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DATE/ 2024.11.15

なぜ年を取ると、お酒に弱くなるのか?

 夏はキンキンに冷えたビール、冬は体を温める日本酒、と一年中楽しめるお酒。仕事を終えて家に帰ってからの晩酌を日々の楽しみにしている人も多いはず。

 けれど、年齢を重ねるごとにアルコールが飲めなくなった、翌日に残るようになったと感じることはありませんか。若いころは「これくらいなんてことなかったのに」と、翌朝の起床時に頭を抱えるということも。なぜ、年を取ると酒に弱くなるのでしょうか?

アルコール分解のメカニズムとは?

 アルコールが体内で分解されるメカニズムは次のようなものです。

 まず、体内に入ったアルコールは胃や腸から血液に混ざります。血液が肝臓を通過する際にアセトアルデヒドという有害物質に変わるため、頭がぼんやりしたり、人によっては頭痛や吐き気などをもよおします。そして、アセトアルデヒドは水と二酸化炭素に分解され、体外に排出されます。このメカニズムは、学生時代に体育や理科などの授業で教わったことがあるかもしれませんね。

 このアセトアルデヒドを分解する酵素をアルコール脱水素酵素(ALDH)といい、酵素を多く持っている人はアルコールを分解する力が強く、「酒に強い」となるのです。日本人は遺伝子的にこのALDHを持っている人口の割合が低く、欧米人に比べると酒に弱いと言われています。

 ちなみに近年の研究では、アルコールについて「飲めば強くなる」ということはないとされています。強くなったと感じるのは、アセトアルデヒドが体内で引き起こす不調に慣れたと感じるからだそうです。

年を取ると酒に弱くなる2つの理由

 では、なぜ加齢とともにアルコールに弱くなったと感じるのでしょうか?その理由の1つ目は、肝機能の低下です。アルコール分解力は30代をピークに、そこから右肩下がりとなります。肝臓がコレまで分解できていた量のアルコールでも、機能低下のため分解しづらくなり、「抜けが悪くなった」「翌日に残った」と感じるのです。

 2つ目の理由は、体内の水分量です。人間の体内の水分比率は、赤ちゃんのころは実に80%も水分が占めています。こちらも年齢とともに水分量が低下していき、成人男性では60%、高齢者は50%となるのです。年を取るとシワが多くなった、手がかさつくようになったと感じるのは、この水分量の低下が原因と考えられています。飲酒時は自然と血中アルコール量が増え、また飲酒は利尿作用もあるため、さらに体内から水分が抜けてしまい悪酔いしやすくなるのです。

二日酔いしないアルコールの嗜み方

 二日酔いを防止するために、何よりもまずは「若い頃と同じ量は飲めない」と考えを改めなくてはいけません。どれほどお酒が好きでも、体は加齢とともに少しずつ衰えていきます。とくに健康診断などで肝臓の数値が悪かった人は要注意です。その上で、二日酔いを緩和する飲み方はあるのでしょうか?

 二日酔いの症状といえば、頭痛やアルコールの臭いがする呼吸、ぼんやりする意識といったところでしょうか。実は、こうした翌日に残る飲酒の片鱗は、体内の水分量の低下にあると言われています。これを防ぐためには、水とアルコールを交互に飲んだり、度数の高いお酒の場合は水で割って飲むという工夫が必要です。また、飲酒後は低血糖になりやすいため、スポーツ飲料を飲むことも効果的と考えられています。

 体重や飲むアルコールの量にもよりますが、多量に摂取すると10時間近くアルコールが抜けないということもあります。翌日の予定なども考え、あまり深い時間までお酒を飲まず、早めにソフトドリンクに切り替えるということも方法の1つかもしれません。

飲めなくなったら「量より質」に切り替えを

 とはいえ、お酒が日々の楽しみだった人にとって、加齢によってアルコールを楽しめなくなるというのは淋しいですよね。お酒の進む季節になるとなおさらです。しかし、逆をいえば、飲めなくなった分「量より質」への切り替えのタイミングと考えることもできるということです。趣向を変えて、少し高めのお酒を嗜んでみてもいいかもしれませんね。

<参考サイト>
・NIKKEI STYLE:加齢で酒が弱くなるのはなぜ?医師が語る2つの理由
https://style.nikkei.com/article/DGXMZO22361490X11C17A0000000?channel=DF140920160927
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今井むつみ
一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事 慶應義塾大学名誉教授