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DATE/ 2019.04.30

日本企業のグローバル&国内ブランドランキング

 もっとも知られている企業ブランドと言えば、どんなものが思い浮かぶでしょうか。まずはAppleやGoogleといったいわゆる「GAFA」あたりを思い浮かべる人は多いかも知れません。車だとメルセデス、スポーツだとナイキ、飲み物だとコカ・コーラといったところが有名です。日本発のブランドに絞って考えてみるとどうでしょう。日本企業のブランドをグローバル(国際的)ブランドランキングとドメスティック(国内)ブランドランキングの両面から見て、傾向を考えてみます。

Best Global Brands 2019の3つの評価基準

 ここでは、1974にロンドンで設立された世界最大のブランディング専門会社「インターブランド」が毎年発表するランキング「Best Global Brands 2019」を参考にします。この調査の評価基準は以下の3つです。一つ目は、ブランドが冠された事業の現在から将来の収益を予想した「財務分析」、二つ目はブランドが顧客の購買意思決定にどう影響しているか分析した「ブランドの役割分析」、そして、三つ目は、社内要素と社外要素の両面からブランドのリスクを評価した「ブランド強度分析」です。簡単に言うと、「将来性があるか」「人がどの程度欲しているか」「どのくらいイメージが壊れにくいか」といったように捉えて良いかと思われます。

グローバル(国際)ブランドランキング

 2019年版グローバル(国際)ブランドランキングトップ10は以下の通りです。グローバルブランドランキングは、海外売上高が30%を越えているブランドが対象です。右に示した金額はブランドの価値を金額($m=100万アメリカドル)です。

1位 TOYOTA:53,404$m
2位 HONDA:23,682$m
3位 NISSAN:12,213$m
4位 Canon:10,380$m
5位 SONY:9,316$m
6位 MUFG:6,807$m
7位 Panasonic:6,293$m
8位 UNIQLO:6,235$m
9位 Nintendo:4,696$m
10位 SUBARU:4,214$m

 1位、2位、3位を車メーカーが独占しています。また車メーカーとしては10位にスバルもランクイン。ここ数年、スバルはアメリカ市場でたいへん高い評価を受けているようです。その他にはCanon、SONY、Panasonicといったところは電機・精密機器を手がけるメーカーとしての色合いが濃い企業といえるでしょう。総じて技術力を持つ企業が多いイメージでしょうか。一方9位の任天堂は、今では言わずと知れたゲームメーカー、この点はSONYと重なる事業とも言えます。しかし、SONYが様々な分野で自社のブランドを活かしつつ多角的な展開を行うのに対して、任天堂はゲームメーカーとしてのポリシーを貫くことによってブランドを確立していると言えるでしょう。任天堂はゲームソフトの開発と同時にポータブルゲーム機でも、たえず世界の最先端にいます。

ドメスティック(国内)ブランドランキング

 2019年版ドメスティック(国内)ブランドランキングトップ10は以下の通り。右に示した金額はブランドの価値を金額($m=100万アメリカドル)です。

1位 NTT docomo:9,732$m
2位 SoftBank:5,523$m
3位 au:4,685$m
4位 RECRUIT:3,947$m
5位 Rakuten:2,696$m
6位 SUNTORY:2,342$m
7位 Asahi:2,091$m
8位 KIRIN:2,007$m
9位 NISSIN:1,184$m
10位 JAL:1,081$m

 グローバルランキングとは大きく異なり、国内ではトップ3を携帯キャリアが占めました。携帯キャリア3社(5位の楽天も2019年10月にMNO事業開始予定)が上位を占めるということは、私たちの生活がこういった通信基盤に大きく影響を受けているということかと思われます。これらはいわばコミュニケーションのプラットフォームとして、また行動する際の基本的な情報を得るプラットフォームとしても現代では欠かせない存在です。またビールで有名な企業が3社ともランクインしています。若者の飲み会離れという話が時折囁かれてはいますが、もしかしたら飲み方や飲む場所が変わっているだけなのかもしれません。

ブランドとはイメージ作り

 ブランドランキングという性質上、一般の人たちにどのくらい知られているかということがポイントだと言えるでしょう。また実際には、そのブランドの提供するサービスや商品には、大きな違いがないことも特徴かと思われます。その質に違いがあれば、質がいい物を人は選びます。実際には違いがあまりないからこそ、イメージで、つまりブランドで選ぶという行動が起きると考えていいでしょう。商品の良さはもはや問題ではありません。

 また、携帯3社やビールメーカーのCMはいつも話題性があります。他にもこのドメスティックランキングに上がっている企業のCMはだいたい誰でも目にしたことがあるのではないでしょうか。つまり、ブランド力のある企業とは、社会的認知を高める方法(広報戦略)や、需要を喚起する方法(マーケティング)に長けた企業だとも言えるかもしれません。こう見るとここに上がっている企業の価値は、純粋な企業価値とはやや違うということも分かります。

企業ブランドが目指す普遍性と地域特性

 また、グローバルな企業とドメスティックな企業で求められるものは大きく異なるはずです。ブランド戦略は、親しみを持たれることによって、また好ましいと思わせる付加価値をつけることによって、ものを売ることだとも考えられます。こう考えると、世界的にこの地位を確立しているブランドには何かしら人の心を揺るがすような普遍性が宿っているともいえるでしょう。また、その地域でブランドを獲得している企業には、その地域の特性に根ざしているとも言えます。このあたりの秘密を探っていくと、もしかしたら面白い発見はあるような気もします。

<参考サイト>
・Best Global Brands 2019 - Japan's Best Global Brands
https://www.interbrandjapan.com/ja/bjb/global_brands/2019.html
・Best Japan Brands 2019 - Japan's Best Domestic Brands
https://www.interbrandjapan.com/ja/bjb/domes
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