを通じて発見したことを今回、論文としてまとめました。
「かつての子どもたち」については、結論として、「森の環境で遊びながら育ったかつての少年と少女は、多くの場合、同じ地域またはやや遠方の似通った森林環境の中で、狩猟と採集を営み、そして焼畑農耕をあわせて行う、この森の資源を使いこなすバカの大人たちになっていた」と記しています。
とりわけ、学校教育の浸透は見逃せません。公立小学校を卒業すると、農耕民の子どもたちは、ほぼ全員が中等学校に進学します。ンギリリには中等学校が存在せず、約二〇キロ離れたモルンドゥという町まで通わなければならないのですが、1997年の調査では、その中等学校に通っていたバカの生徒は、わずか一人のことです。
それが、最近の調査では、中等学校に「少なくとも一二人のバカ出自の生徒が在籍した」ことが分かりました。バカの社会にとって、「学校に通うこと」は特別なことではなくなったということです。
ただし、「自然環境と生業文化のいずれかが大きな変化に見舞われた場合、この森の子ども文化の強靭さは失われ、もろく崩れ去ってしまうかもしれない」、また「急速で強引な変化は、子ども文化の消失を招き、多くの資源と機会を子どもたちから奪うことになりかねなない」とも指摘しています。
いずれにしても、日本や先進国とは正反対に、アフリカの人口は増加し、世界人口に占める割合が拡大していくことは間違いありません。近い将来、世界の主役となっていくアフリカの人たちが、今どのような環境で学び育ちつつあるかを知ることは、相互理解のために欠かせないことです。世界の未来を映し続ける存在として彼らの活動から目が離せません。
『子どもたちの生きるアフリカ 伝統と開発がせめぎあう大地で』(清水貴夫・亀井伸孝編、昭和堂)は、そんな偏ったイメージを解きほぐしてくれます。編著者の亀井伸孝氏は「彼ら彼女らの今の姿を捉えて発信し、これからの世界とアフリカを読み解く手がかりとしたい」というメッセージを前書きで述べています。
亀井氏は、愛知県立大学外国語学部国際関係学科教授で、文化人類学のとくにアフリカ地域の研究が専門。これまで訪れた国はアフリカ10カ国をはじめ、世界30カ国以上で、英語とフランス語、カメルーンやコンゴなどのバカ語、それから日本手話や西・中部アフリカの諸手話言語を生活言語、研究の作業言語として使うことができる、まさにコスモポリタンです。
ンギリリ村の「かつての子どもたち」
複雑かつ多様なアフリカを一括りで語ることはできません。そのため、本書は乾燥地、サバンナ、熱帯雨林、水辺、都市という5つの環境に分け、アフリカ55カ国のうち、14カ国にスポットを当て、17の事例を紹介しています。コラムでは、そのすべてを取り上げることはできないので、先述の亀井氏の論文を参考に「アフリカ中部のコンゴ盆地熱帯雨林に生活する、狩猟採集民バカの子どもたち」の世界をご案内します。調査エリアは「カメルーン共和国の東部州、コンゴ共和国との国境に近いンギリリ村」です。亀井氏は1996年から1998年にかけて、この地で最初のアフリカ長期調査を行いました。そして、2012年に再訪し、「かつての子どもたち」との再会、「今の森の子どもたち」との出会いを通じて発見したことを今回、論文としてまとめました。
「かつての子どもたち」については、結論として、「森の環境で遊びながら育ったかつての少年と少女は、多くの場合、同じ地域またはやや遠方の似通った森林環境の中で、狩猟と採集を営み、そして焼畑農耕をあわせて行う、この森の資源を使いこなすバカの大人たちになっていた」と記しています。
「学校に通うこと」が特別なことではなくなった
ただし、「企業での賃金労働、バイクタクシーの運転手、教員など、他の職種にも少し選択肢が広がっていることにも留意しておきたい」とも補足しています。「バカの人びとは周囲から孤立した狩猟採集社会ではなく、近隣の農耕民をはじめ、都市文化、貨幣経済、学校制度などと常に接しつつ、一部の文化要素を取り込みながら、今日の姿を示している」というわけです。とりわけ、学校教育の浸透は見逃せません。公立小学校を卒業すると、農耕民の子どもたちは、ほぼ全員が中等学校に進学します。ンギリリには中等学校が存在せず、約二〇キロ離れたモルンドゥという町まで通わなければならないのですが、1997年の調査では、その中等学校に通っていたバカの生徒は、わずか一人のことです。
それが、最近の調査では、中等学校に「少なくとも一二人のバカ出自の生徒が在籍した」ことが分かりました。バカの社会にとって、「学校に通うこと」は特別なことではなくなったということです。
急速で強引な変化は、資源と機会を子どもたちから奪う
学校教育が急激に浸透してく中、「かつての子どもたち」から「今の森の子どもたち」へと「世代が変わっても、子どもたちの文化には大きな変化がなかった」のだそうです。それに対して、亀井氏は「森の中で育まれる子ども文化の一種の強靭さを見ることができたように思われる」と述べています。ただし、「自然環境と生業文化のいずれかが大きな変化に見舞われた場合、この森の子ども文化の強靭さは失われ、もろく崩れ去ってしまうかもしれない」、また「急速で強引な変化は、子ども文化の消失を招き、多くの資源と機会を子どもたちから奪うことになりかねなない」とも指摘しています。
アフリカのこどもたちの環境を知ることは相互理解のために欠かせない
テレビ、ラジオ、そしてインターネットと携帯電話の普及によって、世界中の情報がわたしたちにもたらされています。また、これまで述べてきたように、世界中に学校ができたことで、子どもたちは伝統的な文化を学び、それを受け継ぎながら新たな世界とつながり、それぞれの生き方の選択肢を飛躍的に増やしつつあるといいます。そんな中、熱帯雨林エリアにおいては、携帯電話をはじめとするさまざまな電子機器等に用いられるレアメタルの産地としても知られており、これがどんな変化を引き起こすのかも注目に値します。いずれにしても、日本や先進国とは正反対に、アフリカの人口は増加し、世界人口に占める割合が拡大していくことは間違いありません。近い将来、世界の主役となっていくアフリカの人たちが、今どのような環境で学び育ちつつあるかを知ることは、相互理解のために欠かせないことです。世界の未来を映し続ける存在として彼らの活動から目が離せません。
<参考文献>
『子どもたちの生きるアフリカ 伝統と開発がせめぎあう大地で』(清水貴夫・亀井伸孝編、昭和堂)
http://www.showado-kyoto.jp/book/b310341.html
<関連サイト>
亀井伸孝の研究室(編著者ホームページ)
http://kamei.aacore.jp/index-j.html
『子どもたちの生きるアフリカ 伝統と開発がせめぎあう大地で』(清水貴夫・亀井伸孝編、昭和堂)
http://www.showado-kyoto.jp/book/b310341.html
<関連サイト>
亀井伸孝の研究室(編著者ホームページ)
http://kamei.aacore.jp/index-j.html
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