テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2019.05.01

5割が感じる「SNS疲れ」最も疲れるのは…

 SNSといえば、Facebook、Twitter、LINE、Instagramといったところが日本ではメジャーかと思われます。これらは日本では2010年から2014年にかけて次々とリリースされ、今では私たちの情報インフラに近い役割を担っている側面もあります。

 この発展の一方で、少し前から「SNS疲れ」という言葉もよく聞かれるようになりました。ここでは調査を見ながら、「SNS疲れ」というのがどういうものなのか、またこの先のSNSのあり方についてまで考えてみましょう。

もっともSNS疲れを起こしているのはFacebook

 株式会社アスマークは全国の20代から60代の男女1000人に対して市場調査を行っています。これによると、もっとも疲れるSNSはFacebookという結果がでています。以下、そのSNSを利用している人のうち「SNS疲れを感じたことがある」と回答した人数の割合が多い順です(有名なものだけを抜粋)。

Facebook:42.5%
LinkedIn:42.1% (※サンプル数が少ないので参考値)
mixi:37.2%
LINE:32.2%
Twitter:29.3%
Instagram :27.8%
Ameba:26.5%
TIktok:25.8%

 LinkedInは日本ではあまり聞きなじみがないかもしれませんが、ビジネス特化型SNSで、全世界の利用者数は5億人ほどとされています(ちなみにFacebookはおよそ20億人超)。自分の職歴をオープンに記載して、仕事のオファーを受けたり、就職や転職につなげたりすることが主な目的のSNSです。この点に関してはFacebookも同様に使われることもあります。つまり、これらは趣味や日常でのつながりよりも、仕事の人脈をつくったり就職・転職で活用したりするといったツールとしての側面が強いとも言えます。こう考えてみると、ビジネスシーンに関わる、もしくは匿名性の低い(実名性の高い)SNSでより疲れると考えて良さそうです。

なぜビジネスシーンに関わるSNSは疲れるのか

 SNSは、すでにある現実を強化・補完するツールとしての側面が大きいと言えるでしょう。単なる「遊び」や「楽しさ」でつながっている知人であれば、気が向いたときに関わればいいかもしれません。しかし、仕事の仲間で使う場合、どちらかといえば繋がりのある人の発言をしっかり見て話題作りしておく必要があったり、発言やコメントに対する「忖度(そんたく)」をしなければならなかったりする場面があり得ます。また、自分が発言したとしても意図がうまく伝わらなかった場合、丁寧に対応しなければならない状況も起こりうるでしょう。

 さらにSNS上での発言や振る舞いは完全に自己責任です。現実の場面であれば、ちょっとニュアンスが異なって相手に伝わった場合、その場ですぐに修正できたり、他に居合わせた人が修正したり話の矛先を変えたりといった対応が可能です。しかしSNSでの発言は誰も修正できない上、相手に直に届きます。しかもビジネスでのやりとりはスピードが重視されるので、即応性が大事になる場面もあります。手を抜くことができません。かなりのスピードで頭を働かせなければならないことになるでしょう。またビジネスでの関係では、たえず前向きな発言でなければならないという点も否めません。こう考えると、疲れる理由は理解しやすいのではないでしょうか。

 即応性を求められるSNSとしては、この中ではLINEがもっとも強いかと思われます。LINEはスマホを中心としたツールなので、よりリアルタイムに個人に向けてのメッセージが届くという性質があります。しかし、アンケートではFacebookなどよりもパーセンテージが低い点は興味深いです。筆者の推測としては、LINEはその繋がりの強度が高いゆえに、プライベートなツールとしての位置づけが拡がってきたのではないかというものです。もちろん上司が仕事のLINEグループを作ってしまえば抜け出すのが至難の技である点は否めないでしょう。

