社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
世界で最も「健康」な国はどこ?日本の順位は?
「健康な国」指数のトップ10とは
食生活の乱れや生活習慣病など、最近の日本人にはなにかと不健康なイメージがありますよね。しかし日本食は健康に良いといわれますし、長寿の人が多いのも特徴です。世界的に見ると日本はどのくらい健康なのでしょうか。今年2月に発表された、アメリカの情報サービス会社・ブルームバーグの調査による「健康な国」指数の最新版によれば、日本は4位にランクインしています。前回7位から3ランクの順位アップで、前回4位から今回8位に順位を落としたシンガポールを抜いてアジア諸国トップになりました。こうして見ると、日本はさほど不健康な国ではないようです。このランキングは169か国を対象に、平均寿命、医療水準、公衆衛生や清潔な飲料水のような環境要因などからスコアを出し、喫煙や肥満などの健康リスクを減点して順位づけされています。先進医療が導入されていてもメタボの人が多ければ減点されるため、先進国なら必ず上位に入るわけではありません。先進7か国のG7諸国で日本以外にトップ10入りしたのは2位のイタリアだけです。
そんな中で1位に輝いたのはスペイン。そして、スペインとイタリアに加えて3位のアイスランド、5位のスイス、6位のスウェーデン、9位のノルウェーと、ヨーロッパ諸国が大半を占めました。この他にはアジア諸国から日本とシンガポールに加えて10位のイスラエル、オセアニア諸国から7位のオーストラリアがトップ10入りしています。南北アメリカやアフリカの国は入りませんでした。
健康の秘密は手厚い医療福祉と地中海料理
なぜ、ヨーロッパには健康な国が多いのでしょうか。理由のひとつは、充実した社会保障によって医療が受けやすい点にあるでしょう。スペインでは一般的な外来診療である一次医療が公立の医療センターで提供されており、無償で診察を受けられます。この結果、スペインのがんと心血管疾患による死亡率は10年間で減少する成果を上げています。また、アイスランド・スェーデン・ノルウェーはすべての国民が平等に福祉を受けられる普遍主義型の社会保障制度を取っており、北欧型福祉国家と呼ばれることもあります。国家の手厚い保障があれば、突然の病気や事故でも安心して医療を受けられますよね。これに加えて、野菜や魚が多い食生活も健康な国と評価された理由でしょう。注目に値するのは、1位と2位であるスペインとイタリアがともに地中海に面していること。さらに10位のイスラエルも地中海に面した国なので、トップ10のうち3か国が地中海沿いに位置します。
地中海料理の特徴といえば、カルパッチョやパエリアなどで魚をふんだんに使うことと、アヒージョなどでオリーブオイルをふんだんに使うことが上げられます。魚やオリーブに含まれる油分の不飽和脂肪酸は融点が低く常温で液体になるため、血液をサラサラにして動脈硬化や心筋梗塞を予防すると考えられています。1958年にアメリカのアンセル・キーズ博士が地中海料理を食べる地域を調査したところ、他の地域に比べて血中コレステロール値が明らかに低いことがわかりました。そして、動脈硬化に起因する心筋梗塞や脳卒中の死亡率が世界で最も低いことも判明したのです。この調査結果を受けた近年の研究により、地中海料理にはコレステロール値を下げる効果があると科学的に立証されています。
日本を抜いて世界一の長寿国になるスペイン
手厚い医療福祉と地中海料理の不飽和脂肪酸効果をあわせもつスペインが、健康な国のトップになったのは当然の結果かもしれません。さらに、2040年にはスペインが現在1位の日本を抜いて世界長寿国ランキングの1位になるとも予測されています。この予測結果は、オランダの出版社・エルゼビアが発行する医学雑誌『ランセット』でワシントン大学健康指標評価研究所が発表したレポートによるもの。順位の理由は明確にしていませんが、長寿を妨げる肥満・高血圧・血糖・喫煙・飲酒を中心に250の要因を調査してランキングを作成したとされます。中でも高血圧は動脈硬化や心筋梗塞、喫煙はさまざまながんの原因になるため、これらの死亡率が低くなっているスペインが長寿国トップに浮上するのは納得のいく話ですね。日本はいまだに死因の1位ががん、2位が心臓疾患なので、長寿国トップを維持するにはこの課題を克服する必要があります。
特に日本人男性は肥満が多く喫煙率が高いため、寿命の平均値を下げる要因になっているとか。実はスペインも喫煙率が高く、年間平均喫煙数は1499本で、553本のノルウェーと比べるととても高いことがわかります。しかし日本はそのスペインを上回る1583本。日本もスペインも、喫煙率を下げることがさらなる長寿をかなえるポイントになりそうです。
<参考サイト>
・These Are the World's Healthiest Nations
https://www.bloomberg.com/news/articles/2019-02-24/spain-tops-italy-as-world-s-healthiest-nation-while-u-s-slips
・BUSINESS INSIDER JAPAN スペイン、日本を抜いて世界一の長寿国へ ── その理由は?
https://www.businessinsider.jp/post-179299
・サライ.jp 医師も薦める「地中海式食事法」で健康な体を手に入れる【予防医療の最前線】
https://serai.jp/health/267866
・These Are the World's Healthiest Nations
https://www.bloomberg.com/news/articles/2019-02-24/spain-tops-italy-as-world-s-healthiest-nation-while-u-s-slips
・BUSINESS INSIDER JAPAN スペイン、日本を抜いて世界一の長寿国へ ── その理由は?
https://www.businessinsider.jp/post-179299
・サライ.jp 医師も薦める「地中海式食事法」で健康な体を手に入れる【予防医療の最前線】
https://serai.jp/health/267866
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
雑学から一段上の「大人の教養」はいかがですか?
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。
『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
アメリカは一体どうなってしまったのか。今後どうなるのか。重要な同盟国として緊密な関係を結んできた日本にとって、避けては通れない問題である。このシリーズ講義では、ほぼ1世紀にわたるアメリカ近現代史の中で大きな結節点...
収録日:2025/09/02
追加日:2025/11/10
知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(3)認知バイアスとの正しい向き合い方
人間がこの世界を生きていく上で、バイアスは避けられない。しかし、そこに居直って自分を過大評価してしまうと、それは傲慢になる。よって、どんな仕事においてももっとも大切なことは「謙虚さ」だと言う今井氏。ただそれは、...
収録日:2025/05/12
追加日:2025/11/16
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
宇宙とは何かを考えるうえで中国の古典である『荘子』・『淮南子(えなんじ)』に由来する「宇宙」という言葉が意味から考えてみたい。続いて、地球から始まり、太陽系、天の川銀河(銀河系)、局所銀河群、超銀河団、そして大...
収録日:2020/08/25
追加日:2020/12/13
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
現代社会にとって空海の思想がいかに重要か。AIが仕事の仕組みを変え、超高齢社会が医療の仕組みを変え、高度化する情報・通信ネットワークが生活の仕組みを変えたが、それらによって急激な変化を遂げた現代社会に将来不安が増...
収録日:2025/03/03
追加日:2025/11/12
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
「歴史を探索していく」とは、どういうことなのだろうか。また、「歴史を活かしていく」とはどういうことなのだろうか。歴史作家の中村彰彦氏に、歴史を探り、活かしていく方法論を、具体的に教えてもらう本講義。第一話は、歴...
収録日:2025/04/26
追加日:2025/11/14


