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街の寂れた「美容室」はなぜ潰れないのか?
東京の四谷、青山、表参道などに店舗を展開していた人気美容室・ヘアーディメンションが、東京地裁から破産開始決定を受けたのは2017年4月12日のこと。40年以上続いた老舗で、オーナーの飯塚保佑さんは松田聖子さんのヘアスタイルをモデルにした「聖子ちゃんカット」の生みの親。近年はカリスマ美容師ブームの火付け役にもなった有名店ですが、人気美容師の独立が相次いだことや格安美容室の進出に苦しみ、破産直前には実質休業状態になっていました。
厚生労働省の調査によると、2016年の日本全国の美容室店舗数は約24万3千店舗。日本フランチャイズチェーン協会が発表した2017年の日本全国のコンビニ店舗数は約5万8千店舗なので、美容室のほうがコンビニより約4倍も多い計算になります。当然ながら競争が激しく、開店して1年以内に約60%、3年以内には約90%が潰れてしまうとか。こんな厳しい業界で、潰れそうな美容室はなぜ潰れずに生き残っているのでしょうか。
もちろんお店を経営するからには収益を出さないといけませんが、このような美容室はたくさんのお客さんを集めて多くの利益を上げるより、徹底的にコストカットして無駄をなくすことを重視しています。特に髪は老若男女問わず定期的に切ったり染めたりする必要があるので、カラー剤などの消耗品を発注するタイミングや数の予測が立てやすく、在庫を抱える心配がありません。このような美容室は飛び込みでカラーやパーマをお願いすると断られることが多いですが、その理由は常連客に合わせて必要な分しか薬剤を仕入れていないからなのです。
またこのような美容室は美容師さんの持ち家や持ち物件であることが多く、従業員も年配の美容師さんひとりで問題なく回せるので、家賃や人件費がかかりません。しかもスタイリング椅子やシャンプー台などの初期設備さえ整えれば、あとはきちんとコストカットしている消耗品しか必要にならないので、お店のランニングコストはかなり低く抑えられます。美容室の施術はカットだけでも数千円、カラーやパーマなどもお願いすると1万円を超えるという客単価が高めのサービスなので、お客さんが少なくても常連客を抱えていれば安定した経営が成り立つのです。
これに対して潰れそうな美容室は格安美容室が誕生する何年も前から常連客を抱えているので、いまさら新規客を必死に集める必要はありません。しかし「料金が高めのままだと格安美容室に流れてしまう常連客もいるのでは」という疑問を抱く方もいるかもしれませんね。この点に関しては、美容室経営のコンサルティング企業であるミナトのアンケート結果が参考になります。
「どうしてあなたはその美容室を選ばれたのですか」という質問への回答に、「親しみやすい」、「気持ちいい雰囲気」、「大切にしてくれる」などの言葉が並んでいるのです。顧客が最も求めているのは安さや最新技術ではなく、親しみの持てる美容師と居心地のいい空間といえるでしょう。潰れそうな美容室は常連のために営業しているので、常連が気持ちよく通えるのは当然のこと。格安の美容室があっても、潰れそうな美容室を切り捨ててまで流れる可能性は低いのです。
潰れそうで潰れない美容室は美容師さんから見れば安定した経営が可能で、お客さんから見れば居心地のいい場所になっており、まさにウィンウィンの関係といえるでしょう。
大手が破産する時代でも潰れない謎の美容室
このような人気店でも破産する時代なのに、なぜか潰れない美容室、ありますよね。レトロといえば聞こえがいい、店名や電話番号がかすれた看板に古びたドアや窓の店構えで、営業していないのかと思いきやたまにお客さんがいるけど、働いているのは年配の美容師さん一人きり...そんな潰れそうなのに潰れない美容室は全国津々浦々に存在します。厚生労働省の調査によると、2016年の日本全国の美容室店舗数は約24万3千店舗。日本フランチャイズチェーン協会が発表した2017年の日本全国のコンビニ店舗数は約5万8千店舗なので、美容室のほうがコンビニより約4倍も多い計算になります。当然ながら競争が激しく、開店して1年以内に約60%、3年以内には約90%が潰れてしまうとか。こんな厳しい業界で、潰れそうな美容室はなぜ潰れずに生き残っているのでしょうか。
潰れそうで潰れないからくり
潰れそうな美容室が「潰れそう」に見える大きな要因は、お客さんがほとんど入っていないからといえます。しかし実は、ここが大きなポイントなのです。潰れそうな美容室を利用するお客さんは、何年も通っている常連中の常連ばかり。お客さんの数が少なくても途切れることはないので、常連客への施術のみで経営しているうちに潰れそうで潰れない美容室になります。もちろんお店を経営するからには収益を出さないといけませんが、このような美容室はたくさんのお客さんを集めて多くの利益を上げるより、徹底的にコストカットして無駄をなくすことを重視しています。特に髪は老若男女問わず定期的に切ったり染めたりする必要があるので、カラー剤などの消耗品を発注するタイミングや数の予測が立てやすく、在庫を抱える心配がありません。このような美容室は飛び込みでカラーやパーマをお願いすると断られることが多いですが、その理由は常連客に合わせて必要な分しか薬剤を仕入れていないからなのです。
またこのような美容室は美容師さんの持ち家や持ち物件であることが多く、従業員も年配の美容師さんひとりで問題なく回せるので、家賃や人件費がかかりません。しかもスタイリング椅子やシャンプー台などの初期設備さえ整えれば、あとはきちんとコストカットしている消耗品しか必要にならないので、お店のランニングコストはかなり低く抑えられます。美容室の施術はカットだけでも数千円、カラーやパーマなどもお願いすると1万円を超えるという客単価が高めのサービスなので、お客さんが少なくても常連客を抱えていれば安定した経営が成り立つのです。
安さを売りにする必要はない
近年はいわゆる「1000円カット」と呼ばれる格安美容室が広まって、ヘアーディメンションのような有名店でも経営を脅かされるようになりました。しかし安いお店は美容室に限らず、安さにしか引かれていないお客さんが集まりやすいため他のリッチなサービスに誘導しにくく、結果的にリピーターにならない傾向があります。新規客の獲得は大切ですが、それはのちのリピーターにするため。1回限りの新規客を格安で集めても利益は上がらないまま、先細りになって閉店に追い込まれてしまいます。これに対して潰れそうな美容室は格安美容室が誕生する何年も前から常連客を抱えているので、いまさら新規客を必死に集める必要はありません。しかし「料金が高めのままだと格安美容室に流れてしまう常連客もいるのでは」という疑問を抱く方もいるかもしれませんね。この点に関しては、美容室経営のコンサルティング企業であるミナトのアンケート結果が参考になります。
「どうしてあなたはその美容室を選ばれたのですか」という質問への回答に、「親しみやすい」、「気持ちいい雰囲気」、「大切にしてくれる」などの言葉が並んでいるのです。顧客が最も求めているのは安さや最新技術ではなく、親しみの持てる美容師と居心地のいい空間といえるでしょう。潰れそうな美容室は常連のために営業しているので、常連が気持ちよく通えるのは当然のこと。格安の美容室があっても、潰れそうな美容室を切り捨ててまで流れる可能性は低いのです。
潰れそうで潰れない美容室は美容師さんから見れば安定した経営が可能で、お客さんから見れば居心地のいい場所になっており、まさにウィンウィンの関係といえるでしょう。
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