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DATE/ 2018.09.12

「加熱式たばこ」はどれだけ普及しているのか?

 みなさんのまわりに加熱式タバコの喫煙者はどのくらいいますか。2018年7月、加熱式タバコ市場において業界1位の外資系たばこ大手フィリップ・モリス・ジャパンが「アイコス」の詰め替え用たばこを1箱当たり40円の値上げすることを明らかにしました。

 フィリップ・モリス・ジャパンは「マールボロ」など従来の紙巻きたばこは50円値上げしたことを踏まえ、紙巻きたばこより「アイコス」が割安であることを打ち出しています。

 実際のところ、加熱式たばこはどれだけ広まっているのでしょうか。

「アイコス」「プルーム」「グロー」の違い

 そもそも普及している加熱式たばこには3種類あります。先ほどご紹介したフィリップ・モリス・ジャパンの「アイコス」、JTの「プルーム・テック」、ブリティッシュ・アメリカン・タバコ・ジャパンの「グロー」です。アイコスとグローはもちろん外資系です。2社の製品とも、専用器具で製造たばこを加熱して喫煙するという使用法式をとっています。

 それに対して、国産の「プルーム・テック」は専用器具でカートリッジ内の溶液を加熱することにより発生した蒸気で製造たばこを加熱し喫煙するという方式になっています。売り文句は三者三様で、アイコスは「本物の満足感」、グローは「連続使用量」、プルーム・テックは「小型化」です。

加熱式タバコは急成長産業

 さて、加熱式たばこはどれだけ広まっているのか。JTの調査によると、日本における喫煙者率は3年連続で下落しており、17.9パーセントで過去最低を記録。他方で、加熱式たばこの喫煙者は急速に拡大しています。

 ブームの火付け役は「アイコス」。2014年から一部販売が始まり、2016年に全国販売。急激に販売数を伸ばし、ユーザー数はすでに500万人を突破しています。続けて「グロー」、やや遅れて「プルーム・テック」が発売開始されました。

 「プルーム・テック」は発売当初は乗り遅れたのではないかと心配されていましたが、破竹の勢いで売り上げを伸ばし、累計販売が400万台を突破し、グローを抜いて業界2位に躍り出ました。

 加熱式たばこの割合は、この勢いでシェアを拡大していけば、数年後にはたばこ総市場の30%を超えるとも言われています。

アイコスの不都合な真実?

 しかし、気になるニュースもあります。アイコスについての話題です。アイコスは2014年に日本とイタリアでのみ先行で発売がスタートしました。ちなみに2016年10月時点においては、世界シェアのなんと98パーセントを日本が占めていました。つまり、ほとんど日本限定発売だったということです。日本はテスト市場とみなされていたのかもしれません。その後、2018年2月時点においては36カ国に展開されるようになりました。

 しかしです、アイコスはフィリップ・モリス・ジャパンが本社を構えるアメリカにおいて、まだ発売許可がおりていません。アメリカでは米国食品医薬品局(FDA)から認可がおりないと発売できないのですが、いまだ申請中という状態なのです。

 日本と世界で大きなシェアを獲得しつつあるアイコスですが、アメリカ国内における状況との温度差には違和感を感じざるをえません。もちろん、米国食品医薬品局がかなり厳しい審査基準を設けていることはたしかなのですが。

 ともあれ、加熱たばこ市場が急成長産業であることは間違いありません。とりわけ、日本においては短期間にして驚くべき普及ぶりです。何がそれほどまで人の心を捉えたのか。マーケティングという点からも興味の尽きない話題を提供してくれます。どんな変化や進化をみせてくれるのか、今後も目が離せません。

<参考サイト>
・東洋経済ONLINE:加熱式たばこ「日本だけで大流行」という真実
https://toyokeizai.net/articles/-/223879
・JT:2018年「全国たばこ喫煙者率調査」要領
https://www.jti.co.jp/investors/library/press_releases/2018/0730_01_appendix_01.html
・産経ニュース:加熱式たばこ市場拡大 シェア3割超視野 顧客争奪戦が激化
https://www.sankei.com/economy/news/180802/ecn1808020003-n1.html
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テンミニッツTV編集部
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