社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
睡眠不足にはどんなリスクがあるのか?
睡眠不足には多くのリスクが潜んでおり、日本人は睡眠不足の人が多いといわれています。
2018年4月9日、心拍トレーニング製品の開発・販売するポラール・エレクトロ・ジャパンが自社製品のユーザーから得た600万の睡眠データを分析した調査結果を発表しました。
その結果は、日本人の男女別平均睡眠時間は、男性6時間30分、女性6時間40分で、28カ国中最短であり、「不眠大国」ともいわれる日本の新たなエビデンスともなるような結果でした。
今回は、「不眠大国」日本に潜む、睡眠不足リスクを取り上げてみます。
さらに、睡眠不足と関係が深い夜更かしは日本特有ともいわれる深刻な問題であり、日本小児保健協会による1歳から就学時前の7歳未満の幼児を対象にした『幼児健康度調査報告書』(2010年度調査)によると、最も悪かった2000年度より改善がみられるものの、やはり夜10時以降に眠る子どもたちが23%もいることがわかっています。
2016年12月1日『教育新聞』の記事では、睡眠不足や夜更かしは子どもたちの脳や体に大きなダメージを引き起こし、メンタルへも多大な影響を及ぼすことを指摘しています。その中で、とくにメンタルへの影響について鈴木氏は、「気持ちや情緒をコントロールする重要な脳内ホルモンのセロトニンが、夜更かしや不規則な生活によって出にくくなる」ためセロトニンが枯渇し、1)うつが発生、2)攻撃的になる、3)イライラすることなどの危険性を示唆しています。
2018年6月14日の『朝日新聞』では、認知症の発症リスクと就寝時刻の関係について、75歳未満では差はなかったが、75歳以上では午後9~11時に寝る人に比べて、午後11時以降に寝る人は認知症の発症リスクが1.83倍高い、つまり「夜更かしする75歳以上は認知症のリスクが高まる」とした、国立長寿医療研究センターなどの研究チームの調査結果を記事にしています。
なお、調査にあたった国立長寿医療研究センター予防老年学研究部の中窪翔氏は、「明確な理由は明らかではないが、体内時計の自然な流れに逆らうことが、影響を与えているのかもしれない」と述べています。
さらに恐ろしいことに、脳細胞にも甚大な悪影響を及ぼします。ペンシルベニア大学のマウス実験から「睡眠が不足するとニューロンが長期にわたり25%も減少する」ことがわかりました。さらにこの結果は人間にも影響があると考えられており、睡眠不足は「脳に永久に残る害を及ぼす」疑惑が浮上しているといいます。
そのうえで櫻井氏は、睡眠の果たす役割について、医学的にははっきりとわかっていない部分が多いとしながらも、「1)脳内の情報処理、2)脳の掃除、3)体の休息」の主に3つの役割が考えられており、「睡眠は、脳と体のメンテナンスの重要な役割を果たしている」と述べています。
さらに不眠を解消し快眠するための具体的方法として、1)体内時計を正常に戻すために朝は決まった時間に起きて太陽の光を浴びることが基本であり、2)逆に夜はあまり強い光をあびないようにすること。加えて、3)就寝時刻の3時間前からはスマートフォンやパソコンを見ることをやめ、4)室内証明の照度をさげることを理想としています。
東邦大学名誉教授で日本睡眠学会名誉会員であった鳥居鎮夫は、「睡眠と健康」の関係を「睡眠は単なる休息ではなくて、積極的な建設の面がある」と述べています(「睡眠」、『世界大百科事典』平凡社)。
睡眠不足がリスクをはらんでいることとの逆説として、睡眠の創造的構築や積極的なデザインには、人生を豊かにするベネフィットが潜んでいるのかもしれません。人生の三分の一の時間を占めるといわれる睡眠をぜひ一度見直し、よりよい睡眠を手に入れてください。
2018年4月9日、心拍トレーニング製品の開発・販売するポラール・エレクトロ・ジャパンが自社製品のユーザーから得た600万の睡眠データを分析した調査結果を発表しました。
その結果は、日本人の男女別平均睡眠時間は、男性6時間30分、女性6時間40分で、28カ国中最短であり、「不眠大国」ともいわれる日本の新たなエビデンスともなるような結果でした。
今回は、「不眠大国」日本に潜む、睡眠不足リスクを取り上げてみます。
睡眠不足リスクの最たる被害者は子ども
