社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
「紙の新聞」が消滅する日は近い?
国内の新聞発行部数は、かなりハイペースに減少を続けています。日本新聞協会が公表している2017年10月の新聞発行部数は、全国合計で4212万8189部。1年前に比べ、部数にして114万7958部、2.7%のマイナスになります。
2007年までは1世帯あたり1部以上が発行されていましたが、翌年に0.98と割り込んで以来下がる一方で、2017年には1世帯あたり0.75部。つまり、一般家庭の4軒に1軒は新聞を読んでいない家という勘定になります。90年代頃に「新聞は2紙以上読み比べないと、本当の動向が分からない」などと言われていたのがウソのようです。
新聞人口激減の背景に、インターネットやスマートフォンの普及があるのは間違いありません。毎月講読料を支払い、毎朝ポストに新聞を取りに行かなくても、スマホの画面には24時間無料で、ニュースが流れているからです。
ここ10年だけを見ても、南日本新聞・琉球新報・沖縄タイムス・北日本新聞・岩手日報・山形新聞・岐阜新聞・中国新聞と地方紙を中心に、夕刊の廃止がかなり進行してきました。部数の落ち込みから「夕刊」のかたちを維持するメリットがなくなってきたのです。
全国紙でも、毎日新聞は北海道、山梨と滋賀の一部で、朝日新聞は大分、佐賀、山梨と福岡の一部で夕刊を廃止するなどの動きが進んでいます。この流れに先鞭をつけたのは産経新聞で、同社では2002年4月に東京本社管内の夕刊を廃止以来、大阪本社版のみの発行としています。
朝刊のみに限って言えば、2000年比で6%程度の減少にとどまっていますが、人口減少や若年層のライフスタイルとして「新聞を読む」経験がないことなどを考えると、今後も減少に歯止めがかかるどころか、どんどん大きくなることが予想されます。
紙媒体の発行部数は前年(2013年)と比較して6.4%増、5年前との比較では16.5%増えていますが、これはインドやほかのアジア諸国での伸びが大きく貢献しているため。欧州、北米やオーストラリアおよびオセアニアでは深刻な「紙の新聞離れ」が進行しています。
2017年6月にはイタリア・トリノに新聞業界の首脳が集まり、「新聞の未来」(伊スタンパ紙主催)と題したシンポジウムを行いました。米ニューヨーク・タイムズCEOのマーク・トンプソン氏は、「紙からの収入が仮にゼロになっても利益が出るよう、デジタル購読を核としたビジネスモデルを構築しようとしている」と、紙のなくなる可能性を示唆。ワシントン・ポストのジェフ・ベゾス社主は2025年の見通しについて、「友人の家に行き、紙の新聞が置いてあれば『すごい!試していいか』と触りたくなるような希少品になるだろう」と、皮肉なコメントを寄せています。
技術革新の可能性について、英フィナンシャル・タイムズのライオネル・バーバー編集長は「人工知能(AI)に記事を書かせる例も出てくるだろうが、ロボットが(名物コラムニストの)マーティン・ウルフの代わりを務めることはできない」と言及。ニュースが「スロー&ファスト」に二分化されていく可能性を示唆しました。
さらにSNS上でのフェイクニュースの問題について、伊スタンパのジョン・エルカン社主は「広告主は自社の広告が虚偽の記事に表示されることを嫌い、逆に信頼できるニュースの価値が再認識されている」と述べるなど、新聞の未来が消滅に向かうには、まだまだいくつもの「新聞人」の壁があることが確認された会議でした。
2007年までは1世帯あたり1部以上が発行されていましたが、翌年に0.98と割り込んで以来下がる一方で、2017年には1世帯あたり0.75部。つまり、一般家庭の4軒に1軒は新聞を読んでいない家という勘定になります。90年代頃に「新聞は2紙以上読み比べないと、本当の動向が分からない」などと言われていたのがウソのようです。
新聞人口激減の背景に、インターネットやスマートフォンの普及があるのは間違いありません。毎月講読料を支払い、毎朝ポストに新聞を取りに行かなくても、スマホの画面には24時間無料で、ニュースが流れているからです。
相次ぐ「夕刊」撤退は、デフレのおまけ?
とくにスポーツ紙、夕刊の下げ幅は大きく、2000年と比べると両者ともほぼ半減しています。これらは、駅やコンビニなどでの販売が中心。主な購読者層であるサラリーマンの「お父さんたち」が、デフレでお小遣いを惜しむようになったからとも言われますが、電車内の暇つぶしはスマホで十分になったという見方もできます。ここ10年だけを見ても、南日本新聞・琉球新報・沖縄タイムス・北日本新聞・岩手日報・山形新聞・岐阜新聞・中国新聞と地方紙を中心に、夕刊の廃止がかなり進行してきました。部数の落ち込みから「夕刊」のかたちを維持するメリットがなくなってきたのです。
全国紙でも、毎日新聞は北海道、山梨と滋賀の一部で、朝日新聞は大分、佐賀、山梨と福岡の一部で夕刊を廃止するなどの動きが進んでいます。この流れに先鞭をつけたのは産経新聞で、同社では2002年4月に東京本社管内の夕刊を廃止以来、大阪本社版のみの発行としています。
朝刊のみに限って言えば、2000年比で6%程度の減少にとどまっていますが、人口減少や若年層のライフスタイルとして「新聞を読む」経験がないことなどを考えると、今後も減少に歯止めがかかるどころか、どんどん大きくなることが予想されます。
世界の「新聞の未来」は、どうなる?