SNSはより緩くより外側に向かうかも知れない

 SNSは情報の送受信における新たなチャンネルとなりました。FacebookやLINEは個人や仲間の間でより密なコミュニケーションを取るツールとして発展してきたと言えるでしょう。ここでは繋がり方においてその同質性が大事でした。これに対してInstagramは、もともとアップされた写真でやりとりすることを大きな柱として、幅広い人との緩やかな繋がりを提供するというコンセプトの強いSNSでした。

 その後、Instagramは、ストーリーズ(時間によって投稿が消えるという機能)によって、よりカジュアルな要素を強くしたり、ECプラットフォーム(その場で商品が買えるような仕組み)を整えたり、より幅広いツールへと変化しています。Instagramは、利用者の視線が関係やコミュニティの外に向くような展開をしていると言えるのではないでしょうか。「SNS疲れ」が比較的密なコミュニケーションをとるSNSで起こりやすいとすれば、こういった緩さの方が心地良い人も多いのかもしれません。

<参考サイト>
・SNS疲れに関するアンケート調査|株式会社アスマーク
https://www.asmarq.co.jp/mini_research/mr201903sns-tired.html
・【無料でDL】2019年2月更新!12のソーシャルメディア最新動向データまとめ|Social Media lab
https://gaiax-socialmedialab.jp/post-30833/
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
雑学から一段上の「大人の教養」はいかがですか?
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

55年体制は民主主義的で、野党もブレーキ役に担っていた

55年体制は民主主義的で、野党もブレーキ役に担っていた

55年体制と2012年体制(1)質的な違いと野党がなすべきこと

戦後の日本の自民党一党支配体制は、現在の安倍政権における自民党一党支配と比べて、何がどのように違うのか。「55年体制」と「2012年体制」の違いと、民主党をはじめ現在の野党がなすべきことについて、ジェラルド・カ...
収録日:2014/11/18
追加日:2014/12/09
2

5Gはなぜワールドワイドで推進されていったのか

5Gはなぜワールドワイドで推進されていったのか

5Gとローカル5G(1)5G推進の背景

第5世代移動通信システムである5Gが、日本でもいよいよ導入される。世界中で5Gが導入されている背景には、2020年代に訪れるというデータ容量の爆発的な増大に伴う、移動通信システムの刷新がある。5Gにより、高精細動画のような...
収録日:2019/11/20
追加日:2019/12/01
中尾彰宏
東京大学 大学院工学系研究科 教授
3

マスコミは本来、与野党機能を果たすべき

マスコミは本来、与野党機能を果たすべき

マスコミと政治の距離~マスコミの使命と課題を考える

政治学者・曽根泰教氏が、マスコミと政治の距離を中心に、マスコミの使命と課題について論じる。日本の新聞は各社それぞれの立場をとっており、その報道の基本姿勢は「客観報道」である。公的異議申し立てを前提とする中立的報...
収録日:2015/05/25
追加日:2015/06/29
曽根泰教
慶應義塾大学名誉教授
4

BREXITのEU首脳会議での膠着

BREXITのEU首脳会議での膠着

BREXITの経緯と課題(6)EU首脳会議における膠着

2018年10月に行われたEU首脳会議について解説する。北アイルランドの国境問題をめぐって、解決案をイギリスが見つけられなければ、北アイルランドのみ関税同盟に残す案が浮上するも、メイ首相や強硬離脱派はこれに反発している...
収録日:2018/12/04
追加日:2019/03/16
島田晴雄
慶應義塾大学名誉教授
5

健康経営とは何か?取り組み方とメリット

健康経営とは何か?取り組み方とメリット

健康経営とは何か~その取り組みと期待される役割~

近年、企業における健康経営®の重要性が高まっている。少子高齢化による労働人口の減少が見込まれる中、労働力の確保と、生産性の向上は企業にとって最重要事項である。政府主導で進められている健康経営とは何か。それが提唱さ...
収録日:2021/07/29
追加日:2021/09/21
阿久津聡
一橋大学大学院経営管理研究科国際企業戦略専攻教授