日本において睡眠不足リスクの最も大きな影響を被っているのは、子どもたちです。国立青少年教育振興機構理事長の鈴木みゆき氏は、「日本の子どもたちは世界でも有数の遅寝で、睡眠不足です」といいます。さらに、睡眠不足と関係が深い夜更かしは日本特有ともいわれる深刻な問題であり、日本小児保健協会による1歳から就学時前の7歳未満の幼児を対象にした『幼児健康度調査報告書』(2010年度調査)によると、最も悪かった2000年度より改善がみられるものの、やはり夜10時以降に眠る子どもたちが23%もいることがわかっています。
2016年12月1日『教育新聞』の記事では、睡眠不足や夜更かしは子どもたちの脳や体に大きなダメージを引き起こし、メンタルへも多大な影響を及ぼすことを指摘しています。その中で、とくにメンタルへの影響について鈴木氏は、「気持ちや情緒をコントロールする重要な脳内ホルモンのセロトニンが、夜更かしや不規則な生活によって出にくくなる」ためセロトニンが枯渇し、1)うつが発生、2)攻撃的になる、3)イライラすることなどの危険性を示唆しています。
高齢者の夜更かしは認知症リスクを増やす
他方、夜更かしは高齢者にも悪影響を及ぼすことがわかってきました。2018年6月14日の『朝日新聞』では、認知症の発症リスクと就寝時刻の関係について、75歳未満では差はなかったが、75歳以上では午後9~11時に寝る人に比べて、午後11時以降に寝る人は認知症の発症リスクが1.83倍高い、つまり「夜更かしする75歳以上は認知症のリスクが高まる」とした、国立長寿医療研究センターなどの研究チームの調査結果を記事にしています。
なお、調査にあたった国立長寿医療研究センター予防老年学研究部の中窪翔氏は、「明確な理由は明らかではないが、体内時計の自然な流れに逆らうことが、影響を与えているのかもしれない」と述べています。
睡眠不足リスクの恐ろしいエビデンス
睡眠不足は肥満の誘因にもなります。例えば、コロラド大学の研究によると、1週間夜5時間しか睡眠をとらなかった人達は1キロほど体重が増えたといいます。また、スウェーデンの研究からは、睡眠時間が少ない人は「カロリーの高い食べ物を買う傾向が見られた」ことがわかっています(『科学でわかった正しい健康法』)。さらに恐ろしいことに、脳細胞にも甚大な悪影響を及ぼします。ペンシルベニア大学のマウス実験から「睡眠が不足するとニューロンが長期にわたり25%も減少する」ことがわかりました。さらにこの結果は人間にも影響があると考えられており、睡眠不足は「脳に永久に残る害を及ぼす」疑惑が浮上しているといいます。
睡眠の果たす重要な役割
睡眠研究の泰斗である筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構副機構長・教授の櫻井武氏は、『婦人公論』2017年9月12日号において、「そもそも睡眠の目的は、翌日の覚醒のため」であると述べています。そのうえで櫻井氏は、睡眠の果たす役割について、医学的にははっきりとわかっていない部分が多いとしながらも、「1)脳内の情報処理、2)脳の掃除、3)体の休息」の主に3つの役割が考えられており、「睡眠は、脳と体のメンテナンスの重要な役割を果たしている」と述べています。
さらに不眠を解消し快眠するための具体的方法として、1)体内時計を正常に戻すために朝は決まった時間に起きて太陽の光を浴びることが基本であり、2)逆に夜はあまり強い光をあびないようにすること。加えて、3)就寝時刻の3時間前からはスマートフォンやパソコンを見ることをやめ、4)室内証明の照度をさげることを理想としています。
東邦大学名誉教授で日本睡眠学会名誉会員であった鳥居鎮夫は、「睡眠と健康」の関係を「睡眠は単なる休息ではなくて、積極的な建設の面がある」と述べています(「睡眠」、『世界大百科事典』平凡社)。
睡眠不足がリスクをはらんでいることとの逆説として、睡眠の創造的構築や積極的なデザインには、人生を豊かにするベネフィットが潜んでいるのかもしれません。人生の三分の一の時間を占めるといわれる睡眠をぜひ一度見直し、よりよい睡眠を手に入れてください。
<参考文献・参考サイト>
・『こどもと保健』No.89(光文書院):子どもの睡眠をめぐる現状と課題(鈴木みゆき著)
・『科学でわかった正しい健康法』(ジェフ・ウィルザー著、大和書房)
・『婦人公論』2017年9月12日号(中央公論新社):眠るための8ステップで「睡眠負債」に怯えない(櫻井武著)
