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DATE/ 2018.02.12

意外に知らない?レアな電車の発車メロディー

駅の発車メロディーに耳を澄ませば

 電車が発車するとき、駅のホームに流れる10秒ほどのメロディーを「発車メロディー」、または「駅メロディー」といいます。鉄道ファンといえば電車の写真撮影を楽しむ「撮り鉄」や、電車での旅を楽しむ「乗り鉄」などが有名ですが、中には電車関連の音を楽しむ「音鉄」という人々もいて、音鉄の間では発車メロディーの鑑賞がとても人気です。

 「発車メロディーって鑑賞するほどの特徴があるの?」と思う方もいるかもしれませんが、注意して聴くといろいろな種類があり、ひとつの駅でもホームごとに使い分けていることがよくあります。その駅にゆかりのある「ご当地メロディー」や期間限定の「限定メロディー」などもあり、実は奥深いのです。

 現在では地形・地層マニアとして定着したタレントのタモリさんは、鉄道マニアとしてもかなりの年季の持ち主。そんなタモリさんの冠番組で、深夜の長寿番組である「タモリ倶楽部」でも2013年8月に発車メロディーが取り上げられました。実際に発車メロディーを制作している音楽制作会社・株式会社スイッチをタモリさん一行が訪れ、発車メロディーが生み出される現場を取材しています。

 発車メロディーはこのスイッチ以外にも、ユニペックスや櫻井音楽工房など複数の音楽制作会社でつくられており、楽曲数はスイッチの作品だけでも過去に使用されたものを含めると200曲を超えます。違いがわかればどんどんはまって当然の世界といえるでしょう。

山手線で屈指のレアメロディーとは

 発車メロディーのはじまりには諸説ありますが、現在のかたちの発車メロディーが最初に導入されたのは1989年3月、JR山手線の新宿駅と渋谷駅といわれます。それまでは「ジリリリ」と鳴る発車ベルが使われていましたが、90年代の間にほとんどの駅が発車メロディーへと切り替えました。

 現在ではその駅にゆかりのある専用の発車メロディーを使用している駅も多くあります。発車メロディー発祥の路線である山手線なら、高田馬場駅の「鉄腕アトム」が有名。原曲は「漫画の神様」と呼ばれた手塚治虫の代表作「鉄腕アトム」がアニメシリーズとして放送されたときの主題歌です。主人公のロボット・アトムが高田馬場にある科学省で誕生した設定であることと、アニメを制作した「手塚プロダクション」が高田馬場にあることにちなんで採用されました。

 このほかにも恵比寿駅では、かつて恵比寿に工場を持っていた現在のサッポロビールの製品・ヱビスビールのCMに採用された、映画「第三の男」のテーマ曲を使用しており、独自の発車メロディーとして親しまれています。しかし、これらよりさらにレアな発車メロディーがあるのです。

 それは上野駅の1~4番線などで聴ける「発車ベル」です。かつての主流だった発車ベルが現在も残っているのは、山手線では上野駅と新大久保駅だけ。これから発車メロディーに切り替わる可能性もあるので、生で聴けるのは今のうちかもしれません。

山手線以外にも個性的な楽曲がたくさん

 もちろん、山手線以外にも独自の発車メロディーを使用している駅はたくさんあります。たとえば中央線の三鷹駅で流れるのは童謡「めだかの学校」。原曲を作曲した中田喜直が三鷹で作曲活動をしていたことにちなみます。発車メロディーは原曲を3パートに分けて全体を聴けるよう配慮されており、ホームごとにアレンジが違うというこだわりようです。

 京葉線の舞浜駅も個性的な発車メロディーを持つ駅の代表格でしょう。東京ディズニーリゾートの最寄駅であるため、「Zip-A-Dee-Doo-Dah」や「It’s a small world」などの園内アトラクションに使用されている曲を発車メロディーにしています。スペシャルイベントにちなんだ曲を限定メロディーに採用することもあり、映画「アナと雪の女王」のイベントが行われた際は、主題歌の「Let It Go」をイベント期間内限定で流しました。

 JR以外でも、東京メトロ銀座線の銀座駅では「銀座カンカン娘」、京浜急行電鉄の横浜駅では「ブルーライトヨコハマ」など、駅にちなんだご当地発車メロディーは数多くあります。日常的に使う駅でも旅先で訪れた駅でも、発車メロディーに注意して耳を傾けてみると新鮮な驚きがあるかもしれません。
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今井むつみ
一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事 慶應義塾大学名誉教授