テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2019.01.29

TPP発効で庶民の生活にはどんな影響がある?

 日本も参加するのか、しないのか。すったもんだの末、最終的には2018年12月30日に発効した環太平洋パートナーシップ(TPP)協定。日本の農業への影響は、輸出でのメリットは、など規模の大きな話題もありますが、それ以上に(?)気になるのは我々の生活にはどんな影響があるのかということ。何が安くなるのか、紹介したいと思います。

イオンではTPP発効前に牛肉を値下げ

 まず基本的な情報から。2019年1月14日ベトナムで発効した時点で、参加国は他に日本・メキシコ・シンガポール・ニュージーランド・カナダ・オーストラリア。計7か国です。外務省が作成した資料によると、「世界で保護主義的傾向が強まる中、自由で公正な21世紀型のルールを作っていく上で重要な一歩であり、米国や他のアジア太平洋諸国・地域に対しても積極的なメッセージになる」とのことで、実質GDPの増加や労働供給効果が見込めると踏んでいます。

 加盟国間で関税の大部分が撤廃されます。例えば米、麦、牛肉・豚肉、乳製品、砂糖の原料など。きなり撤廃されるわけではなく、段階的に関税が低くなるものもあります。米の場合、従来は1kgにつき341円の関税がかけられていましたが、TPP発効によりオーストラリアに対し0.6万トンの無関税枠を設定しました。牛肉は従来38.5%だった関税が27.5%となり、その後も段階的に下げられ16年目に9%まで引き下げられる予定です。

 それを受け、イオンでは一部の店舗でTPP発効前からタスマニアビーフのサーロインステーキ用(100g598円)と「リブロースステーキ用」(同498円)をいずれも480円に値下げしました。牛肉以外だとキウイやアボカドは関税を即時撤廃、オレンジは段階的に撤廃されるため、こうした果実類も安くなりそうです。小麦も関税が大きく下がるため、小麦そのものだけでなく、パンや麺類の値段が下がるかもしれません。

2月には日欧EPAも ワインやチーズ値下げ?

 TPPほど話題にはなっていませんが、今年2月1日には日欧EPAも発効します。こちらも一部の関税が撤廃され、輸入品のワインやチーズなどが安くなると見込まれます。実際にメルシャンやアサヒビールなど欧州産ワインの値下げを予告している企業もあります。

 日本の農業が危機だ、著作権はどうなる?などの問題とされていることもありますが、身近な食品が安くなるのは庶民の生活にとってありがたいこと。イオン以外にも小売りで値下げが進むことが期待できそうです。

<参考サイト>
・環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定 外務省
https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000022863.pdf
・イオンが豪産牛肉値下げ TPP控え、本州四国400店:朝日新聞デジタル
https://www.asahi.com/articles/ASLD64GBQLD6ULFA015.html
・メルシャンも欧州産ワイン値下げ 日欧EPA発効で - 産経ニュース
https://www.sankei.com/economy/news/190108/ecn1901080025-n1.html
・アサヒ、来春EU産ワイン値下げ=日欧EPA発効で最大17%:時事ドットコム
https://www.jiji.com/jc/article?k=2018122601227
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
物知りもいいけど知的な教養人も“あり”だと思います。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

ブレーキなき極右ポピュリズム…文化戦争を重視し経済軽視

ブレーキなき極右ポピュリズム…文化戦争を重視し経済軽視

第2次トランプ政権の危険性と本質(1)実は「経済重視」ではない?

「第二次トランプ政権は、第一次政権とは全く別の政権である」――そう見たほうが良いのだと、柿埜氏は語る。ついつい「第1次は経済重視の政権だった」と考えてしまいがちだが、実は第2次政権では「経済」の優先順位は低いのだと...
収録日:2025/04/07
追加日:2025/05/10
柿埜真吾
経済学者
2

大隈重信と福澤諭吉…実は多元性に富んでいた明治日本

大隈重信と福澤諭吉…実は多元性に富んでいた明治日本

デモクラシーの基盤とは何か(2)明治日本の惑溺と多元性

アメリカは民主主義の土壌が育まれていたが、日本はどうだったのだろうか。幕末の藩士たちはアメリカの建国の父たちに憧憬を抱いていた。そして、幕末から明治初期には雨後の筍のように、様々な政治結社も登場した。明治日本は...
収録日:2024/09/11
追加日:2025/05/16
3

【会員アンケート】談論風発!トランプ関税をどう考える?

【会員アンケート】談論風発!トランプ関税をどう考える?

編集部ラジオ2025(8)会員アンケート企画:トランプ関税

会員の皆さまからお寄せいただいたご意見を元に考え、テンミニッツTVの講義をつないでいく「会員アンケート企画」。今回は、「トランプ関税をどう考える?」というテーマでご意見をいただきました。

第2次トランプ...
収録日:2025/05/07
追加日:2025/05/15
テンミニッツTV編集部
教養動画メディア
4

今や化学兵器の主流…「バイナリー」兵器とは?

今や化学兵器の主流…「バイナリー」兵器とは?

医療から考える国家安全保障上の脅威(3)NBC兵器をめぐる最新情勢

2006年ロシアのKGB元職員暗殺には「ポロニウム210」というNBC兵器が用いられた。これは、検知しやすいγ線がほとんど出ない放射線核種で、監視の目を容易にすり抜ける。また、2017年金正男氏殺害に使われた「VX」は、2種の薬剤を...
収録日:2024/09/20
追加日:2025/05/15
山口芳裕
杏林大学医学部教授
5

生と死が明確に分かれていた…弥生人が生きていた世界とは

生と死が明確に分かれていた…弥生人が生きていた世界とは

弥生人の実態~研究結果が明かす生活と文化(9)弥生人の「生の世界」

弥生時代の衣食住には、いったいどんな文化があったのだろうか。土器やスタンプ痕の分析から浮かび上がる弥生人が生きていた世界、その生活をひもとくと、農耕の発展の経路や死生観など当時のさまざまな文化の背景が見えてくる...
収録日:2024/07/29
追加日:2025/05/14
藤尾慎一郎
国立歴史民俗博物館 名誉教授