・『世界大百科事典』(平凡社):睡眠(鳥居鎮夫著)
・ITmedia:日本人の睡眠時間、主要28カ国で最短
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1804/09/news097.html
・教育新聞(2016年12月1日):小さな積み重ねが改善に
https://www.kyobun.co.jp/feature1/pf20161201_01/
・朝日新聞(2018年6月14日):75歳以上の夜更かし、認知症リスク増
https://www.asahi.com/articles/ASL6F4W9GL6FUBQU00K.html
・『こどもと保健』No.89(光文書院):子どもの睡眠をめぐる現状と課題(鈴木みゆき著)
・『科学でわかった正しい健康法』(ジェフ・ウィルザー著、大和書房)
・『婦人公論』2017年9月12日号(中央公論新社):眠るための8ステップで「睡眠負債」に怯えない(櫻井武著)
・『世界大百科事典』(平凡社):睡眠(鳥居鎮夫著)
・ITmedia:日本人の睡眠時間、主要28カ国で最短
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1804/09/news097.html
・教育新聞(2016年12月1日):小さな積み重ねが改善に
https://www.kyobun.co.jp/feature1/pf20161201_01/
・朝日新聞(2018年6月14日):75歳以上の夜更かし、認知症リスク増
https://www.asahi.com/articles/ASL6F4W9GL6FUBQU00K.html
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
“社会人学習”できていますか? 『テンミニッツTV』 なら手軽に始められます。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。
『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
大統領への権力集中がアメリカ本来の形?…完全な歴史歪曲
第2次トランプ政権の危険性と本質(6)歪曲された「本来のアメリカ」
ヘリテージ財団が打ち出す「単一執行府論」は、大統領に権力を集中させることが「本来のアメリカ」の姿だと謳う。就任以来、歴史的に類を見ない異常な数の大統領令を発出しているトランプ政権を支えるその思想は、「権力の分散...
収録日:2025/04/07
追加日:2025/06/14
預金の半分が日銀と民間銀行の国債購入による信用創造?
日本人の「所得の謎」徹底分析(2)奇妙な貯蓄フローと預金残高
では、日本の所得・収入の過去30年の推移を調べると、何が見えてくるだろうか。1994年からの30年間で、民間同士の取引で生じる所得は、増減はあれどほぼ上がっていないのに、公的関与の部分は50兆円も増えている。さらに、本来...
収録日:2025/05/29
追加日:2025/06/12
なぜ日本は夏暑く、冬寒いのか…断熱から考える住宅の問題
断熱から考える一年中快適で健康な住環境(1)日本の住宅の実態と問題点
なぜ日本は夏の暑さが厳しく、冬は寒すぎるのか。近年、気候変動の影響など温暖化の問題が指摘されているが、実は原因は日本の住環境にあった。毎年のように気温が変化する中、日本の住環境は100年以上前と基本的にほとんど同じ...
収録日:2024/06/20
追加日:2024/08/11
教養の基本は「世界史」と「古典」
学びとは何か、教養とは何か
東京大学名誉教授の本村凌二氏が、学びとは何か、教養とは何かについて語る。本村氏によれば、教養の基本は世界史と古典である。そして、「学ぶ」という意味では、雑学も必要であるという。
収録日:2018/02/08
追加日:2018/05/01
日本の財政は本当に悪いのか?将来世代と金利の問題に迫る
日本の財政と金融問題の現状(1)財政赤字の何が問題か
GDP比の債務残高が世界的に見てもかなり高い日本の財政状況。そのような状況にあって、他方では、日本は本当に財政不安なのかという意見もある。日本の財政状況を今一度正確に把握し、財政赤字がもたらす将来世代へのリスクや財...
収録日:2025/04/13
追加日:2025/06/10