世界のニュース業界に目を向けると、WAN-IFRAが発行する「世界の新聞トレンド 2015年版」(実際の数字は2014年のもの)によると、紙の新聞を読んでいる人は27億人。電子版をデスクトップのパソコンで読む人は約7億7000万人と言います。紙媒体の発行部数は前年(2013年)と比較して6.4%増、5年前との比較では16.5%増えていますが、これはインドやほかのアジア諸国での伸びが大きく貢献しているため。欧州、北米やオーストラリアおよびオセアニアでは深刻な「紙の新聞離れ」が進行しています。
2017年6月にはイタリア・トリノに新聞業界の首脳が集まり、「新聞の未来」(伊スタンパ紙主催)と題したシンポジウムを行いました。米ニューヨーク・タイムズCEOのマーク・トンプソン氏は、「紙からの収入が仮にゼロになっても利益が出るよう、デジタル購読を核としたビジネスモデルを構築しようとしている」と、紙のなくなる可能性を示唆。ワシントン・ポストのジェフ・ベゾス社主は2025年の見通しについて、「友人の家に行き、紙の新聞が置いてあれば『すごい!試していいか』と触りたくなるような希少品になるだろう」と、皮肉なコメントを寄せています。
技術革新の可能性について、英フィナンシャル・タイムズのライオネル・バーバー編集長は「人工知能(AI)に記事を書かせる例も出てくるだろうが、ロボットが(名物コラムニストの)マーティン・ウルフの代わりを務めることはできない」と言及。ニュースが「スロー&ファスト」に二分化されていく可能性を示唆しました。
さらにSNS上でのフェイクニュースの問題について、伊スタンパのジョン・エルカン社主は「広告主は自社の広告が虚偽の記事に表示されることを嫌い、逆に信頼できるニュースの価値が再認識されている」と述べるなど、新聞の未来が消滅に向かうには、まだまだいくつもの「新聞人」の壁があることが確認された会議でした。
<参考サイト>
・一般社団法人日本新聞協会:新聞の発行部数と世帯数の推移
http://www.pressnet.or.jp/data/circulation/circulation01.php
・日本経済新聞:新聞に未来はあるか 世界のメディア重鎮らが激論
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO18315600Q7A630C1000000/
・一般社団法人日本新聞協会:新聞の発行部数と世帯数の推移
http://www.pressnet.or.jp/data/circulation/circulation01.php
・日本経済新聞:新聞に未来はあるか 世界のメディア重鎮らが激論
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO18315600Q7A630C1000000/
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
物知りもいいけど知的な教養人も“あり”だと思います。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,500本以上。
『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
東大生YouTuber!?『三四郎』に描かれたメンタルヘルス問題
いま夏目漱石の前期三部作を読む(3)『三四郎』の時代背景と深い陰影
夏目漱石の前期三部作の最初の作品となる『三四郎』は、九州から上京した三四郎の視点を通じて明治末期の知識人の姿を描いている。特に東京帝大の学生たちの姿や、彼らが直面する不条理を鋭く捉え、知的に生きることの困難さを...
収録日:2024/12/02
追加日:2025/03/16
国民医療費の膨張と現役世代の巨額の「負担」
緊急提言・社会保障改革(1)国民負担の軽減は実現するか
令和7年度予算をめぐる国会審議では、国民民主党が提起した「103万円の壁」問題と、日本維新の会が提起した「高校授業料無償化」に大きな注目が集まった。結果的に、少数野党となった自民党・公明党が維新の会と三党合意を結び...
収録日:2025/03/06
追加日:2025/03/15
米国ではどのようにお金が回っているか…日米比較で考える
お金の回し方…日本の死蔵マネー活用法(4)資産循環の日米比較
日本の経済成長が停滞する一因として、お金の「死蔵」が挙げられる。その背景にある資金偏在の問題とは何か。財政支出の影響や日米のマネー活用の違いを検証し、日本の資産循環モデルの課題と改善策を考える。(全6話中第4話)
収録日:2024/12/04
追加日:2025/03/15
長寿雇用戦略…いくつになっても働きたい人が働ける社会へ
第2の人生を明るくする労働市場改革(6)長寿雇用戦略と健全な危機感
労働市場を流動化させることが急務である日本だが、企業や個人はどのように対応していくべきなのだろうか。労働者の生産性に応じた給与システムの導入、スキルアップによる能力向上が求められる中、政策としては非常に重要なの...
収録日:2024/08/03
追加日:2025/03/14
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
日進月歩の進化を遂げている生成AIは、私たちの生活や仕事の欠かせないパートナーになりつつある。企業における生成AI技術の利用に焦点をあてる今シリーズ。まずは世界的な生成AIの導入事情から、日本の現在地を確認しよう。(...
収録日:2024/11/05
追加日:2024/12/24