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DATE/ 2018.05.26

【仕事と年収】介護職員(35歳男性)の場合

 これからますますその需要が増える「介護職員」。2018年5月に厚生労働省が発表した介護職員の需要推計によると、2025年度に必要となる介護職員は約245万人で、約34万人が不足する見通しだそうです。

 今回はそんな「介護職員」のリアルな年収と仕事について、お話をうかがいました。

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35歳「介護職員」の年収は…

 今回お話をうかがったのはこちらの方。

【年齢】35歳(男性)
【住まい】横浜市
【独身or既婚】既婚
【職業】介護職員

・経歴を教えてください。
 就職を考えた時に知り合いに介護の仕事を教えられました。ボランティアをして、人と笑いながら話して楽しみながら仕事が出来る事を知り、介護福祉士の専門学校に入学。卒業後、現在の介護老人保健施設で16年目になります。

・年収/月収/賞与を教えてください。


 年収480万/月収25万/賞与(年3回)87万

・貯蓄額はおいくらですか?
 ゼロ。

・給与体系や昇給について教えてください。
 基本給+各種手当+夜勤手当。

・年間休日は?
 108日+リフレッシュ休暇3日+有給(年間20日で現在40日ある)

仕事の内容は?残業はどれぐらい?

 仕事は主に利用者の身体介護を行います。食事・排泄・入浴はもちろん、精神的ケアや余暇活動の提供などを行います。それに加え、新人教育・外国人就労者の指導・実習生指導も行っています。また、外部での研究発表会への参加や、地域貢献の為に専門職としての知識技術の講師なども行います。

 残業時間は、平均15時間ですが、15時間のうち、給料に反映されるのは1~2時間分なので、ほぼサービス残業です。それ以外にも家で書類を作るなどをしていますが、残業時間には入れていません。その分を入れると…月40時間くらいになります。

この仕事の良い点は?

 介護はお年寄りの最期に関わる仕事です。怪我や病気、精神疾患や認知症などへの幅広い知識や技術を身につけることが出来ます。それは仕事だけでなく、自身の生活や身内の対応にも大いに役に立ち、仕事をしながら人としての成長が出来る面があります。

この仕事の悪い点は?

 介護の世界は、日進月歩で常に良い方法が生み出されていますが、働く職員は新しいことを取り入れにくいのが現状です。また、新しい事を取り入れて個々に成長をしたとしても、それが給料に直接反映されません。そのため、成長する必要性を考えない職員が多くいます。

 長く職場にいることで、昇給や介護保険改正による賃金アップはあります。しかし、利用者の数や介護報酬の上限は決められています。そのため、頑張った分だけ給料アップするということは望めません。

 また、人と人が関わる中で、必ず「優劣」をつける感情が生まれてしまいます。職員が利用者を弱者としてみて「介護してあげる」スタンスで接する状況が依然なくなりません。その結果、それが虐待に発展しニュースで大きく取り上げられ、その度に介護職に就きたいと考える人が減っています。介護はネガティブなことばかりメディアに取り上げられて、楽しさなどは取り上げてもらいにくい職種なのが、残念です。

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いかがでしたでしょうか?

 この35歳男性の年収は480万円。国税庁の民間給与実態統計調査によると、35~39歳男性の平均年収は512万円となっています。日本では、今後需要が増えていく介護職員の待遇について議論されることも多いですが、現状では、その実態は必ずしも良いとは言えないようです。

<参考サイト>
・国税庁HP「民間給与実態統計調査」より
https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/minkan2016/pdf/001.pdf
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