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汚いやり方をしてくる相手への対処法
イエローカードで出し抜かれたら
「それ、あり?」あくどいやり方でライバルに出し抜かれ、いても立ってもいられない!そのやり方たるや法に触れてはいないものの、見習いたくない。とはいえ、このまま放っておけばどんどん差をつけられていく。
心あるビジネスマンの陥りがちなジレンマだが、実は「経営の神様」松下幸之助も創業間もない頃、そういう試練に向き合っていたと、PHP研究所社長を務めた江口克彦氏(現参議院議員)は証言する。一体どんな状況だったのだろうか。
腹に据えかねる「値引き合戦」の果てに
価格破壊は昨日・今日に始まったことではない。1935(昭和10)年頃の家電業界でもやはり、価格競争のために市場混乱が極まっていた。「原価を割ってまで過当競争をやれば、大企業が勝つに決まっている。それで中小企業がつぶれたら、大企業はまた値段を上げる。そんな『あくどい』やり方は良くない」
正論に基づいて価格競争に乗らなかった松下電器だが、敵はどこまでも値下げをやめず、価格差は開く一方だ。さすがの幸之助も腹に据えかねる。
大将のやること、やらないこと
ついに積極的な参戦を思い立った幸之助は、当時の相談相手だった加藤大観氏に「徹底的にやろうと思う」と話してみた。加藤氏は真言宗の僧侶だが、幸之助に惚れ込み、その健康長寿と事業の繁栄のため、日々勤行を続けていた人である。「いつも静かな松下さんがそういうからには、よほどのお考えでしょう。やりたいのであればおやりなさい」
それで答えは終わらなかった。
「相手が正しくないことをしたからと、自分も同じことをやるのは、大将たる人のやることではありません」
“出船あれば入船もある”のが商売
目には目を…は大将の方法ではないから、毅然として自分の「正しさ」を貫け、という加藤氏の話はさらに続く。「それで買わなくなる人も出てくるかもしれないが、逆に『松下さんは正直だ。商売もしっかりしている』と、新しいお客さまも増えるかもしれない。“出船あれば入船もある”のが商売です」
幸之助が適正利益を確保した価格での商売を続けたのは、言うまでもない。また、その後の成功も、加藤氏の言う通りになった。
汚いライバルとの汚い戦いで得る結果は
戦前期の商道徳は現代のビジネスには通用しないと思う向きも多いに違いない。しかし、その後の幸之助が折りにふれて漏らした「商売は、『勝てば官軍ではあかんよ』」の言葉は、江口氏を起業へと動かした。同様に、「勝てば官軍」を戒め、「大将たるものの心得」を教える言葉は、グローバリゼーションと円高・円安に一喜一憂し、目的のために手段を正当化しがちな日本の政財界への「予言」「苦言」とも取れるのではないだろうか。汚いライバルとの汚い戦いで得る結果は、やはり汚いのだから。
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