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実際に「残業時間」は減っているのか?
		        	    
 労働に関するニュースを見ない日はありません。特に「残業」に関してはさまざまな方面からデータや意見が出ています。「残業」は私たちの働き方やライフスタイルについて考えるとき、もっとも重要な問題だと言えるでしょう。では実際のところ、世の中から残業は減っているのでしょうか。ここでは調査を元に、少し状況を整理してみましょう。
残業時間が減少傾向の業種トップ3は、1位「金融」39%、2位「IT・インターネット・ゲーム」35%、3位「広告・出版・マスコミ」31%となっています。反対に増加傾向のトップ3は「メディカル」33%、「流通・小売・サービス」33%、「物流・運輸」32%です。
残業時間が減少した理由としては「残業規制による強制的な退社」が50%最多となっています。続く理由としては「既存業務の効率化(機械化・IT化・外注など)」が32%、「受注減により業務が減少」17%となっています。一方、残業時間が増加した理由としては「社員の減少(退職・異動)」57%、「既存業務の非効率化(外注業務の内製化など)」35%、「新規の事業なサービス創出に関わる業務が増加」29%です。大きく捉えると、残業が減った理由は「規制」と「効率化」、増えた理由は「人材不足」と「業務の増加」と言えるのではないでしょうか。
もちろん、仕事が中小企業に分配されることは悪いことではないでしょう。しかし、残業規制が行き届かない中小企業での労働環境は悪化します。実際に日本商工会議所が2019年1月に実施した調査(「働き方改革関連法への準備状況等に関する調査」集計結果)によると、時間外労働の上限規制の名称・内容ともに知っている企業は60.4%、知らない企業は39.3%、従業員100人以下では知らない企業が46.4%、50人以下では52.0%と半分を超えます。
とはいえ、この状況は中小企業の経営者の意識の低さとして切り捨てる問題ではないでしょう。むしろ、「中小企業の経営側が残業規制の意識を持つことは難しい」現実を示していると言えるのではないでしょうか。こういった事情を見てみると、残業の問題を本質的に考えるには、中小企業における労働の問題をどのように解決していくのか、仕事の総量が減らない以上、法規制だけではないもう少し多角的な観点から見る必要があると言えるのではないでしょうか。
		        残業時間「変わらない」が半数
エン・ジャパン株式会社が運営するミドル世代のための転職サイト「ミドルの転職」では、サイトを利用している35歳以上を対象にアンケートを行っています(2019年3月、有効回答数2,113名)。これによると、「残業時間は増加傾向ですか?減少傾向ですか?」との問いに対して47%が「変わらない」と回答しています。「減少傾向」が26%、「増加傾向」が27%とほぼ同率です。残業時間が減少傾向の業種トップ3は、1位「金融」39%、2位「IT・インターネット・ゲーム」35%、3位「広告・出版・マスコミ」31%となっています。反対に増加傾向のトップ3は「メディカル」33%、「流通・小売・サービス」33%、「物流・運輸」32%です。
残業時間が減少した理由としては「残業規制による強制的な退社」が50%最多となっています。続く理由としては「既存業務の効率化(機械化・IT化・外注など)」が32%、「受注減により業務が減少」17%となっています。一方、残業時間が増加した理由としては「社員の減少(退職・異動)」57%、「既存業務の非効率化(外注業務の内製化など)」35%、「新規の事業なサービス創出に関わる業務が増加」29%です。大きく捉えると、残業が減った理由は「規制」と「効率化」、増えた理由は「人材不足」と「業務の増加」と言えるのではないでしょうか。
残った仕事は中小企業に
こう見てみると、「残業規制による強制的な退社」は残業を減らす対策としてそれなりの効果をあげているようにも思えます。しかし、よく考えてみれば、残業規制を行うことの出来る企業は、下請けに仕事を投げたり、外注したりすることのできる規模の企業です。残業規制が行われようとも、もちろん仕事の総量は変わりません。自社の社員を残業させられない、となれば、外注するのがもっとも効率的な方法です。ここで仕事を請け負うのは中小企業です。こうなると、中小企業では人材が不足し、業務が増え、実質的に残業規制を行うことが不可能になることは理解できます。残業が増えた理由「人材不足」と「業務の増加」は、中小企業の問題と重なっている部分も多いと思われます。もちろん、仕事が中小企業に分配されることは悪いことではないでしょう。しかし、残業規制が行き届かない中小企業での労働環境は悪化します。実際に日本商工会議所が2019年1月に実施した調査(「働き方改革関連法への準備状況等に関する調査」集計結果)によると、時間外労働の上限規制の名称・内容ともに知っている企業は60.4%、知らない企業は39.3%、従業員100人以下では知らない企業が46.4%、50人以下では52.0%と半分を超えます。
とはいえ、この状況は中小企業の経営者の意識の低さとして切り捨てる問題ではないでしょう。むしろ、「中小企業の経営側が残業規制の意識を持つことは難しい」現実を示していると言えるのではないでしょうか。こういった事情を見てみると、残業の問題を本質的に考えるには、中小企業における労働の問題をどのように解決していくのか、仕事の総量が減らない以上、法規制だけではないもう少し多角的な観点から見る必要があると言えるのではないでしょうか。
<参考サイト>
・ミドル2000人に聞く「残業時間」実態調査 5割が「自社の残業時間に変化がない」と回答。| @Press
https://www.atpress.ne.jp/news/182154
			            
		            ・ミドル2000人に聞く「残業時間」実態調査 5割が「自社の残業時間に変化がない」と回答。| @Press
https://www.atpress.ne.jp/news/182154
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